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3章 パラレルワールドの世界へ
もう一つの小学校
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「ねえ、先生・・・タイム・トラベラーって知ってる?」
小阪君は、上下左右をしきりに見回している沙織先生の顔を見上げるようにして、質問する。
「えっ、あっ、何言ってんのよ、こんな時に・・・」
沙織先生の視線が一旦、小阪君に向けられる。そして小阪君を除けるようにして、ドアノブに手をかける。ノブを下げ、ドアを前後に押してみるが全く動かない。
「なんで???」
沙織先生が困惑した表情をみせると、
「開かないよ・・・僕しか開けられないんだ・・・このドアはね・・・」
自分の横で、しきりにドアを開けようとガチャガチャしている沙織先生に向かって言った。
「どういうことなの、小阪君!」
沙織先生の声が、怒るように自然と大きくなり、小阪君を睨むようにする。
「だからさぁ、先生・・・タイム・トラベラーって知ってるの?」
再び小阪君が淡々とした口調で、横にいる沙織先生に尋ねる。
すると、
「SF小説の『時をかける少女』のことだろう・・・」
今度は読書好きの陽翔君が、苛立つように答える。
「そう・・・さすがに読書好きだね、大橋君は・・・」
小阪君は陽翔君の方へ向き直り言った。
「だからそれがなんだよ。まさか僕たちがタイムスリップをしたとでも言うのかよ」
「まさか・・・そんなことは現実にはあり得ないよ。タイムスリップはね・・・」
小阪君は何か妙な言い方をする。
「タイムスリップはねって、変な言い方するのは止めなさい・・・」
横に立っている小阪君を横から少し見下ろすようにしながら、沙織先生が言う。
「ハイハイ、わかりました」
小阪君は面倒くさそうにそう言うと、
「僕はパラレル・トラベラーさ・・・」
その口調はとても小学校6年生の感じではない。心なしか表情も大人びて見える。
「パラレル・トラベラー?」
沙織先生は困惑気味に繰り返す。
「それって・・・先生・・・パラレルワールドのことを言ってるんじゃないかな?
そうだろう、小阪君・・・」
陽翔君は小阪君を凝視するように言う。
「その通り・・・」
そう言うと、小阪君は一人で勝手に納得したように頷いている。
「おい、なんだよ。そのパラレルワールドっての・・・」
蓮君が陽翔君に訊く。
「簡単に説明すると、今僕たちがAの世界にいたとする。でもこの地球には、同じ時間が流れている世界がいくつも存在すると言われているんだ。他の世界も基本的には同じ世界なんだけど、その中身はそれぞれの世界とは、微妙に、あるいは大きく異なっている」
「そんなことあり得ないだろう・・・」
「いや、物理学的には、宇宙では存在するのではないかと言われている」
「へぇ~ 大橋君は結構そのジャンルに詳しいんだ」
小阪君が感心したように言う。
「で、僕たちにどうしろと・・・」
「別世界の君たちの学校を見てきたらいい・・・ただそう思っただけだよ・・・」
「でも元の世界に帰る方法はあるのかよ?」
「ここに来たのが10時・・・6時間後には自動的に元いた世界に戻れる。
あっ、そうそう・・・
大橋君は理解していると思うけど、元々ここに存在している君たちは別世界に行ってるよ。同じ世界に同じ人間が2人は存在できないからね・・・
それからここでの自分の両親に会うことはできないし、学校の敷地内から出ることもできない・・・
4時に元の世界に戻るけど、時間も同時に進行しているので、戻った時間もここの時間と同じになる。
説明はもういいかな?
さぁ、ドアを開けてあげるよ・・・
ちなみに校舎は建て替わっているから、君たちが思っている校舎とは別物だよ」
小阪君はそう言うとドアノブに手をかけた。
内開きのドアが簡単に開いた。
3章 パラレルワールドの世界へ・・・ 完 続く
小阪君は、上下左右をしきりに見回している沙織先生の顔を見上げるようにして、質問する。
「えっ、あっ、何言ってんのよ、こんな時に・・・」
沙織先生の視線が一旦、小阪君に向けられる。そして小阪君を除けるようにして、ドアノブに手をかける。ノブを下げ、ドアを前後に押してみるが全く動かない。
「なんで???」
沙織先生が困惑した表情をみせると、
「開かないよ・・・僕しか開けられないんだ・・・このドアはね・・・」
自分の横で、しきりにドアを開けようとガチャガチャしている沙織先生に向かって言った。
「どういうことなの、小阪君!」
沙織先生の声が、怒るように自然と大きくなり、小阪君を睨むようにする。
「だからさぁ、先生・・・タイム・トラベラーって知ってるの?」
再び小阪君が淡々とした口調で、横にいる沙織先生に尋ねる。
すると、
「SF小説の『時をかける少女』のことだろう・・・」
今度は読書好きの陽翔君が、苛立つように答える。
「そう・・・さすがに読書好きだね、大橋君は・・・」
小阪君は陽翔君の方へ向き直り言った。
「だからそれがなんだよ。まさか僕たちがタイムスリップをしたとでも言うのかよ」
「まさか・・・そんなことは現実にはあり得ないよ。タイムスリップはね・・・」
小阪君は何か妙な言い方をする。
「タイムスリップはねって、変な言い方するのは止めなさい・・・」
横に立っている小阪君を横から少し見下ろすようにしながら、沙織先生が言う。
「ハイハイ、わかりました」
小阪君は面倒くさそうにそう言うと、
「僕はパラレル・トラベラーさ・・・」
その口調はとても小学校6年生の感じではない。心なしか表情も大人びて見える。
「パラレル・トラベラー?」
沙織先生は困惑気味に繰り返す。
「それって・・・先生・・・パラレルワールドのことを言ってるんじゃないかな?
そうだろう、小阪君・・・」
陽翔君は小阪君を凝視するように言う。
「その通り・・・」
そう言うと、小阪君は一人で勝手に納得したように頷いている。
「おい、なんだよ。そのパラレルワールドっての・・・」
蓮君が陽翔君に訊く。
「簡単に説明すると、今僕たちがAの世界にいたとする。でもこの地球には、同じ時間が流れている世界がいくつも存在すると言われているんだ。他の世界も基本的には同じ世界なんだけど、その中身はそれぞれの世界とは、微妙に、あるいは大きく異なっている」
「そんなことあり得ないだろう・・・」
「いや、物理学的には、宇宙では存在するのではないかと言われている」
「へぇ~ 大橋君は結構そのジャンルに詳しいんだ」
小阪君が感心したように言う。
「で、僕たちにどうしろと・・・」
「別世界の君たちの学校を見てきたらいい・・・ただそう思っただけだよ・・・」
「でも元の世界に帰る方法はあるのかよ?」
「ここに来たのが10時・・・6時間後には自動的に元いた世界に戻れる。
あっ、そうそう・・・
大橋君は理解していると思うけど、元々ここに存在している君たちは別世界に行ってるよ。同じ世界に同じ人間が2人は存在できないからね・・・
それからここでの自分の両親に会うことはできないし、学校の敷地内から出ることもできない・・・
4時に元の世界に戻るけど、時間も同時に進行しているので、戻った時間もここの時間と同じになる。
説明はもういいかな?
さぁ、ドアを開けてあげるよ・・・
ちなみに校舎は建て替わっているから、君たちが思っている校舎とは別物だよ」
小阪君はそう言うとドアノブに手をかけた。
内開きのドアが簡単に開いた。
3章 パラレルワールドの世界へ・・・ 完 続く
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