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13章 アバターのつぶやき

死なない死刑囚の恐怖

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(さて、次は誰を狙うか…
 やはり、ここは生命力の強い若いヤツを狙うべきだろう…
 だとすると、執行ボタンを押しやがった残った2人のどちらかにするか…

 その方が本人…いや…アイツも喜ぶだろう…

 俺はアイツの刑が執行された後、つまりアイツの意識が無くなってから、現れても良かったんだが、死刑が確定し、命が危険にさらされ…そう…ここの拘置所に収監された後、俺は就寝中のアイツの前に1度だけ姿を現し、アイツと会った…
 そうしなければならない理由があったからだ…

 俺は会話はできない…人間ではあるが、完全な人間体ではないからだ…
 しかし、不完全な人間だからできることもある…
 好きな時に好きな場所に現れることができるのだ。
 これはあの学者先生が意図したことなのだろう…
 元々、戦争のための開発だったのだから…
 戦場においては、非常に役立つからな…

 それにしてもだ、アイツは俺が現れても意外と落ち着いていやがった…俺の存在を知らないはずなのに…
 そして同時に、アイツはあの事件のあらましを理解したのかもしれない…
 だが、俺の目的はそれでよかった…

 とりあえず、俺は消えた…アイツが元気だからな…

 そして、刑が執行された後、俺は再び姿を現した。

 アイツを復活させるために…
 俺が存在している限り、アイツは死なない…
 アイツの身体に大きなダメージが加わらない限りは…
 今の状態であれば、アイツは死なない…

 だが、アイツは知らない…

 俺がアイツの恨みを晴らし、アイツを復活させた時、復活するのがアイツではないことを…

 そう…俺様なんだ…俺様がアイツと入れ替わって復活するためには、アイツに俺の存在を知らしめる必要があったわけだ…

 アイツは本体でありながら、俺の受け皿でしかないのだ…

 それがあの学者先生の仕組んだ最大の罠…

 しかしアイツは自分が復活できると思っていやがる…ク・ク・ク…めでたいヤツだ…

 入れ替わった後、身体はアイツだが、意識や判断、会話、行動はすべて俺様ということになる…

 アイツの負から新たに誕生した俺様…生きるのが楽しみだ…

 フ・フ・フ…

 さて… 狩りに行くとしようか…)


  13章 アバターのつぶやき 完 続く
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