5 / 16
5章 結奈ちゃんと陽翔君の場合
もう一つの小学校
しおりを挟む
結奈ちゃんと陽翔君は2階へ上がった。3階へ上がる階段はないようなので2階建てのようだ。
階段を上がると、左手の右側の教室は4年1組・2組の札が掛けられており、右手廊下の教室には手前から5年1組・2組、少し間があって先には6年1組・2組の札が見える。その先も教室があるようだが、よくわからない。
その5年生と6年生の間の壁辺りに数人の生徒が集まって何かを見ている。
結奈ちゃんと陽翔君もそちらへ行ってみる。
2人が来たことに気づくと、一人の男子生徒が、壁に貼られている数枚の用紙から視線を外し、
「和仁さんはいつもすごいよね。今回は3位だよ。大橋君も今回は10位みたいだね」
そう言うと、再び壁の方へ視線を移す。
2人はとりあえず、貼られている用紙に目をやる。
それは校内テストの結果が貼り出されていた。成績順位表である。5年生・6年生合同の試験のようだ。
国語・算数・理科・社会・英語と総合順位の上位10位までが貼り出されている。
結奈ちゃんはすべての科目に名前がある。算数は2位だ。総合順位は3位。
陽翔君は国語が1位、英語が8位。総合順位は10位。
「結奈、すごいな~ 全科目ランクインで総合3位
お前凄い勉強できんだな~」
陽翔君が感心したように順位表を見ながら言う。
「陽翔君も国語1位じゃん」
「まぁ、僕たちだけど、僕たちじゃないけどな・・・」
「そうだよね」
2人は何となく顔を見合わせる。
だが、他の3人の名前はどこにもない。知っている名前も1つもない。
それ以上に、数多くの生徒がこの学校に在籍していること自体が驚きである。
自分たちの世界では来年の3月に廃校が決まっているというのに、こちらの世界では大勢の生徒で賑わっている。
どういうことか・・・こんな田舎に・・・
それともこちらの世界では、ここは田舎ではなく都会なのだろうか・・・
そんな思いが2人の頭をよぎる。
だが、仮にそうだとしても、どちらの世界が正しいという訳ではない。
どちらの世界も真実なのだから・・・
成績を貼り出されていることにも驚きである。
自分たちの学校ではみんなが同じであり、優劣はない。
だが、ここの学校では明らかに優劣がつけられている。
「2人とも凄いよね。ここの人なのに・・・」
誰が言ったのかわからないが、そんな言葉が背後から2人の耳に届いた。男の子の声の感じだ。
2人は顔を見合わせ、
(はぁ?ここの人?みんなここに住んでる人だろうに・・・)
そんな顔をした。
すると、先ほど結奈ちゃんに声をかけてきた女子生徒の一人が、結奈ちゃんの横に並び、
「やっぱり和仁さんは凄いね。いつもすべてが上位成績だもんね。大橋君も国語はいつも1位。あたしなんか一度も入ったことないのにさぁ」
褒められても、自分であって自分でないだけに返事に困る2人。
不用意な発言には気をつける。自分たちはここでは当然のはずだし、この女子の名前も当然知っている。
「そろそろ理科の補習授業が始まる時間だね。2人も補習授業でるんでしょ」
どうやらここの2人はかなり勉強に前向きのようだ。
補習授業ということは、やはり今は夏休みなのだろうか・・・
この世界の2人に従い、補習授業に出てみることにした。
5章 結奈ちゃんと陽翔君の場合 完 続く
階段を上がると、左手の右側の教室は4年1組・2組の札が掛けられており、右手廊下の教室には手前から5年1組・2組、少し間があって先には6年1組・2組の札が見える。その先も教室があるようだが、よくわからない。
その5年生と6年生の間の壁辺りに数人の生徒が集まって何かを見ている。
結奈ちゃんと陽翔君もそちらへ行ってみる。
2人が来たことに気づくと、一人の男子生徒が、壁に貼られている数枚の用紙から視線を外し、
「和仁さんはいつもすごいよね。今回は3位だよ。大橋君も今回は10位みたいだね」
そう言うと、再び壁の方へ視線を移す。
2人はとりあえず、貼られている用紙に目をやる。
それは校内テストの結果が貼り出されていた。成績順位表である。5年生・6年生合同の試験のようだ。
