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カナキリ
11 ※BL?あり
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「ペットにする」
「な、何でそうなるんですかッ!」
バッと勢いよく顔を上げると、聖唖はその顔の近さに何を勘違いしたのか、口付けをしようと唇を伸ばす。
「ちょ──!? ま、待ってください、何でキスしようとするんですか……! もうカナキリだって分かったんでしょう……!?」
身体を反らして抵抗すると、聖唖は「ん?」と天地の黒い瞳を見る。
「そうだな……したいから?」
「はぁあッ!?」
「私がしたら元気が出るって、よく女共が言ってるからな! いっぱいしてあげよう! 元気出るから!」
──何つう入れ知恵させられてんの、この人。
「それ、嘘ですよ……」
「そうなのか? そうか、そうなのか。悪いな。君が元気なかったから、何かしてやれないかと思ったんだが……嘘なのか」
申し訳なさそうに頭を掻いて、顔に反省の色を浮かべる聖唖。
…………良かれと思ってのことだろうしな。──そう思いながら、軽く聖唖の胸を奥へ押した。
「理由は分かりました。だからもう離してくれませんか……?」
そうして俯いた時に見えた地面には、赤い血液等存在していなかった。恐ろしく思えたそれは妄想だったのかもしれない。
「あぁあ!?」
そんな時、遠くから聞こえ始めるヘリの音が、段々と近づいてきて遥か上空を通り抜けていく。
「──やってしまったっ……!」
それを見た聖唖は瞬時に身体を離して、天地の手を取り、出口へ走り出す。路地裏から出たとたん、バイクが右から突進してきて心臓が止まりそうになった。
──轢かれる────……ッ!! ──そう思った矢先、聖唖がそのバイクに飛び乗り、天地を姫抱っこして支えた。
「──は……?」
「飛ばすぞ天地。捕まっていてくれ」
聖唖はそう言って、天地を後ろに乗せるとヘルメットを投げて、左中指で右手の指輪に触れた。──そう言えば、バイクはいつの間にか停止している。
──まるで聖唖に乗られるのを待っていたかのように無人で現れて目の前に止まったのだ。何より、聖唖はその前にも左手の小指で指輪に触れていた。
──指輪に何やらの機能があるようだが、急いでヘルメットを被らないと直ぐにでも走り出しそうだ。
案の定、ヘルメットを被った瞬間走り出し、慌てて聖唖の背中にしがみ付く。彼の肩が一瞬震えた気がしたが、そんなことはもうどうでもいい。
速すぎて――まるで安全バーのないジェットコースターに乗ってるみたいだ。正直怖い。
腰に回した腕の力をぎゅっと強めると、また聖唖の肩が揺れる。
「──あ、天地……胸が当たってるぞ……?」
「だからッ!? 当たり前じゃないですか……!?」
女の人なら分かるが、何故男の天地の胸を気にしたんだろうか。本当に分からない人だな。
「──あ、天地……。その、何でそんなにくっ付くんだ……! 無性にというか、条件反射でというか、それ以上は……色々とその、困るんだが……」
「何なんですかさっきから! 男同士でしょ!? 気にしないでくださいよッ!!」
聖唖は納得がいかないのか、ぅぅ~……と唸ってさらに走るスピードを上げていく。
「こ、こんなに飛ばして捕まったりしないんですか……!?」
「このバイクは能力協会のモノだからな……! 飛ばしても大丈夫だッ!! ──────……………………きっと!!」
「──きっとッ!?」
今のところは大丈夫のようだが、この先この人について行くとなると凄く不安だ。――最初はあんなに逞しく見えたのに……。
──遠くの方で前を飛んでいたヘリが、だんだんとスピードを落とし下へ下へと高度を下げ始める。
「──滑走路……? こんな街中に……?」
天地のつぶやきは風の音で掻き消される、天地もそれが分かっていて完全に独り言のつもり言った。しかし、聖唖はしっかりと聞き取っていた。
「能力協会専用の滑走路だ。普段は地下に収納されている」
「そ、そうですか」
…………地獄耳って本当にいるんだ……。
「さっき救助要請を出した。私達もヘリに乗って一旦この町から離れるぞ」
「え──…………ま、待ってくださいッ!? 初耳ですよ!」
天地は阻止しようと、手を腰回りから胸へ移動させる。全く意味はないけれど。顔を前の人物の肩の上に乗せて、ヘルメット越しだが頬を押し当てて聖唖に訴える。
「何で町を離れなきゃならないんですか……!」
「それは後々説明するからな」
目の前で大きなヘリがプロペラを仕舞い込み、飛行機のような羽が広げられる。降着装置が降りてきて滑走路を走った。
後部の収納口がゆっくりと開かれて、通路が降り、地面スレスレの所で止まる。バイクはそれに向かって近づいていく。
──通路に乗り、収納口も同時に閉まり始めた時、幡多と子林の友人である野口沙羅の姿が目に映った。
「でも…………でも母さんを放って置けません!」
「──…………」
──――あまりにも唐突なことで、その場にいた誰もが状況の理解に追いつけなかった。
収納口が既に閉まりかけているのに――バイクは火花を散らしながら急に狭い通路をUターンして、バイクを横に滑らせて外へ出てしまったのだ。収納口が閉まって静けさが戻ってくる。
ヘリの外では天地が聖唖の背中に必死にくっ付いて喚いている。
「な、何をしているんですかッ!? 何を考えているんですかッ!?」
少し遅かったら収納口にバイクごと挟まって潰れていただろう。──天地の動悸は速くなり、全く落ち着きがないと言うのに、天地の手に伝わってくる聖唖の動悸は正常で、冷静なのが分かる。
