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ヴァラヴォルフ
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ティーネはそれから家を抜け出すようになって躾やその仲間たちと仲良しになっていった。
2階で本を読んでいる時だった。
「今日は躾と森を探索してきたぞ!」
「また行ったのか? もう行ったらだめだ」
「うるさい! 今日は躾と稟終と胚邪を連れてきたぞ! 母さんに話があるらしい!」
「へえ。そんなことになっていたのか」
躾も胚邪も突然背後に掛けられた声に驚き、扉へ振り返る。
「んげ。お母さん」
「おおおおおおおお母様違うぞ。今のは鵺トが勘違いして――――」
「――俺はティーネにお仕置きしただけ」
「鵺トおおおお!」
――音も嗅覚もない。
完全に気配がなかった。
そう思った時だった。彼女の後を追ってきたかの如く、むあっと、甘い香りが部屋中を覆った。彼女の匂いだ。
二人が彼女の美しさに魅了されていると、後ろから稟終と胚邪が顔を出す。二人とも下は落ち着いたようだ。
「し、躾様。こちらがヴァイアヴァオルフの族長。ハラディクト・セイナ様です。我々の裏の族長と呼ばれる……謂わばヴァラヴォルフの姫です」
稟終は何と説明したらいいかと、言葉を選びながら彼女――セイナについて紹介した。しかし背景の声が五月蠅い。
「許さんぞ鵺トおおおおおお!!」
「全部君が悪い」
「鵺トおおおおお!!」
はあ、とセイナが溜息を吐き、ガシッと二人の頭を掴み身体を床から上げる。
「元気があることはいいことだが。一体これはどう言う状況だ。お前達が問題を起こすことはいつものことだ。しかし君達は何の用なんだ、稟終。胚邪。そして躾くん」
背景のことはスル―するらしい。
「何故俺の名前を?」
躾がそう聞くと、セイナは頷いてから答えた。
「君の父親を知っている」
「親父から聞かされていた通りの女性だ。親父が死んだ時は貴方に族長としてアラ族を率いて貰うよう頼めと言われていた。頼む。族長になって欲しい」
稟終と胚邪はそんなことを言われていたのかと親子の会話に感動する。
「ティーネ」
セイナはティーネを自分の前に立たせると、彼女の首飾りをティーネに付けてやった。
「お母様?」
「これは族長の証みたいなものだ。ティーネ。君が族長になれ。きっとそうなる運命だった」
「お母さん! どうして! 外は危険だ、ティーネを放つのも危険だ!」
「鵺トおおおお!」
掴みかかろうとするティーネを床に押さえつける容赦ない母は、鵺トに向き直って言った。
「ティーネが心配なんだろう? 大丈夫だ。私もお前も一緒に行く。お前の為を思うなら一緒にいた方がいいだろう」
「お母さん……俺は……」
「一緒に来てくれないか? 鵺ト」
「……………………分かったよ。ティーネは俺が懐柔しないと」
「貴様少しは場を乱すのをやめろ鵺ト!」
「ティーネに場の読み方とか分かるんだ」
「鵺トおおおお!」
セイナはティーネを離し、今度こそは鵺トに飛び掛からせる。
「お母さん!?」
「こんなことは日常だろう?」
とセイナが言うと、ティーネは鵺トの頭に噛み付いて離れなくなる。まるでヒルだ。
ティーネはその後、躾と鬼ごっこをすると言って出て行った。族長らしくないその言動に稟終たちは胃を痛める。
胚邪と稟終はティーネやセイナがいるだけでウイルスへの感染がないとセイナに聞き、躾がティーネと遊ぶ時の護衛役は稟終一人になった。
ティーネは狼に変身せずに裸足で森を駆け回る。
躾は鬼で彼も変身はしていなかった。
「…………っ」
ティーネが立ち止まって少ししてから躾が姿を現した。ティーネの背を見つけて、ぽんと肩に手を置く。
そして彼女の見ている方向を見て驚愕した。
ティーネと躾の視線の先には、黒く焦げた死体の山が存在していた。
焦げ臭さを感じなかったのは何日も経った後だったからだろう。
躾がぐっとこぶしを握って言う。
「炎の魔王だ」
「一体どんな奴なんだ……。こんなことが出来るなんて本当に魔王だ……っ」
