23 / 30
23章 いよいよ・・・
死なない死刑囚の恐怖
しおりを挟む
(あの刑務官、俺に何をしていたんだ。なんかわからんが、機械みたいなモノを俺の身体に押し当て、頭から腹部までを…そう…ハンドスキャナーででも撮っているような感じだった…
目が見えねぇから正確に何かはわからんが…
ん?目が見えないのに、なぜ刑務官ってわかったかってか…
少し前に刑務医が脈と心音を確認して出て行ったからな…
だが、俺の身体には何の変化もないようだ…
死なない理由でも探すつもりか…
まぁ、それならそれもいいだろう…)
☆ ★
福崎と熊野は高木の研究室に来ていた。
夜なので、部屋には相変わらず誰もいない。部屋の外からも何の物音もしない。
2人と高木は向かい合うように座った。高木は少しヨレかかっている白衣を着ている。
2人の前には紙コップのコーヒーが置かれている。
「上手く撮れていると良いんですが…」
福崎が自分の膝上にある黒いカバンから、借りていたCTスキャナーを取り出しテーブルの上に置いた。
小型を優先しているため、スキャナーに画像を確認する画面がついていない。本体からSDカードを取り出し、パソコンで確認する他ないが、画像を見るためには認証が必要になる。データの漏洩防止策だ。
高木はそれを持って立ち上がると、早速、窓際に置かれたパソコンの差込口にさし、暗証番号を入力し、画像の確認を始めた。
「大丈夫、きれいに撮れていますよ」
2人からは高木の背中が邪魔して、画面が見えない。
高木はしきりと、マウスを動かして確認しているようだ。
たまに前のめりになり時々頷く。
2,3分は経っただろうか…
その間、2人は黙ってその後ろ姿を見ていた。
「やっぱり思った通りだ」
そう呟くと熊野に、
「ちょっと来てこれを見てくれ」
画面を見たまま、そう言った。
2人は椅子から立ち上がり、高木の背後から画面を覗き込む。
画面には白黒画像の、いわゆるレントゲン写真のようなモノが映し出されている。頭部の画像であることはすぐにわかる。
「頭部の画像で、大脳と海馬と脳幹辺りに3つ、小さい異物が見えるだろう…」
高木はパソコンの画面を見たまま熊野にそう言うと、人差し指でその辺りを丸く指す。言われてみれば、非常に小さい四角の物質が確認できる。
「心臓や肺近くにも、この物質は確認できる」
「これは何だ?」
熊野が高木に声をかける。
「これが彼の分身を作っている基だと思う。無から有は生まれない…分身を作り出すには何らかの核になる物質が必要だと考えた。それがこれだ」
高木は振り返り、見上げるように熊野の顔に目をやる。
「なんですか?これは?」
福崎刑務官もこちらへ向き直った高木に尋ねた。
高木は今度は福崎刑務官の方へ視線を移す。
「正確にはわかりませんが、遺伝子情報などをコピーしてそれを増幅してアウトプットし、形として作り出す…そんな感じではないかと思います…これによって分身を作り出している…
しかし、あの日記…いや…資料かな…それには不完全だと記されている。
何が不完全なのかはこれではわかりません…」
「ではこの先はどうすれば良いのですか?」
福崎刑務官がさらに質問を続けた。
「その手立ては考えてあります。これらを破壊すればいいんです」
「どうやってですか?」
2人は同時にそう言うと、顔を見合わせた。
「お二人に、その方法をこれから説明します」
3人は又、テーブルに戻って行った。
23章 いよいよ・・・ 完 続く
目が見えねぇから正確に何かはわからんが…
ん?目が見えないのに、なぜ刑務官ってわかったかってか…
少し前に刑務医が脈と心音を確認して出て行ったからな…
だが、俺の身体には何の変化もないようだ…
死なない理由でも探すつもりか…
まぁ、それならそれもいいだろう…)
☆ ★
福崎と熊野は高木の研究室に来ていた。
夜なので、部屋には相変わらず誰もいない。部屋の外からも何の物音もしない。
2人と高木は向かい合うように座った。高木は少しヨレかかっている白衣を着ている。
2人の前には紙コップのコーヒーが置かれている。
「上手く撮れていると良いんですが…」
福崎が自分の膝上にある黒いカバンから、借りていたCTスキャナーを取り出しテーブルの上に置いた。
小型を優先しているため、スキャナーに画像を確認する画面がついていない。本体からSDカードを取り出し、パソコンで確認する他ないが、画像を見るためには認証が必要になる。データの漏洩防止策だ。
高木はそれを持って立ち上がると、早速、窓際に置かれたパソコンの差込口にさし、暗証番号を入力し、画像の確認を始めた。
「大丈夫、きれいに撮れていますよ」
2人からは高木の背中が邪魔して、画面が見えない。
高木はしきりと、マウスを動かして確認しているようだ。
たまに前のめりになり時々頷く。
2,3分は経っただろうか…
その間、2人は黙ってその後ろ姿を見ていた。
「やっぱり思った通りだ」
そう呟くと熊野に、
「ちょっと来てこれを見てくれ」
画面を見たまま、そう言った。
2人は椅子から立ち上がり、高木の背後から画面を覗き込む。
画面には白黒画像の、いわゆるレントゲン写真のようなモノが映し出されている。頭部の画像であることはすぐにわかる。
「頭部の画像で、大脳と海馬と脳幹辺りに3つ、小さい異物が見えるだろう…」
