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予期せぬ事態
悪魔サマエルが蘇る時…
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あの日以来、木崎君はあまり小宮君に近づかなくなっていた。もともと仲が良いわけでもないので、他のクラスメイトもそれに気付かない。
小宮君は教室では相変わらずの姿勢を崩さない。話しかける生徒もほとんどいない。
そんな中、一学期もそろそろ終わろうとしていた。2年生は夏休み期間を利用してクラス毎に1泊2日で体験学習をする決まりになっている。
小宮君のクラスは、隣県での農業体験だ。クラスは男子21名・女子19名の合計40名だ。
農業体験の場所は、街外れの、少し山の中へ入った所の中学の廃校を利用して宿泊施設に、校庭を農地に開拓して、農業体験ができるようにしている場所だった。宿泊施設と言っても、ホテルや旅館ではなく、簡易的にベットが置かれている程度だ。食事の支度も湯沸かしもすべて自分たちでやる。
大通りから脇道に入ると、マイクロバスがやっと通れるくらいの細い道になった。5分ほど上がると少し平坦になり、その先に施設はあった。時間は午後の2時を少し過ぎた頃だ。携帯電話は受信できる場所とできない場所があるようだ。そういう意味での環境はあまりよくない。
施設は木造の4階建て。横長の学校なら2階でも十分なのだろうが、地形の関係で縦長の校舎になったのかもしれない。駐車場でバスを降り、25mプール2面くらいの校庭に作られた畑を右手に見ながら、校舎に入る。下駄箱が並んでいるのがいかにも元中学校だ。下駄箱で室内履きに履き替える。1階は食堂や炊事場・お風呂などが備えられている。2階、3階は半分が元教室の宿泊施設で,あとは2,3階が吹き抜けの体育館となっていた。荷物を置いて、体操着に着替え、校庭の集合となった。エレベータはもちろんない。2階が学校関係者用宿舎、3階が男子宿舎で4階が女子宿舎となっている。
校庭に全員が揃ったのは20分後だった。後ろの畑には様々な野菜が育っている。生徒の前に先生が立ち、先生の横には、収穫の手伝いをしてくれる4人の農家さんが立っていた。
「よろしくお願いしまーす」
生徒全員が頭を下げる。農家さんたちも笑顔で頭を下げる。
これから全員で今夜の夕食用の野菜を収穫するのだ。
ほんどの生徒が収穫は初めての体験。課外学習とはいえ、全員が楽しいそうに収穫している。その中には木崎君もいるが、小宮君は相変わらず一人で淡々と作業していた。
夕食は自分たちで作るバーベキューだ。最近の火起こしは簡単になった。すぐに用意ができる。肉や魚介類は事前に用意してある。
『キュウリなんか焼いてどうすんだよ。肉焼けよ、肉…』
なんて楽しい会話が聞こえてくる。
就寝は10時と決めているが、そのあたりは各自・各部屋に任せている。
結局、全員が寝静まったのは夜中の1時を過ぎた頃だった。
ウトウトと眠りについたであろう頃にけたたましくベルが鳴った。と同時に、全部の照明が点いた。全員が何事かとベッドから飛び起きそれぞれの部屋から廊下に出て来る。2時を少し過ぎた頃だ。そのベルの正体はすくにわかった。火災報知器だ。
「まさか本当に火事じゃないよな」
男子生徒の一人が心配そうに言う。先生が2階から上がって来た。
「1階から焦げているような臭いがする。みんな、ここで待機してくれ!先生が下を見て来る。もし女子が来たら一緒にここで待ってくれ!いいな!」
そう言うと先生は急いで階段を下りて行った。
先生は再び3階から2階へ降り、さらに1階に降りようとしたその時、ドーンと大きな音と共に大きな揺れを感じよろめいた。危うく階段から落ちそうになる。
(なんだ今のは?爆発か?)
先生が2階から1階の踊り場を曲がり降りようとすると、階段の下はすでに燃え始めていた。火に何かが引火して爆発したのかもしれない。
(ここからは降りられない。反対の階段を見に行こう…)
再び2階へ戻ると、真っすぐな廊下を走り、反対側から1階へ降りた。出口は中央の玄関だ。
降りて唖然とした。すでに下駄箱付近まで火で覆われている。熱さが皮膚に伝わってくる。
(なんてことだ!)
こちら側からの出口はない。これでは外に出られない。
(まず、119番へ連絡だ!)