「──何って、母親のこと、放っておけないんだろ?」
「……ありがとうございます…………?」
「な、何でそうなるんですかッ!」
バッと勢いよく顔を上げると、聖唖はその顔の近さに何を勘違いしたのか、口付けをしようと唇を伸ばす。
「ちょ──!? ま、待ってください、何でキスしようとするんですか……! もうカナキリだって分かったんでしょう……!?」
身体を反らして抵抗すると、聖唖は「ん?」と天地の黒い瞳を見る。
「そうだな……したいから?」
「はぁあッ!?」
「私がしたら元気が出るって、よく女共が言ってるからな! いっぱいしてあげよう! 元気出るから!」
──何つう入れ知恵させられてんの、この人。
「それ、嘘ですよ……」
「そうなのか? そうか、そうなのか。悪いな。君が元気なかったから、何かしてやれないかと思ったんだが……嘘なのか」
申し訳なさそうに頭を掻いて、顔に反省の色を浮かべる聖唖。
…………良かれと思ってのことだろうしな。──そう思いながら、軽く聖唖の胸を奥へ押した。
「理由は分かりました。だからもう離してくれませんか……?」
そうして俯いた時に見えた地面には、赤い血液等存在していなかった。恐ろしく思えたそれは妄想だったのかもしれない。
「あぁあ!?」
そんな時、遠くから聞こえ始めるヘリの音が、段々と近づいてきて遥か上空を通り抜けていく。
「──やってしまったっ……!」
それを見た聖唖は瞬時に身体を離して、天地の手を取り、出口へ走り出す。路地裏から出たとたん、バイクが右から突進してきて心臓が止まりそうになった。
──轢かれる────……ッ!! ──そう思った矢先、聖唖がそのバイクに飛び乗り、天地を姫抱っこして支えた。
「──は……?」
「飛ばすぞ天地。捕まっていてくれ」
聖唖はそう言って、天地を後ろに乗せるとヘルメットを投げて、左中指で右手の指輪に触れた。──そう言えば、バイクはいつの間にか停止している。
──まるで聖唖に乗られるのを待っていたかのように無人で現れて目の前に止まったのだ。何より、聖唖はその前にも左手の小指で指輪に触れていた。
──指輪に何やらの機能があるようだが、急いでヘルメットを被らないと直ぐにでも走り出しそうだ。
案の定、ヘルメットを被った瞬間走り出し、慌てて聖唖の背中にしがみ付く。彼の肩が一瞬震えた気がしたが、そんなことはもうどうでもいい。
速すぎて――まるで安全バーのないジェットコースターに乗ってるみたいだ。正直怖い。
腰に回した腕の力をぎゅっと強めると、また聖唖の肩が揺れる。
「──あ、天地……胸が当たってるぞ……?」
「だからッ!? 当たり前じゃないですか……!?」
女の人なら分かるが、何故男の天地の胸を気にしたんだろうか。本当に分からない人だな。
「──あ、天地……。その、何でそんなにくっ付くんだ……! 無性にというか、条件反射でというか、それ以上は……色々とその、困るんだが……」
「何なんですかさっきから! 男同士でしょ!? 気にしないでくださいよッ!!」
聖唖は納得がいかないのか、ぅぅ~……と唸ってさらに走るスピードを上げていく。
「こ、こんなに飛ばして捕まったりしないんですか……!?」
「このバイクは能力協会のモノだからな……! 飛ばしても大丈夫だッ!! ──────……………………きっと!!」
「──きっとッ!?」
今のところは大丈夫のようだが、この先この人について行くとなると凄く不安だ。――最初はあんなに逞しく見えたのに……。
──遠くの方で前を飛んでいたヘリが、だんだんとスピードを落とし下へ下へと高度を下げ始める。
「──滑走路……? こんな街中に……?」
天地のつぶやきは風の音で掻き消される、天地もそれが分かっていて完全に独り言のつもり言った。しかし、聖唖はしっかりと聞き取っていた。
「能力協会専用の滑走路だ。普段は地下に収納されている」
「そ、そうですか」
…………地獄耳って本当にいるんだ……。
「さっき救助要請を出した。私達もヘリに乗って一旦この町から離れるぞ」
「え──…………ま、待ってくださいッ!? 初耳ですよ!」
天地は阻止しようと、手を腰回りから胸へ移動させる。全く意味はないけれど。顔を前の人物の肩の上に乗せて、ヘルメット越しだが頬を押し当てて聖唖に訴える。
「何で町を離れなきゃならないんですか……!」
「それは後々説明するからな」
目の前で大きなヘリがプロペラを仕舞い込み、飛行機のような羽が広げられる。降着装置が降りてきて滑走路を走った。
後部の収納口がゆっくりと開かれて、通路が降り、地面スレスレの所で止まる。バイクはそれに向かって近づいていく。
──通路に乗り、収納口も同時に閉まり始めた時、幡多と子林の友人である野口沙羅の姿が目に映った。
「でも…………でも母さんを放って置けません!」
「──…………」
──――あまりにも唐突なことで、その場にいた誰もが状況の理解に追いつけなかった。
収納口が既に閉まりかけているのに――バイクは火花を散らしながら急に狭い通路をUターンして、バイクを横に滑らせて外へ出てしまったのだ。収納口が閉まって静けさが戻ってくる。
ヘリの外では天地が聖唖の背中に必死にくっ付いて喚いている。
「な、何をしているんですかッ!? 何を考えているんですかッ!?」
少し遅かったら収納口にバイクごと挟まって潰れていただろう。──天地の動悸は速くなり、全く落ち着きがないと言うのに、天地の手に伝わってくる聖唖の動悸は正常で、冷静なのが分かる。
「──何って、母親のこと、放っておけないんだろ?」
「……ありがとうございます…………?」
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