16 / 299
カナキリ
16
しおりを挟む
――――ヒグナルの寄越しただろう敵が現れ、幡多は殴り飛ばされる。
「いって!!」
ゴンッと頭を打つだけに済む幡多に天地が呆れたように言う。
「頑丈ですね……」
「いいから逃げろ天地!!」
「いいえ、敵ならいい練習相手です!」
天地がそう言い張って、敵と対峙する。
敵が飛び出し叫び声をあげる、天地も抑えた叫び声を発し、相手の声を相殺する。
相手は驚きを見せ、直ぐに状態を立て直し、叫ぶ。
その叫び声をも打ち消し、天地は相手よりも強い力で声を上げる。
敵は吹っ飛ばされ、超高層ビルの根元にめり込んだ。めり込んだビルが元通りに再生し、天地は驚く。
いきいきとしている天地を見て幡多は笑っていた。
「はは、元気になったな」
しかし、相手が吐血する姿を見て、天地は怯んでしまう。
それ以降、天地は敵に押される。
敵が天地のいる方向――北に叫び声を放ち、天地は敵に追い詰められる。
天地なら叫べば圧倒的なのだろうが、やはりヒトの形をした相手には思い切り叫び声を浴びせられないようだった。
追い詰められた末、町中にポツンと広がる巨大な青い湖のある場所へやって来ていた。
海よりも空よりも濃い真っ青な液体の湖は神秘的だった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉおおおぉぉぉぉおぉぉぉぉおおおおお――……」
敵が叫び声をあげた瞬間だった。
青い湖は大きく口を開き、敵と同じように「おおおおお……」と叫びながら天地や敵に襲い掛かって来た。
空を青い液体が覆って、青い湖が敵を飲み込み、津波の様に建物を追い尽くす。
「うっ……」
幡多は頭痛がして、頭を押さえる。
「幡多さん!」
幡多と天地が湖に飲み込まれそうになったその時。
ふわりと二人の身体が浮き、青い液体からギリギリで逃げ切ることができる。
「大丈夫か、幡多、天地くん」
二人を抱えて逃げたのは聖唖だった。
「聖唖……」
「聖唖さん!」
幡多と天地は聖唖を見て安心する。
聖唖は二人を下ろし、怪我をしていないか確認する。
「あれはなんなんですか?」
聖唖は天地が指さした、落ち着きを取り戻した青い湖に近付く。
「化け物の塊だ、刺激を与えたら暴走する。私はこれに用があってきた」
「こんな化け物湖あるなら先に言ってくれよ」
と幡多が言う。
「すまない、未だに動くとは思わなくてな。大丈夫だと思ったんだが、敵の声に反応してしまったようだ」
「うっ……」
幡多が頭を手で押さえると、聖唖が幡多の肩を抱く。
「大丈夫か?」
顔を覗き込き込み、聖唖と幡多は見つめ合う。
天地は黙り込む二人に、思わず目を逸らす。
「あれのせいか。何とかしよう」
聖唖が言い、天地と幡多は別の場所に移動するように言われた。
街中に戻ると、躾がやってきて、天地を任せて幡多が聖唖を呼びに行く。
すると、あの巨大な青い湖が跡形も消えてなくなくなっていた。
半球に凹んだ穴の中心にいる聖唖に駆け寄っていく幡多。
「一体何をしたんだ」
そう聞くが。
「私の秘密の仕事だ」
と答えると、聖唖はその後黙ってしまった。
極秘任務ってことか……。
こいつ一人であんな化け物相手してんのかよ。
幡多は恐る恐る聖唖の手を握る。
「なんだ?」
「早く行こうぜ……皆お前を待ってんだ」
天地たちは青い湖の件で一度家に帰ることになる。
躾は任務が入ったと家を離れ、幡多と聖唖が天地家に泊まることとなった。
「天地、何とかコントロールできるようになってきたな」
「はい、少し声を荒げるぐらいなら大丈夫になりました」
そうは言うが、天地は不安がっているように見えた。幡多と聖唖は顔を見合わせる。
聖唖は不安がる天地を抱きしめる。
「私が君を助けてやろう」
「俺も助けるぜ」
幡多も天地に抱きつく。
「あ、ありがとうございます」
二人に抱きしめられて、照れ臭くなる天地。
「も、もう寝ましょう!」
真っ赤になって小さく叫ぶ天地を見て、聖唖と幡多は顔を見合わせて笑った。
「いって!!」
ゴンッと頭を打つだけに済む幡多に天地が呆れたように言う。
「頑丈ですね……」
「いいから逃げろ天地!!」
「いいえ、敵ならいい練習相手です!」
天地がそう言い張って、敵と対峙する。
敵が飛び出し叫び声をあげる、天地も抑えた叫び声を発し、相手の声を相殺する。
相手は驚きを見せ、直ぐに状態を立て直し、叫ぶ。
その叫び声をも打ち消し、天地は相手よりも強い力で声を上げる。
敵は吹っ飛ばされ、超高層ビルの根元にめり込んだ。めり込んだビルが元通りに再生し、天地は驚く。
いきいきとしている天地を見て幡多は笑っていた。
「はは、元気になったな」
しかし、相手が吐血する姿を見て、天地は怯んでしまう。
それ以降、天地は敵に押される。
敵が天地のいる方向――北に叫び声を放ち、天地は敵に追い詰められる。
天地なら叫べば圧倒的なのだろうが、やはりヒトの形をした相手には思い切り叫び声を浴びせられないようだった。
追い詰められた末、町中にポツンと広がる巨大な青い湖のある場所へやって来ていた。
海よりも空よりも濃い真っ青な液体の湖は神秘的だった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおおぉぉぉぉおおおぉぉぉぉおぉぉぉぉおおおおお――……」
敵が叫び声をあげた瞬間だった。
青い湖は大きく口を開き、敵と同じように「おおおおお……」と叫びながら天地や敵に襲い掛かって来た。
空を青い液体が覆って、青い湖が敵を飲み込み、津波の様に建物を追い尽くす。
「うっ……」
幡多は頭痛がして、頭を押さえる。
「幡多さん!」
幡多と天地が湖に飲み込まれそうになったその時。
ふわりと二人の身体が浮き、青い液体からギリギリで逃げ切ることができる。
「大丈夫か、幡多、天地くん」
二人を抱えて逃げたのは聖唖だった。
「聖唖……」
「聖唖さん!」
幡多と天地は聖唖を見て安心する。
聖唖は二人を下ろし、怪我をしていないか確認する。
「あれはなんなんですか?」
聖唖は天地が指さした、落ち着きを取り戻した青い湖に近付く。
「化け物の塊だ、刺激を与えたら暴走する。私はこれに用があってきた」
「こんな化け物湖あるなら先に言ってくれよ」
と幡多が言う。
「すまない、未だに動くとは思わなくてな。大丈夫だと思ったんだが、敵の声に反応してしまったようだ」
「うっ……」
幡多が頭を手で押さえると、聖唖が幡多の肩を抱く。
「大丈夫か?」
顔を覗き込き込み、聖唖と幡多は見つめ合う。
天地は黙り込む二人に、思わず目を逸らす。
「あれのせいか。何とかしよう」
聖唖が言い、天地と幡多は別の場所に移動するように言われた。
街中に戻ると、躾がやってきて、天地を任せて幡多が聖唖を呼びに行く。
すると、あの巨大な青い湖が跡形も消えてなくなくなっていた。
半球に凹んだ穴の中心にいる聖唖に駆け寄っていく幡多。
「一体何をしたんだ」
そう聞くが。
「私の秘密の仕事だ」
と答えると、聖唖はその後黙ってしまった。
極秘任務ってことか……。
こいつ一人であんな化け物相手してんのかよ。
幡多は恐る恐る聖唖の手を握る。
「なんだ?」
「早く行こうぜ……皆お前を待ってんだ」
天地たちは青い湖の件で一度家に帰ることになる。
躾は任務が入ったと家を離れ、幡多と聖唖が天地家に泊まることとなった。
「天地、何とかコントロールできるようになってきたな」
「はい、少し声を荒げるぐらいなら大丈夫になりました」
そうは言うが、天地は不安がっているように見えた。幡多と聖唖は顔を見合わせる。
聖唖は不安がる天地を抱きしめる。
「私が君を助けてやろう」
「俺も助けるぜ」
幡多も天地に抱きつく。
「あ、ありがとうございます」
二人に抱きしめられて、照れ臭くなる天地。
「も、もう寝ましょう!」
真っ赤になって小さく叫ぶ天地を見て、聖唖と幡多は顔を見合わせて笑った。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界
レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。
毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、
お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。
そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。
お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。
でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。
でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。
【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉
ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。
餌食とするヒトを。
まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。
淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる