リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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ディノル

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「セイナとオルトシアをくっ付けようと思う」
「何、突然どうしたんだよ?」
「いい加減覚えろよ。バカなんじゃねえの。こいつが突然なのは日常だろ光陰」
 妹達弟カナタ含め、ちびっこ達で拾ったカードでゲームをしていたら、狩りに出ていた稲がやって来て言った。
「オルトシアが私を好きすぎてセイナが可哀想なんだ」
「え。それ今更気付いたの稲さん」
「バカなんじゃねえの。稲が阿呆なのは日常じゃねえか楽ド」
 根に持つな。
「で、そのアホな稲さんがどうして突然そんな思考に陥ったんだ?」
 持ち手のカードを稲さんに向けて振って促す。
「気付いてはいた。オルトシアの好意は元々知っていたし、セイナは直球だからな。ただ哀れむ程じゃ無かったんだ。微笑ましいとさえ思っていた。だが私達はよく戦場に行くだろう?」
 戦場? 俺と光陰は何故今その単語が出てくるのが不思議だった。確かに、大人組と共に稲が……いや、稲を中心に大人組が戦場に狩りに付いて行っているが、その戦場でセイナを哀れむことなんて……
 そこまで考えて、質問をしようとしていたのを押し黙る。
「セイナが危ない時にもオルトシアは私のケツばかりを追いかけてきて、セイナが気の毒だと思った」
 ここで言う稲のケツとは物理的なケツだろう。物理的とはなんだ、物理的以外にケツがあるのかとも思うが。オルトシアの稲好きは元々彼の戦闘力に魅せられたことで異常に好意を寄せるようになったのだ。
 闘う稲さんを間近で見られる機会のある戦場であの変態が興奮しない筈がない。
 戦闘中によく動く稲のケツに顔を埋めたいと思って追いかけ回していたに違いない。
「セイナは強いけど女の子だ。ナメられて敵が集まってしまう。いくらセイナでも毎回大勢を相手するのは大変だろう。オルトシアにはセイナと共闘するスタイルを提案したい、それに私の後ろを付いて来られると動きが制限されて邪魔臭い。うっかり殺しそうだ」
 その言葉に対して、思ったことを言ってみる。
「そうだな。偶然居合わせただけでうっかり殺そうとするもんなお前」
「…………」
 光陰が便乗して言った。
「ちょっと近付いただけで首狙ってナイフ振り翳してくるからな」
「…………悪かったょ」
 むす、とする稲さん。
 楽ドたちは次の狩りに同行し、セイナとオルトシアをくっつける作戦をたてた。
 しかし、狩りになるとセイナはずっと楽ドたちの後をついてきた。
「あの……セイナさん? 俺たちは大丈夫だからオルトシアのところに行ったらどうかな?」
 楽ドがそう尋ねると、セイナはフッと笑う。色素の薄い金の髪が風に靡いた。
「どうしようもない奴等だな。戦いは私に任せていればいいさ。私は勝手について来て、勝手に君達を守るのだから」
「あがあああああっセイナアアアアアアアッ」
「どうした。拾い食いでもしたか」
 ちびっこ達はセイナにかくかくしかじかと説明する。作戦も伝えようとしたその時だった。
 オルトシアと茶飯が戦闘になったらしく、セイナはそこへ駆けつける。楽ドはセイナの足の前に足をだし、それを跳躍して避けるセイナ。跳躍したセイナが着地するであろう地点に、チビたちがセイナの唯一苦手なゴキブリを大量に放つ。セイナは悲鳴を上げてつま先歩きでそれを避け、稲と光陰がつま先立ちした彼女にお尻を思いっきり押した。
 セイナは前に倒れ込み、それを見たオルトシアが彼女の腰を支えた。
「「「「「えんだああああああああああああああああああああああああいやああああああああああああ」」」」」
 子供たちが全員で歌う。
「オイコラ待て。待て。お前らも歌うのかよ」
 当初はディーヴァである奏、ラ矢、鵺トが歌う手はずであった。
 オルトシアがセイナの手を取る。
「君の気持ちを受け入れよう」
「ふふ。あの子達の作戦通りだな」
「うまくいくのかよ。作戦グダクダだったんだよ」
 ほぼ行き当たりばったりだよ。
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