悪魔サマエルが蘇る時…

ゆきもと けい

文字の大きさ
上 下
3 / 6
復讐

悪魔サマエルが蘇る時…

しおりを挟む
 それから数日して、例の3人は自主退学した。退学理由は明らかになっていないが、同じクラスの3人が同時に退学するのは珍しい。何かやらかしたのだろうという噂が何となく広まっていた。だが、真相は誰も知らない。厳密に言うと小宮君も知らない。ただその後、イジメの中心的存在だった元生徒は自殺したらしい…

 それから3週間ほどが過ぎたある日…

 運命の悪ふざけか…時の悪戯か…

 小宮君は自分をイジメていた中学の同級生と偶然出くわした。それも地元ではなく、小宮君の通う高校の近くでだ。地元からだと電車で30分のほどの距離。
 道路を正面からふざけながら歩いて来る2人に先に気付いたのは小宮君の方だった。
 以前の小宮君なら慌てて物陰に隠れていたであろう。だが今の小宮君は隠れるどころか少し嬉しくなった。

(そうだ…!さんざん、僕をイジメてきたあいつらに天罰を下してやるか…)

「おう!小宮じゃないか」

 一人が声をかけてきた。だぶついたズボン…見るからにあまり品のある体裁をしていない。

「久しぶりですね。相変わらず、おバカそうで…」

 小宮君はわざと神経を逆なでするような言い方をした。以前の怯えていた小宮君からは想像もできない。

「なんだよ、お前…その言い方はよぉ…喧嘩売ってんのかよ」

「まさかですよ。僕が君たちに喧嘩なんか売る訳ないじゃないですか?」

「そりゃそうだろう…又、イジメられたいのかと思ったぜ」

 明らかに自分の優位な立場を誇示している風だ。

「でも何でこんな所を歩いているの?」

「あん?この先のすごくうまいラーメン屋があるって聞いたから食いにいくところだ」

 それは小宮君の高校の近くのラーメン屋でいつも長い列ができている店のことだ。

(だが今は平日の日中だ。こいつら高校に行ってないのか…)

 と、小宮君は思う。

「お前、この近くの高校に通っているのか?」

「そうだよ。時間があるんだったら、少し僕が遊んであげましょうか?」

「遊ぶ???」

 二人はキョトンと顔を見合わせた。こいつ何を言ってるんだ…そんな感じである。

「せっかく遭ったから、君たちにすごく面白いモノを見せてあげたいんだ」

「おっ…おお…」

 二人は自分たちが知っている小宮君とは別人のように変わっていることに戸惑っている。以前のような、おどおどとしてどもるような態度が微塵もない。

 小宮君はスタスタと歩き始めた。2人は小宮君の後を従うようについて行く。向かっている場所はあの工場の跡地だ。この近くで出会えたのはまさに幸運だった。あそこはまさに遊ぶにはうってつけの場所だ。跡地は相変わらずの廃墟ぶりで、歩くと、足元でガレキがザクザクと鳴る。

「な、なんだよ、こんなところに来て…」

 二人は何か不気味さを感じているようだ。

「遊んであげるって言ったじゃん…でももう一人呼ばなきゃ…いや…一人じゃないかな…」

「何言ってんだよ。意味わかんねえよ」

「さて…」

 2人に背を向けていた小宮君が2人の方へ向きを変えると…

「出でよ!サマエル!」

 小宮君は両手を大きく上にあげた。

 すると以前と同じように、あの寒気のするような異様な気配が辺りを包み込み始め、2人の頭上に盲目の大きな真っ赤なヘビ、悪魔サマエルが大きなとぐろを巻き、姿を現した。

「うわぁぁぁ…」

 2人は大きなうなり声を上げると、ヘナヘナと腰がくだけ、その場にへたれこんでしまった。

「さぁ、サマエルが遊んでくれますよ。遊びの代償は…そう…君たちの命でいいかな…ハハハ…」

 それから3日後、TVニュースで若者2人が廃工場で死んでいるのが発見されたと放送された。警察は事件、事故の両面での捜査を行うらしい。
 ワイドショーでは、
【全身の骨が折れているところから何か強いもので縛られ圧迫死したようだ。なのに身体には圧迫跡が一切ないため、どういう風に圧迫されたのかわからない。もしこれが殺人ならば、こんな風に殺害することなどできるのか?警察も原因がわからない為、処理に困っている、と法医学者が語っている。】

 表面的には、小宮君は相変わらずの立場を崩さずに登校していた。自分の席で一人でいる。話しかける生徒もいない。

 その若者が誰なのか、ニュース等では明かされていないが、死んだ若者の地元では自然と誰が死んだのか、その情報が出回る。

 小宮君のクラスメイトは死んだ彼らのことを全く知らない。ただ、高校の近くでの出来事だという事以外、興味はないようだ。クラスメイトに一人、小宮君と同じ中学校出身の生徒がいる。名前は木崎 健太郎。彼はもちろん、亡くなった2人のことも知っている。小宮君をイジメていたことも…

 彼は思う…

(小宮をイジメていたクラスメイト3人は突然に自主退学、一人は自殺したのか…?中学時代の2人は不審な死。これは単なる偶然なんだろうか…)

 木崎君は一番後ろの席に座っている小宮君に目をやった。そこには相変わらずの小宮君が座っていた。

 復讐 完





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

What a Wonderful World

一兎風タウ
SF
紀元後3518年。 荒廃したこの地には、戦闘用アンドロイド軍『オリュンポス軍』のみが存在していた⋯。 ー⋯はずだった。 十数年前に壊滅させた戦闘用アンドロイド軍『高天原軍』が再侵攻を始めた。 膠着状態となり、オリュンポス軍最高司令官のゼウスは惑星からの離脱、および爆破を決定した。 それに反発したポー、ハデス、ヘスティアの3人は脱走し、この惑星上を放浪する旅に出る。 これは、彼らが何かを見つけるための物語。 SF(すこしふしぎ)漫画の小説版。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

十年前の片思い。時を越えて、再び。

赤木さなぎ
SF
  キミは二六歳のしがない小説書きだ。  いつか自分の書いた小説が日の目を浴びる事を夢見て、日々をアルバイトで食い繋ぎ、休日や空き時間は頭の中に広がる混沌とした世界を文字に起こし、紡いでいく事に没頭していた。  キミには淡く苦い失恋の思い出がある。  十年前、キミがまだ高校一年生だった頃。一目惚れした相手は、通い詰めていた図書室で出会った、三年の“高橋先輩”だ。  しかし、当時のキミは大したアプローチを掛けることも出来ず、関係の進展も無く、それは片思いの苦い記憶として残っている。  そして、キミはその片思いを十年経った今でも引きずっていた。  ある日の事だ。  いつもと同じ様にバイトを上がり、安アパートの自室へと帰ると、部屋の灯りが点いたままだった。  家を出る際に消灯し忘れたのだろうと思いつつも扉を開けると、そこには居るはずの無い、学生服に身を包む女の姿。  キミは、その女を知っている。 「ホームズ君、久しぶりね」  その声音は、記憶の中の高橋先輩と同じ物だった。  顔も、声も、その姿は十年前の高橋先輩と相違ない。しかし、その女の浮かべる表情だけは、どれもキミの知らない物だった。  ――キミは夢を捨てて、名声を捨てて、富を捨てて、その輝かしい未来を捨てて、それでも、わたしを選んでくれるかしら?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

我ら新興文明保護艦隊

ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら? もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら? これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。 ※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...