リクゴウシュ

バシリアス ※BL

最終話

　一年後。
　茄遊矢と羅聖は式を挙げた。
国は羅聖のもの。何でも出来た。
国・ラウグストゥスの名前も壁の中の王様の計らいにより。
《羅茄ラナ》と改められた。



　　　　　　　　◇◇◇



　羅聖はあの大きな丘に立っていた。
　墓石に刻まれたＳＡＩＲＯの文字。
　その隣の墓石に刻まれたＮＡＹＵＹＡの文字。
　２つの前それぞれに、真っ白な花の花束を置く。

　二四一六年四月二日。茄遊矢が亡くなった。３２歳だった。




　　　　　　　　◇◇◇



　羅聖は茄遊矢が亡くなってから実験に没頭した。
　羅聖は超天才の中の超天才だった。
　羅聖は茄遊矢の細胞から女性器を作った。
　それに自分の精子を入れ。
　βασιλιάςバシリアスの液体を羊水の代わりに、カプセルの中で妊娠を行った。
　βασιλιάςバシリアスの影響を受けない茄遊矢の遺伝子。
　オリジナルのβασιλιάςバシリアスだった羅聖の遺伝子。
　それに加えて、咲路の持つ最強の力イダの遺伝子。
　羅聖の作った全ての物質。
　これ等が絡み合い、その子供はただの、普通の、人間として生まれる。
　βασιλιάςバシリアスが相殺され、茄遊矢の外見の遺伝子の方が強く受け継がれ、バシリアスの齎もたらす色素の薄い髪等の容姿の特徴は全くない頑丈な身体の完全体に生まれた。
しかし。
　Διάβολοςディアボロスを多く受け継ぎ。
　晴天の空の様な深い天色の髪となった。
　人間として生まれたβασιλιάςバシリアスの恩恵を受ける子供。
　羅聖は彼をβασιλιάςバシリアスの中で育てた。



　　　　　　　　◇◇◇



　そして一年が経った。
「やっと。そっちに行けるよ。兄ニーさん。茄遊矢」
　茄遊矢の遺伝子を体内に取り込み死亡する為に羅聖が生んだ子供。
　羅聖は彼の胸を開き、心臓の一部を食べた。
　心臓は逆に羅聖を喰らった。
　羅聖は輝くような笑顔を見せた。
　二四一七年一一月一一日。羅聖が亡くなった。３３５歳だった。
　子供は自分の心臓に手を伸ばす。
　心臓は血液を吐き出す。
　建物の窓から血液が漏れ出し、人々を飲み込んだ。
　βασιλιάςバシリアスの浸透性が最も高かった、昔から在った建物達はなんとか無事だった。
　しかし。
　壁が緑色の光線レーザーで町を破壊し。
　地球から切り取られる様に光線レーザーが大地をくり抜き、空に浮かぶ島となった。
　壁の暴走だと他国の人々は言ったが。
　それは子供と家を守る防犯システムだったことを。
　数百年経っても誰も知ることはなかった。
　研究者達は三八六年後、壁の王様が名付けた島の名前を記した紙を発見することとなる。
　その三八六年の間、空に浮かんだ後の島に、誰も近づくことは出来なかった。
　しかし。
　島の上に元々いた人物は違った。
　誰よりもβασιλιάςバシリアスの浸透が高かったその人は一人孤独に生きた。
　真っ白な髪の青年が一人、ネックレスを手に島の端に立って。
　遥か下に広がる。
　島によって破壊されていく街を。
　そのアイル・トーン・ブルーの瞳で。
　ただただ眺めていた。