36 / 299
ディーヴァ
12
しおりを挟む
修復していく脳でそんなことを朧気に考えていた。
「まだ死なないのかよ」
そんな冷たい声が聞こえてくる。
「分かってたけどさ。そうじゃなきゃつまんないっての」
再び、銃口に青色の光の粒が集まる。ミドノの長く細いしなやかな人差し指が引き金に掛けられた。
やめて。
口を開くが、思うように声が出ない。
奏はぎゅっと目を瞑った。
瞑った後は。
鼓膜を震わせるほどの炸裂音が鳴り、あたりが真っ暗になる。音さえ感じられず、その後に少しずつ聴覚が再生し、キ――――――――ン――…………という音が頭の中で鳴る。
――――…………頭などないと言うのに。
白い銃は最新兵器と呼ばれる物体だった。
奏の首から上が蒸発し、火傷した首の断面が再生しようとぶくぶくと泡立つ。顎と口、耳が再生し始めた頃には、ミドノが心臓にもう一度その銃口を突きつけた。
「青龍子。知ってるか?」
奏はまだ脳が完全に再生しておらず考えることが出来ない。
「万物を分解する粒子のことだ」
脳が再生しきったころにそんな声が聞こえてくる。
「ばん、ぶつ? ぶ、んかい?」
「そう、この世には6種類の粒子が存在する。その一つを利用した兵器がこのアイングルだ」
「アイン、グル? どう言う意味?」
「特に意味はないな。この武器の製作者の名前だ」
奏は息を整えながら、血まみれになった右側の壁と床を見ていた。頭の中が未だに痛くてくらくらとする。
ミドノはそんな奏を見て口元をゆるめる。
心底嬉しそうに、うっとりと目を細めた。
「奏」
一本の光線が走り、奏の心臓をあばらごと抉り貫通していく。奏の身体としての機能を失った部分達は粉々に砕け、空気中へと消えていった。
「奏、奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏、奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏、奏奏奏奏奏奏奏奏ッ!!」
ミドノが奏と言った数だけ、光線は放たれた。
奏の身体は上半身を失っていた。
しかし、その回復は留まることを知らない。
真紅の血液が、奏から流れていく度に、再生能力は向上していった。
奏のへそのやや下から頭のてっぺんまで、髪の毛一本残らず再生した時、ミドノはそんな元気そうな奏の姿を見て涙を流した。
「うっ……うっ」
「ミドノ?」
奏には何故彼が泣いているのか分からない。目が覚めたら疲労感と身体の熱にぼうっとする他ない。過去に自分の身体に何が起こっていたかは分からないまま、今の状態に意識が持っていかれるからだ。
「どうして死んでくれないんだよ奏。苦しめて苦しめて殺したいのは願望だけど、死んでくれなきゃ殺せてないってことじゃんか」
な、何なのよ。何言ってるのよ。
ふざけないでよ。
いい加減にしてよ。
奏は向けられた銃口に恐れをなして、立ち上がって逃げようとする。
しかし、それをやすやすと許すミドノではない。
ミドノの歪んだ瞳は奏を捕らえて離さない、口元に笑みを浮かべ、引き金に指を掛けた。
「奏、奏逃げるんだ!」
弾かれたようにそんな声が聞こえてきて、ミドノは奏を撃つのをやめ、声の主に向き直る。
「また言ったなカナタ? お前組織抜けるとか言わないよな? 何より奏を殺すのやめるとか言ったら俺がお前を殺すぜ?」
「……俺は」
カナタは膝を付き、額を抑える。顔は汗ばみ、カナタは苦々しく、歯を食いしばっている。
「悩んどけよカナタ。いつもみたいに。そして奏を俺から救える方法は俺より先に殺すことだって最終的な結論に至るんだろ」
「…………っ!!」
やはり全て、お見通しだったのか。
全て知っていて、俺の悩む姿を見て心の中で嘲笑っていのか。
ミドノ、お前は、どうして…………
「カナタ!!」
奏は走りながら、カナタの腕をひっ掴んで部屋から廊下へと飛び出した。
奏はカナタを肩に担ぎ、疾走する。
「ちょっとちょっと。まだ結論出てないだろ。奏~」
ミドノがその後を平然と追ってくる。
奏は振り返らずに答える。
「うるさい! 結論は出てるの! 私と一緒に生きる! そう約束したんだから!」
奏はまたミドノから何か言われるだろうと思っていた。しかし、その返事が来ない。
振り返るとミドノは遠くで立ち止まり、奏の背中に銃口を向けていた。奏は血の気が引いていく感覚を覚え、思わず立ち止まりしゃがみこむ。
しまった。私なら走った方が逃げられる!
