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復讐
悪魔サマエルが蘇る時…
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それから数日して、例の3人は自主退学した。退学理由は明らかになっていないが、同じクラスの3人が同時に退学するのは珍しい。何かやらかしたのだろうという噂が何となく広まっていた。だが、真相は誰も知らない。厳密に言うと小宮君も知らない。ただその後、イジメの中心的存在だった元生徒は自殺したらしい…
それから3週間ほどが過ぎたある日…
運命の悪ふざけか…時の悪戯か…
小宮君は自分をイジメていた中学の同級生と偶然出くわした。それも地元ではなく、小宮君の通う高校の近くでだ。地元からだと電車で30分のほどの距離。
道路を正面からふざけながら歩いて来る2人に先に気付いたのは小宮君の方だった。
以前の小宮君なら慌てて物陰に隠れていたであろう。だが今の小宮君は隠れるどころか少し嬉しくなった。
(そうだ…!さんざん、僕をイジメてきたあいつらに天罰を下してやるか…)
「おう!小宮じゃないか」
一人が声をかけてきた。だぶついたズボン…見るからにあまり品のある体裁をしていない。
「久しぶりですね。相変わらず、おバカそうで…」
小宮君はわざと神経を逆なでするような言い方をした。以前の怯えていた小宮君からは想像もできない。
「なんだよ、お前…その言い方はよぉ…喧嘩売ってんのかよ」
「まさかですよ。僕が君たちに喧嘩なんか売る訳ないじゃないですか?」
「そりゃそうだろう…又、イジメられたいのかと思ったぜ」
明らかに自分の優位な立場を誇示している風だ。
「でも何でこんな所を歩いているの?」
「あん?この先のすごくうまいラーメン屋があるって聞いたから食いにいくところだ」
それは小宮君の高校の近くのラーメン屋でいつも長い列ができている店のことだ。
(だが今は平日の日中だ。こいつら高校に行ってないのか…)
と、小宮君は思う。
「お前、この近くの高校に通っているのか?」
「そうだよ。時間があるんだったら、少し僕が遊んであげましょうか?」
「遊ぶ???」
二人はキョトンと顔を見合わせた。こいつ何を言ってるんだ…そんな感じである。
「せっかく遭ったから、君たちにすごく面白いモノを見せてあげたいんだ」
「おっ…おお…」
二人は自分たちが知っている小宮君とは別人のように変わっていることに戸惑っている。以前のような、おどおどとしてどもるような態度が微塵もない。
小宮君はスタスタと歩き始めた。2人は小宮君の後を従うようについて行く。向かっている場所はあの工場の跡地だ。この近くで出会えたのはまさに幸運だった。あそこはまさに遊ぶにはうってつけの場所だ。跡地は相変わらずの廃墟ぶりで、歩くと、足元でガレキがザクザクと鳴る。
「な、なんだよ、こんなところに来て…」
二人は何か不気味さを感じているようだ。
「遊んであげるって言ったじゃん…でももう一人呼ばなきゃ…いや…一人じゃないかな…」
「何言ってんだよ。意味わかんねえよ」
「さて…」
2人に背を向けていた小宮君が2人の方へ向きを変えると…
「出でよ!サマエル!」
小宮君は両手を大きく上にあげた。
すると以前と同じように、あの寒気のするような異様な気配が辺りを包み込み始め、2人の頭上に盲目の大きな真っ赤なヘビ、悪魔サマエルが大きなとぐろを巻き、姿を現した。
「うわぁぁぁ…」
2人は大きなうなり声を上げると、ヘナヘナと腰がくだけ、その場にへたれこんでしまった。
「さぁ、サマエルが遊んでくれますよ。遊びの代償は…そう…君たちの命でいいかな…ハハハ…」
それから3日後、TVニュースで若者2人が廃工場で死んでいるのが発見されたと放送された。警察は事件、事故の両面での捜査を行うらしい。
ワイドショーでは、
【全身の骨が折れているところから何か強いもので縛られ圧迫死したようだ。なのに身体には圧迫跡が一切ないため、どういう風に圧迫されたのかわからない。もしこれが殺人ならば、こんな風に殺害することなどできるのか?警察も原因がわからない為、処理に困っている、と法医学者が語っている。】
表面的には、小宮君は相変わらずの立場を崩さずに登校していた。自分の席で一人でいる。話しかける生徒もいない。
その若者が誰なのか、ニュース等では明かされていないが、死んだ若者の地元では自然と誰が死んだのか、その情報が出回る。
小宮君のクラスメイトは死んだ彼らのことを全く知らない。ただ、高校の近くでの出来事だという事以外、興味はないようだ。クラスメイトに一人、小宮君と同じ中学校出身の生徒がいる。名前は木崎 健太郎。彼はもちろん、亡くなった2人のことも知っている。小宮君をイジメていたことも…
彼は思う…
(小宮をイジメていたクラスメイト3人は突然に自主退学、一人は自殺したのか…?中学時代の2人は不審な死。これは単なる偶然なんだろうか…)
木崎君は一番後ろの席に座っている小宮君に目をやった。そこには相変わらずの小宮君が座っていた。
復讐 完
それから3週間ほどが過ぎたある日…
運命の悪ふざけか…時の悪戯か…
小宮君は自分をイジメていた中学の同級生と偶然出くわした。それも地元ではなく、小宮君の通う高校の近くでだ。地元からだと電車で30分のほどの距離。
道路を正面からふざけながら歩いて来る2人に先に気付いたのは小宮君の方だった。
以前の小宮君なら慌てて物陰に隠れていたであろう。だが今の小宮君は隠れるどころか少し嬉しくなった。
(そうだ…!さんざん、僕をイジメてきたあいつらに天罰を下してやるか…)
「おう!小宮じゃないか」
一人が声をかけてきた。だぶついたズボン…見るからにあまり品のある体裁をしていない。
「久しぶりですね。相変わらず、おバカそうで…」
小宮君はわざと神経を逆なでするような言い方をした。以前の怯えていた小宮君からは想像もできない。
「なんだよ、お前…その言い方はよぉ…喧嘩売ってんのかよ」
「まさかですよ。僕が君たちに喧嘩なんか売る訳ないじゃないですか?」
「そりゃそうだろう…又、イジメられたいのかと思ったぜ」
明らかに自分の優位な立場を誇示している風だ。
「でも何でこんな所を歩いているの?」
「あん?この先のすごくうまいラーメン屋があるって聞いたから食いにいくところだ」
それは小宮君の高校の近くのラーメン屋でいつも長い列ができている店のことだ。
(だが今は平日の日中だ。こいつら高校に行ってないのか…)
と、小宮君は思う。
「お前、この近くの高校に通っているのか?」
「そうだよ。時間があるんだったら、少し僕が遊んであげましょうか?」
「遊ぶ???」
二人はキョトンと顔を見合わせた。こいつ何を言ってるんだ…そんな感じである。
「せっかく遭ったから、君たちにすごく面白いモノを見せてあげたいんだ」
「おっ…おお…」
二人は自分たちが知っている小宮君とは別人のように変わっていることに戸惑っている。以前のような、おどおどとしてどもるような態度が微塵もない。
小宮君はスタスタと歩き始めた。2人は小宮君の後を従うようについて行く。向かっている場所はあの工場の跡地だ。この近くで出会えたのはまさに幸運だった。あそこはまさに遊ぶにはうってつけの場所だ。跡地は相変わらずの廃墟ぶりで、歩くと、足元でガレキがザクザクと鳴る。
「な、なんだよ、こんなところに来て…」
二人は何か不気味さを感じているようだ。
「遊んであげるって言ったじゃん…でももう一人呼ばなきゃ…いや…一人じゃないかな…」
「何言ってんだよ。意味わかんねえよ」
「さて…」
2人に背を向けていた小宮君が2人の方へ向きを変えると…
「出でよ!サマエル!」
小宮君は両手を大きく上にあげた。
すると以前と同じように、あの寒気のするような異様な気配が辺りを包み込み始め、2人の頭上に盲目の大きな真っ赤なヘビ、悪魔サマエルが大きなとぐろを巻き、姿を現した。
「うわぁぁぁ…」
2人は大きなうなり声を上げると、ヘナヘナと腰がくだけ、その場にへたれこんでしまった。
「さぁ、サマエルが遊んでくれますよ。遊びの代償は…そう…君たちの命でいいかな…ハハハ…」
それから3日後、TVニュースで若者2人が廃工場で死んでいるのが発見されたと放送された。警察は事件、事故の両面での捜査を行うらしい。
ワイドショーでは、
【全身の骨が折れているところから何か強いもので縛られ圧迫死したようだ。なのに身体には圧迫跡が一切ないため、どういう風に圧迫されたのかわからない。もしこれが殺人ならば、こんな風に殺害することなどできるのか?警察も原因がわからない為、処理に困っている、と法医学者が語っている。】
表面的には、小宮君は相変わらずの立場を崩さずに登校していた。自分の席で一人でいる。話しかける生徒もいない。
その若者が誰なのか、ニュース等では明かされていないが、死んだ若者の地元では自然と誰が死んだのか、その情報が出回る。
小宮君のクラスメイトは死んだ彼らのことを全く知らない。ただ、高校の近くでの出来事だという事以外、興味はないようだ。クラスメイトに一人、小宮君と同じ中学校出身の生徒がいる。名前は木崎 健太郎。彼はもちろん、亡くなった2人のことも知っている。小宮君をイジメていたことも…
彼は思う…
(小宮をイジメていたクラスメイト3人は突然に自主退学、一人は自殺したのか…?中学時代の2人は不審な死。これは単なる偶然なんだろうか…)
木崎君は一番後ろの席に座っている小宮君に目をやった。そこには相変わらずの小宮君が座っていた。
復讐 完
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