携帯をかけようとすると圏外になっている。
(こんな時になんで…)
泣きたい気分だ。
(とりあえず、生徒の所へ急いで戻ろう…)
急いで3階へ戻ると、女子生徒も全員が不安そうに集まっていた。
「何か爆発したんですか?」
生徒の一人が先生に尋ねた。
「そうかもしれない…とにかく火事で1階からは出れない。携帯だけ持って、煙や火が上がってくる前に屋上へ避難しよう。屋上の床はコンクリートのはずだ。今はそれしかない。」
全員がバタバタと急いで屋上へ向かった。
予期せぬ事態 完
小宮君は教室では相変わらずの姿勢を崩さない。話しかける生徒もほとんどいない。
そんな中、一学期もそろそろ終わろうとしていた。2年生は夏休み期間を利用してクラス毎に1泊2日で体験学習をする決まりになっている。
小宮君のクラスは、隣県での農業体験だ。クラスは男子21名・女子19名の合計40名だ。
農業体験の場所は、街外れの、少し山の中へ入った所の中学の廃校を利用して宿泊施設に、校庭を農地に開拓して、農業体験ができるようにしている場所だった。宿泊施設と言っても、ホテルや旅館ではなく、簡易的にベットが置かれている程度だ。食事の支度も湯沸かしもすべて自分たちでやる。
大通りから脇道に入ると、マイクロバスがやっと通れるくらいの細い道になった。5分ほど上がると少し平坦になり、その先に施設はあった。時間は午後の2時を少し過ぎた頃だ。携帯電話は受信できる場所とできない場所があるようだ。そういう意味での環境はあまりよくない。
施設は木造の4階建て。横長の学校なら2階でも十分なのだろうが、地形の関係で縦長の校舎になったのかもしれない。駐車場でバスを降り、25mプール2面くらいの校庭に作られた畑を右手に見ながら、校舎に入る。下駄箱が並んでいるのがいかにも元中学校だ。下駄箱で室内履きに履き替える。1階は食堂や炊事場・お風呂などが備えられている。2階、3階は半分が元教室の宿泊施設で,あとは2,3階が吹き抜けの体育館となっていた。荷物を置いて、体操着に着替え、校庭の集合となった。エレベータはもちろんない。2階が学校関係者用宿舎、3階が男子宿舎で4階が女子宿舎となっている。
校庭に全員が揃ったのは20分後だった。後ろの畑には様々な野菜が育っている。生徒の前に先生が立ち、先生の横には、収穫の手伝いをしてくれる4人の農家さんが立っていた。
「よろしくお願いしまーす」
生徒全員が頭を下げる。農家さんたちも笑顔で頭を下げる。
これから全員で今夜の夕食用の野菜を収穫するのだ。
ほんどの生徒が収穫は初めての体験。課外学習とはいえ、全員が楽しいそうに収穫している。その中には木崎君もいるが、小宮君は相変わらず一人で淡々と作業していた。
夕食は自分たちで作るバーベキューだ。最近の火起こしは簡単になった。すぐに用意ができる。肉や魚介類は事前に用意してある。
『キュウリなんか焼いてどうすんだよ。肉焼けよ、肉…』
なんて楽しい会話が聞こえてくる。
就寝は10時と決めているが、そのあたりは各自・各部屋に任せている。
結局、全員が寝静まったのは夜中の1時を過ぎた頃だった。
ウトウトと眠りについたであろう頃にけたたましくベルが鳴った。と同時に、全部の照明が点いた。全員が何事かとベッドから飛び起きそれぞれの部屋から廊下に出て来る。2時を少し過ぎた頃だ。そのベルの正体はすくにわかった。火災報知器だ。
「まさか本当に火事じゃないよな」
男子生徒の一人が心配そうに言う。先生が2階から上がって来た。
「1階から焦げているような臭いがする。みんな、ここで待機してくれ!先生が下を見て来る。もし女子が来たら一緒にここで待ってくれ!いいな!」
そう言うと先生は急いで階段を下りて行った。
先生は再び3階から2階へ降り、さらに1階に降りようとしたその時、ドーンと大きな音と共に大きな揺れを感じよろめいた。危うく階段から落ちそうになる。
(なんだ今のは?爆発か?)
先生が2階から1階の踊り場を曲がり降りようとすると、階段の下はすでに燃え始めていた。火に何かが引火して爆発したのかもしれない。
(ここからは降りられない。反対の階段を見に行こう…)
再び2階へ戻ると、真っすぐな廊下を走り、反対側から1階へ降りた。出口は中央の玄関だ。
降りて唖然とした。すでに下駄箱付近まで火で覆われている。熱さが皮膚に伝わってくる。
(なんてことだ!)
こちら側からの出口はない。これでは外に出られない。
(まず、119番へ連絡だ!)
携帯をかけようとすると圏外になっている。
(こんな時になんで…)
泣きたい気分だ。
(とりあえず、生徒の所へ急いで戻ろう…)
急いで3階へ戻ると、女子生徒も全員が不安そうに集まっていた。
「何か爆発したんですか?」
生徒の一人が先生に尋ねた。
「そうかもしれない…とにかく火事で1階からは出れない。携帯だけ持って、煙や火が上がってくる前に屋上へ避難しよう。屋上の床はコンクリートのはずだ。今はそれしかない。」
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