そう思ってミドノを見た時、彼の腕はだらんと下がり、銃口は下を向く。
「ミ、ミドノ?」
ゆっくりと歩み寄ってくるミドノ。
奏は、恐怖で身体が動かなかった。すぐにでも立って、カナタと自分を救わなくてはならないのに。
「奏……今カナタと一緒に生きるって言ったよな?」
「そ、それが何……よ」
ミドノの声は聞いただけで身を震え上がらせるほど怒りを放っていた。
カナタだけでもと、奏は彼をミドノと奏のいる側でない廊下の角に下ろした。壁に背を預けられるようにしてやる。
「それって、俺と別れるって言いたいのか?」
「は?」
「まだ死なないのかよ」
そんな冷たい声が聞こえてくる。
「分かってたけどさ。そうじゃなきゃつまんないっての」
再び、銃口に青色の光の粒が集まる。ミドノの長く細いしなやかな人差し指が引き金に掛けられた。
やめて。
口を開くが、思うように声が出ない。
奏はぎゅっと目を瞑った。
瞑った後は。
鼓膜を震わせるほどの炸裂音が鳴り、あたりが真っ暗になる。音さえ感じられず、その後に少しずつ聴覚が再生し、キ――――――――ン――…………という音が頭の中で鳴る。
――――…………頭などないと言うのに。
白い銃は最新兵器と呼ばれる物体だった。
奏の首から上が蒸発し、火傷した首の断面が再生しようとぶくぶくと泡立つ。顎と口、耳が再生し始めた頃には、ミドノが心臓にもう一度その銃口を突きつけた。
「青龍子。知ってるか?」
奏はまだ脳が完全に再生しておらず考えることが出来ない。
「万物を分解する粒子のことだ」
脳が再生しきったころにそんな声が聞こえてくる。
「ばん、ぶつ? ぶ、んかい?」
「そう、この世には6種類の粒子が存在する。その一つを利用した兵器がこのアイングルだ」
「アイン、グル? どう言う意味?」
「特に意味はないな。この武器の製作者の名前だ」
奏は息を整えながら、血まみれになった右側の壁と床を見ていた。頭の中が未だに痛くてくらくらとする。
ミドノはそんな奏を見て口元をゆるめる。
心底嬉しそうに、うっとりと目を細めた。
「奏」
一本の光線が走り、奏の心臓をあばらごと抉り貫通していく。奏の身体としての機能を失った部分達は粉々に砕け、空気中へと消えていった。
「奏、奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏、奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏奏、奏奏奏奏奏奏奏奏ッ!!」
ミドノが奏と言った数だけ、光線は放たれた。
奏の身体は上半身を失っていた。
しかし、その回復は留まることを知らない。
真紅の血液が、奏から流れていく度に、再生能力は向上していった。
奏のへそのやや下から頭のてっぺんまで、髪の毛一本残らず再生した時、ミドノはそんな元気そうな奏の姿を見て涙を流した。
「うっ……うっ」
「ミドノ?」
奏には何故彼が泣いているのか分からない。目が覚めたら疲労感と身体の熱にぼうっとする他ない。過去に自分の身体に何が起こっていたかは分からないまま、今の状態に意識が持っていかれるからだ。
「どうして死んでくれないんだよ奏。苦しめて苦しめて殺したいのは願望だけど、死んでくれなきゃ殺せてないってことじゃんか」
な、何なのよ。何言ってるのよ。
ふざけないでよ。
いい加減にしてよ。
奏は向けられた銃口に恐れをなして、立ち上がって逃げようとする。
しかし、それをやすやすと許すミドノではない。
ミドノの歪んだ瞳は奏を捕らえて離さない、口元に笑みを浮かべ、引き金に指を掛けた。
「奏、奏逃げるんだ!」
弾かれたようにそんな声が聞こえてきて、ミドノは奏を撃つのをやめ、声の主に向き直る。
「また言ったなカナタ? お前組織抜けるとか言わないよな? 何より奏を殺すのやめるとか言ったら俺がお前を殺すぜ?」
「……俺は」
カナタは膝を付き、額を抑える。顔は汗ばみ、カナタは苦々しく、歯を食いしばっている。
「悩んどけよカナタ。いつもみたいに。そして奏を俺から救える方法は俺より先に殺すことだって最終的な結論に至るんだろ」
「…………っ!!」
やはり全て、お見通しだったのか。
全て知っていて、俺の悩む姿を見て心の中で嘲笑っていのか。
ミドノ、お前は、どうして…………
「カナタ!!」
奏は走りながら、カナタの腕をひっ掴んで部屋から廊下へと飛び出した。
奏はカナタを肩に担ぎ、疾走する。
「ちょっとちょっと。まだ結論出てないだろ。奏~」
ミドノがその後を平然と追ってくる。
奏は振り返らずに答える。
「うるさい! 結論は出てるの! 私と一緒に生きる! そう約束したんだから!」
奏はまたミドノから何か言われるだろうと思っていた。しかし、その返事が来ない。
振り返るとミドノは遠くで立ち止まり、奏の背中に銃口を向けていた。奏は血の気が引いていく感覚を覚え、思わず立ち止まりしゃがみこむ。
しまった。私なら走った方が逃げられる!
そう思ってミドノを見た時、彼の腕はだらんと下がり、銃口は下を向く。
「ミ、ミドノ?」
ゆっくりと歩み寄ってくるミドノ。
奏は、恐怖で身体が動かなかった。すぐにでも立って、カナタと自分を救わなくてはならないのに。
「奏……今カナタと一緒に生きるって言ったよな?」
「そ、それが何……よ」
ミドノの声は聞いただけで身を震え上がらせるほど怒りを放っていた。
カナタだけでもと、奏は彼をミドノと奏のいる側でない廊下の角に下ろした。壁に背を預けられるようにしてやる。
「それって、俺と別れるって言いたいのか?」
「は?」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R18】絶望の枷〜壊される少女〜
サディスティックヘヴン
ファンタジー
★Caution★
この作品は暴力的な性行為が描写されています。胸糞悪い結末を許せる方向け。
“災厄”の魔女と呼ばれる千年を生きる少女が、変態王子に捕えられ弟子の少年の前で強姦、救われない結末に至るまでの話。三分割。最後の★がついている部分が本番行為です。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる