事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

ゆきもと けい

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3章 あるサークルとの出会い

事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

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 翌朝、カーテンを開けて向かいの部屋に目やる。
 ダンボールが昨日のままの状態で置かれているところをみると、荷物だけ搬入して、本人はまだここに来てはいないようだ。
 例の違和感は今朝は感じない。
 僕は昨日コンビニで買った菓子パンと缶コーヒーで簡単な朝食を済ませ、カーテンを閉めて大学へ向かった。

 正門を入ると、真っすぐに道路が伸びていて、ここが学内のメイン通りとなる。
 4月一杯はここで盛んにサークルの勧誘が行われている。机や椅子を出しているサークル、大きく名前を掲げているサークルなどいろいろだ。

 相変わらず毎日、何度も声を掛けられる。だが、大学側が心配しているような、宗教的な勧誘は一度も受けていない。
 多くの学生の中から、見ただけで新入生だとわかるのには、何か理由があるのだろうか・・・

 そして又・・・

「新入生だよね」

 僕は後ろから声を掛けられ、振り返った。そこには身長160㎝くらいのやせ形でピンクの枠のメガネをかけ、昔の言い方をするなら、おかっぱヘアーの女子学生が立っていた。ちょっと不思議な出で立ちだ。

「ええ、まぁ・・・」
 
 僕はなんとなく返事を返す。すると、

「あのさぁ、超常現象とかに興味あったりする子?」

 突然、真顔でそんな言葉を投げかけてきたのだ。

「はぁ?」

 僕はその質問にきょとんとした。

(いきなり、なんて質問だ・・・)

「あたしさぁ、こういうサークルの部長なんだ。でね、新入部員を増やさないといけないんだよ」

 女子部長と名乗る女子学生は、手作りらしきチラシを僕に手渡してきた。オカルト研究会と書かれている。
 どうやらこのサークルは超常現象などを研究しているサークルのようだ。

(いろんなサークルがあるんだな)

 チラシに目を落としながら、僕は感心したが、そういえば昨日、高校の同期で美術大学へ行った奴が電話で、

「うちの大学にさぁ、骨部ってサークルがあるらしいんだ。変わってんな・・・」

 そう言っていたのを思い出した。

「ホラー小説とかその手のゲームは好きだけど、実際はどうかな~」

 僕は正直に答えた。

「いや、そういうのが好きだったら、絶対興味あるんだよ。だって興味ありそうな顔してるから、声かけたんだもん」

 女子部長はグイグイとくる。

(興味ありそうな顔・・・?)

「部員は何名いるんですか?」

 僕はちょっと気になって尋ねた。

(この手のサークルって人気があるのだろうか・・・)

「4年生が抜けた今は11名かな」

 11名という人数が多いのか少ないのか・・・微妙な感じがする。

「まぁ、考えておきます」

 僕は今のところ、どのサークルにも入部する気はないが、一応、社交辞令的に答えておいた。どのサークルから声をかけられても、同じような返答をしている。

「うん、考えてみて・・・良かったら、一度見学においでよ。仮入部でもいいよ」
 
 女子部長はニコニコしながら言った。

 僕はそのチラシをカバンにしまうと、踵を返し、歩き出した。
 振り返ると、多くの学生が行き交う中、女子部長がまだ僕の方へ、ニコニコしながら小さく胸の辺りで手を振っている。
 自分が声をかけた学生には、みんな同じようなことをしているのだろうか・・・

(なんだかな~)

 僕は少し、照れ臭さを感じた。

(超常現象を研究している部長さんって、もっと陰気な感じがしそうなんだけど・・・)

 僕は早く、あの部屋の住人が誰なのか、知りたくなった。


  3章 あるサークルとの出会い 完 続く
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