リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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ディーヴァ

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 修復していく脳でそんなことを朧気に考えていた。
「まだ死なないのかよ」
 そんな冷たい声が聞こえてくる。
「分かってたけどさ。そうじゃなきゃつまんないっての」
 再び、銃口に青色の光の粒が集まる。ミドノの長く細いしなやかな人差し指が引き金に掛けられた。
 やめて。
 口を開くが、思うように声が出ない。
 奏はぎゅっと目を瞑った。
 瞑った後は。
 鼓膜を震わせるほどの炸裂音が鳴り、あたりが真っ暗になる。音さえ感じられず、その後に少しずつ聴覚が再生し、キ――――――――ン――…………という音が頭の中で鳴る。
 ――――…………頭などないと言うのに。
 白い銃は最新兵器と呼ばれる物体だった。
 奏の首から上が蒸発し、火傷した首の断面が再生しようとぶくぶくと泡立つ。顎と口、耳が再生し始めた頃には、ミドノが心臓にもう一度その銃口を突きつけた。
青龍子せいりゅうし。知ってるか?」
 奏はまだ脳が完全に再生しておらず考えることが出来ない。
「万物を分解する粒子のことだ」
 脳が再生しきったころにそんな声が聞こえてくる。
「ばん、ぶつ? ぶ、んかい?」
「そう、この世には6種類の粒子が存在する。その一つを利用した兵器がこのアイングルだ」
「アイン、グル? どう言う意味?」
「特に意味はないな。この武器の製作者の名前だ」
 奏は息を整えながら、血まみれになった右側の壁と床を見ていた。頭の中が未だに痛くてくらくらとする。
 ミドノはそんな奏を見て口元をゆるめる。
 心底嬉しそうに、うっとりと目を細めた。
「奏」
 一本の光線が走り、奏の心臓をあばらごと抉り貫通していく。奏の身体としての機能を失った部分達は粉々に砕け、空気中へと消えていった。
「奏、奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏、奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏、奏奏奏奏奏奏奏奏ッ!!」
 ミドノが奏と言った数だけ、光線は放たれた。
 奏の身体は上半身を失っていた。
 しかし、その回復は留まることを知らない。
 真紅の血液が、奏から流れていく度に、再生能力は向上していった。
 奏のへそのやや下から頭のてっぺんまで、髪の毛一本残らず再生した時、ミドノはそんな元気そうな奏の姿を見て涙を流した。
「うっ……うっ」
「ミドノ?」
 奏には何故彼が泣いているのか分からない。目が覚めたら疲労感と身体の熱にぼうっとする他ない。過去に自分の身体に何が起こっていたかは分からないまま、今の状態に意識が持っていかれるからだ。
「どうして死んでくれないんだよ奏。苦しめて苦しめて殺したいのは願望だけど、死んでくれなきゃ殺せてないってことじゃんか」
 な、何なのよ。何言ってるのよ。
 ふざけないでよ。
 いい加減にしてよ。
 奏は向けられた銃口に恐れをなして、立ち上がって逃げようとする。
 しかし、それをやすやすと許すミドノではない。
 ミドノの歪んだ瞳は奏を捕らえて離さない、口元に笑みを浮かべ、引き金に指を掛けた。
「奏、奏逃げるんだ!」
 弾かれたようにそんな声が聞こえてきて、ミドノは奏を撃つのをやめ、声の主に向き直る。
「また言ったなカナタ? お前組織抜けるとか言わないよな? 何より奏を殺すのやめるとか言ったら俺がお前を殺すぜ?」
「……俺は」
 カナタは膝を付き、額を抑える。顔は汗ばみ、カナタは苦々しく、歯を食いしばっている。
「悩んどけよカナタ。いつもみたいに。そして奏を俺から救える方法は俺より先に殺すことだって最終的な結論に至るんだろ」
「…………っ!!」
 やはり全て、お見通しだったのか。
 全て知っていて、俺の悩む姿を見て心の中で嘲笑っていのか。
 ミドノ、お前は、どうして…………
「カナタ!!」
 奏は走りながら、カナタの腕をひっ掴んで部屋から廊下へと飛び出した。
 奏はカナタを肩に担ぎ、疾走する。
「ちょっとちょっと。まだ結論出てないだろ。奏~」
 ミドノがその後を平然と追ってくる。
 奏は振り返らずに答える。
「うるさい! 結論は出てるの! 私と一緒に生きる! そう約束したんだから!」
 奏はまたミドノから何か言われるだろうと思っていた。しかし、その返事が来ない。
 振り返るとミドノは遠くで立ち止まり、奏の背中に銃口を向けていた。奏は血の気が引いていく感覚を覚え、思わず立ち止まりしゃがみこむ。
 しまった。私なら走った方が逃げられる!
 そう思ってミドノを見た時、彼の腕はだらんと下がり、銃口は下を向く。
「ミ、ミドノ?」
 ゆっくりと歩み寄ってくるミドノ。
 奏は、恐怖で身体が動かなかった。すぐにでも立って、カナタと自分を救わなくてはならないのに。
「奏……今カナタと一緒に生きるって言ったよな?」
「そ、それが何……よ」
 ミドノの声は聞いただけで身を震え上がらせるほど怒りを放っていた。
 カナタだけでもと、奏は彼をミドノと奏のいる側でない廊下の角に下ろした。壁に背を預けられるようにしてやる。
「それって、俺と別れるって言いたいのか?」
「は?」
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