「ああ……そうだよな」
ティーネはこの時の出来事を深く深く胸に刻みつけた。
2階で本を読んでいる時だった。
「今日は躾と森を探索してきたぞ!」
「また行ったのか? もう行ったらだめだ」
「うるさい! 今日は躾と稟終と胚邪を連れてきたぞ! 母さんに話があるらしい!」
「へえ。そんなことになっていたのか」
躾も胚邪も突然背後に掛けられた声に驚き、扉へ振り返る。
「んげ。お母さん」
「おおおおおおおお母様違うぞ。今のは鵺トが勘違いして――――」
「――俺はティーネにお仕置きしただけ」
「鵺トおおおお!」
――音も嗅覚もない。
完全に気配がなかった。
そう思った時だった。彼女の後を追ってきたかの如く、むあっと、甘い香りが部屋中を覆った。彼女の匂いだ。
二人が彼女の美しさに魅了されていると、後ろから稟終と胚邪が顔を出す。二人とも下は落ち着いたようだ。
「し、躾様。こちらがヴァイアヴァオルフの族長。ハラディクト・セイナ様です。我々の裏の族長と呼ばれる……謂わばヴァラヴォルフの姫です」
稟終は何と説明したらいいかと、言葉を選びながら彼女――セイナについて紹介した。しかし背景の声が五月蠅い。
「許さんぞ鵺トおおおおおお!!」
「全部君が悪い」
「鵺トおおおおお!!」
はあ、とセイナが溜息を吐き、ガシッと二人の頭を掴み身体を床から上げる。
「元気があることはいいことだが。一体これはどう言う状況だ。お前達が問題を起こすことはいつものことだ。しかし君達は何の用なんだ、稟終。胚邪。そして躾くん」
背景のことはスル―するらしい。
「何故俺の名前を?」
躾がそう聞くと、セイナは頷いてから答えた。
「君の父親を知っている」
「親父から聞かされていた通りの女性だ。親父が死んだ時は貴方に族長としてアラ族を率いて貰うよう頼めと言われていた。頼む。族長になって欲しい」
稟終と胚邪はそんなことを言われていたのかと親子の会話に感動する。
「ティーネ」
セイナはティーネを自分の前に立たせると、彼女の首飾りをティーネに付けてやった。
「お母様?」
「これは族長の証みたいなものだ。ティーネ。君が族長になれ。きっとそうなる運命だった」
「お母さん! どうして! 外は危険だ、ティーネを放つのも危険だ!」
「鵺トおおおお!」
掴みかかろうとするティーネを床に押さえつける容赦ない母は、鵺トに向き直って言った。
「ティーネが心配なんだろう? 大丈夫だ。私もお前も一緒に行く。お前の為を思うなら一緒にいた方がいいだろう」
「お母さん……俺は……」
「一緒に来てくれないか? 鵺ト」
「……………………分かったよ。ティーネは俺が懐柔しないと」
「貴様少しは場を乱すのをやめろ鵺ト!」
「ティーネに場の読み方とか分かるんだ」
「鵺トおおおお!」
セイナはティーネを離し、今度こそは鵺トに飛び掛からせる。
「お母さん!?」
「こんなことは日常だろう?」
とセイナが言うと、ティーネは鵺トの頭に噛み付いて離れなくなる。まるでヒルだ。
ティーネはその後、躾と鬼ごっこをすると言って出て行った。族長らしくないその言動に稟終たちは胃を痛める。
胚邪と稟終はティーネやセイナがいるだけでウイルスへの感染がないとセイナに聞き、躾がティーネと遊ぶ時の護衛役は稟終一人になった。
ティーネは狼に変身せずに裸足で森を駆け回る。
躾は鬼で彼も変身はしていなかった。
「…………っ」
ティーネが立ち止まって少ししてから躾が姿を現した。ティーネの背を見つけて、ぽんと肩に手を置く。
そして彼女の見ている方向を見て驚愕した。
ティーネと躾の視線の先には、黒く焦げた死体の山が存在していた。
焦げ臭さを感じなかったのは何日も経った後だったからだろう。
躾がぐっとこぶしを握って言う。
「炎の魔王だ」
「一体どんな奴なんだ……。こんなことが出来るなんて本当に魔王だ……っ」
「ああ……そうだよな」
ティーネはこの時の出来事を深く深く胸に刻みつけた。
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