国語・算数・理科・社会・英語と総合順位の上位10位までが貼り出されている。
結奈ちゃんはすべての科目に名前がある。算数は2位だ。総合順位は3位。
陽翔君は国語が1位、英語が8位。総合順位は10位。
「結奈、すごいな~ 全科目ランクインで総合3位
お前凄い勉強できんだな~」
陽翔君が感心したように順位表を見ながら言う。
「陽翔君も国語1位じゃん」
「まぁ、僕たちだけど、僕たちじゃないけどな・・・」
「そうだよね」
2人は何となく顔を見合わせる。
だが、他の3人の名前はどこにもない。知っている名前も1つもない。
それ以上に、数多くの生徒がこの学校に在籍していること自体が驚きである。
自分たちの世界では来年の3月に廃校が決まっているというのに、こちらの世界では大勢の生徒で賑わっている。
どういうことか・・・こんな田舎に・・・
それともこちらの世界では、ここは田舎ではなく都会なのだろうか・・・
そんな思いが2人の頭をよぎる。
だが、仮にそうだとしても、どちらの世界が正しいという訳ではない。
どちらの世界も真実なのだから・・・
成績を貼り出されていることにも驚きである。
自分たちの学校ではみんなが同じであり、優劣はない。
だが、ここの学校では明らかに優劣がつけられている。
「2人とも凄いよね。ここの人なのに・・・」
誰が言ったのかわからないが、そんな言葉が背後から2人の耳に届いた。男の子の声の感じだ。
2人は顔を見合わせ、
(はぁ?ここの人?みんなここに住んでる人だろうに・・・)
そんな顔をした。
すると、先ほど結奈ちゃんに声をかけてきた女子生徒の一人が、結奈ちゃんの横に並び、
「やっぱり和仁さんは凄いね。いつもすべてが上位成績だもんね。大橋君も国語はいつも1位。あたしなんか一度も入ったことないのにさぁ」
褒められても、自分であって自分でないだけに返事に困る2人。
不用意な発言には気をつける。自分たちはここでは当然のはずだし、この女子の名前も当然知っている。
「そろそろ理科の補習授業が始まる時間だね。2人も補習授業でるんでしょ」
どうやらここの2人はかなり勉強に前向きのようだ。
補習授業ということは、やはり今は夏休みなのだろうか・・・
この世界の2人に従い、補習授業に出てみることにした。
5章 結奈ちゃんと陽翔君の場合 完 続く
9
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

きずな食堂へようこそ!
猫田ちゃろ
児童書・童話
中学生のナオキは両親の離婚の危機や経済的な問題から放課後に近くの子ども食堂に通うようになる。
子ども食堂では様々な境遇の子供たちが集まっていて、ナオキはそこで出会った仲間たちと徐々に打ち解けていくが、ある時子ども食堂の運営が危ぶまれていることを知り……
ちきゅうのおみやげ(α版)
山碕田鶴
絵本
宇宙人の たこ1号 が地球観光から戻ってきました。おみやげは何かな?
「まちがいさがし」をしながらお話が進む絵本です。フルカラー版と白黒版があります。フルカラー、白黒共に絵柄は同じです。
カラーユニバーサルデザイン推奨色使用。
※絵本レイアウト+加筆修正した改稿版が「絵本ひろば」にあります。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!
緋村燐
児童書・童話
ハンターの父とヴァンパイアの母の間に生まれた弧月望乃。
ヴァンパイアでありながらハンターになる夢を持つ彼女は、全寮制の学園に通うための準備をしていた。
そこに突然、母の友人の子供たちを守る護衛任務を依頼される。
楽しみにしていた学園に行くのは遅れるが、初めての依頼とあってワクワクしていた。
だが、その護衛対象の三兄弟とは中々仲良く出来なくて――。
メイドとして三兄弟を護衛するJCヴァンパイアの奮闘記!
カクヨム、野いちご、ベリカ
にも掲載しています。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる