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23章 いよいよ・・・

死なない死刑囚の恐怖

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(あの刑務官、俺に何をしていたんだ。なんかわからんが、機械みたいなモノを俺の身体に押し当て、頭から腹部までを…そう…ハンドスキャナーででも撮っているような感じだった…
目が見えねぇから正確に何かはわからんが…

ん?目が見えないのに、なぜ刑務官ってわかったかってか…
少し前に刑務医が脈と心音を確認して出て行ったからな…

だが、俺の身体には何の変化もないようだ…
死なない理由でも探すつもりか…
まぁ、それならそれもいいだろう…)

    ☆      ★
  
 福崎と熊野は高木の研究室に来ていた。
 夜なので、部屋には相変わらず誰もいない。部屋の外からも何の物音もしない。
 2人と高木は向かい合うように座った。高木は少しヨレかかっている白衣を着ている。
 2人の前には紙コップのコーヒーが置かれている。

「上手く撮れていると良いんですが…」

 福崎が自分の膝上にある黒いカバンから、借りていたCTスキャナーを取り出しテーブルの上に置いた。
 小型を優先しているため、スキャナーに画像を確認する画面がついていない。本体からSDカードを取り出し、パソコンで確認する他ないが、画像を見るためには認証が必要になる。データの漏洩防止策だ。

 高木はそれを持って立ち上がると、早速、窓際に置かれたパソコンの差込口にさし、暗証番号を入力し、画像の確認を始めた。

「大丈夫、きれいに撮れていますよ」

 2人からは高木の背中が邪魔して、画面が見えない。
 高木はしきりと、マウスを動かして確認しているようだ。
 たまに前のめりになり時々頷く。
 2,3分は経っただろうか…
 その間、2人は黙ってその後ろ姿を見ていた。

「やっぱり思った通りだ」

そう呟くと熊野に、

「ちょっと来てこれを見てくれ」

 画面を見たまま、そう言った。
 2人は椅子から立ち上がり、高木の背後から画面を覗き込む。

画面には白黒画像の、いわゆるレントゲン写真のようなモノが映し出されている。頭部の画像であることはすぐにわかる。

「頭部の画像で、大脳と海馬と脳幹辺りに3つ、小さい異物が見えるだろう…」

 高木はパソコンの画面を見たまま熊野にそう言うと、人差し指でその辺りを丸く指す。言われてみれば、非常に小さい四角の物質が確認できる。

「心臓や肺近くにも、この物質は確認できる」

「これは何だ?」

 熊野が高木に声をかける。

「これが彼の分身を作っている基だと思う。無から有は生まれない…分身を作り出すには何らかの核になる物質が必要だと考えた。それがこれだ」

 高木は振り返り、見上げるように熊野の顔に目をやる。

「なんですか?これは?」

 福崎刑務官もこちらへ向き直った高木に尋ねた。
 高木は今度は福崎刑務官の方へ視線を移す。

「正確にはわかりませんが、遺伝子情報などをコピーしてそれを増幅してアウトプットし、形として作り出す…そんな感じではないかと思います…これによって分身を作り出している…
しかし、あの日記…いや…資料かな…それには不完全だと記されている。
何が不完全なのかはこれではわかりません…」

「ではこの先はどうすれば良いのですか?」

 福崎刑務官がさらに質問を続けた。

「その手立ては考えてあります。これらを破壊すればいいんです」

「どうやってですか?」

 2人は同時にそう言うと、顔を見合わせた。

「お二人に、その方法をこれから説明します」

 3人は又、テーブルに戻って行った。


  23章 いよいよ・・・ 完 続く
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