高木はパソコンの画面を見たまま熊野にそう言うと、人差し指でその辺りを丸く指す。言われてみれば、非常に小さい四角の物質が確認できる。
「心臓や肺近くにも、この物質は確認できる」
「これは何だ?」
熊野が高木に声をかける。
「これが彼の分身を作っている基だと思う。無から有は生まれない…分身を作り出すには何らかの核になる物質が必要だと考えた。それがこれだ」
高木は振り返り、見上げるように熊野の顔に目をやる。
「なんですか?これは?」
福崎刑務官もこちらへ向き直った高木に尋ねた。
高木は今度は福崎刑務官の方へ視線を移す。
「正確にはわかりませんが、遺伝子情報などをコピーしてそれを増幅してアウトプットし、形として作り出す…そんな感じではないかと思います…これによって分身を作り出している…
しかし、あの日記…いや…資料かな…それには不完全だと記されている。
何が不完全なのかはこれではわかりません…」
「ではこの先はどうすれば良いのですか?」
福崎刑務官がさらに質問を続けた。
「その手立ては考えてあります。これらを破壊すればいいんです」
「どうやってですか?」
2人は同時にそう言うと、顔を見合わせた。
「お二人に、その方法をこれから説明します」
3人は又、テーブルに戻って行った。
23章 いよいよ・・・ 完 続く
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

こちら御神楽学園心霊部!
緒方あきら
ホラー
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。
灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。
それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。
。
部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。
前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。
通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。
どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。
封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。
決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。
事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。
ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。
都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。
延々と名前を問う不気味な声【名前】。
10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。
不動の焔
桜坂詠恋
ホラー
山中で発見された、内臓を食い破られた三体の遺体。 それが全ての始まりだった。
「警視庁刑事局捜査課特殊事件対策室」主任、高瀬が捜査に乗り出す中、東京の街にも伝説の鬼が現れ、その爪が、高瀬を執拗に追っていた女新聞記者・水野遠子へも向けられる。
しかし、それらは世界の破滅への序章に過ぎなかった。
今ある世界を打ち壊し、正義の名の下、新世界を作り上げようとする謎の男。
過去に過ちを犯し、死をもってそれを償う事も叶わず、赦しを請いながら生き続ける、闇の魂を持つ刑事・高瀬。
高瀬に命を救われ、彼を救いたいと願う光の魂を持つ高校生、大神千里。
千里は、男の企みを阻止する事が出来るのか。高瀬を、現世を救うことが出来るのか。
本当の敵は誰の心にもあり、そして、誰にも見えない
──手を伸ばせ。今度はオレが、その手を掴むから。
代償
とろろ
ホラー
山下一郎は、どこにでもいる平凡な工員だった。
彼の唯一の趣味は、古い骨董品店の中を見て回ること。
ある日、彼は謎の本をその店で手に入れる。
それは、望むものなら何でも手に入れることができる本だった。
その本が、導く先にあるものとは...!
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
182年の人生
山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。
人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。
二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。
(表紙絵/山碕田鶴)
※2024年11月〜 加筆修正の改稿工事中です。本日「67」まで済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる