リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
181 / 299
ディノル

29

しおりを挟む
 その研究員と楽ドは捕えられていた子供たちを解放した。真っ赤な髪の毛の姉妹が、楽ドにお礼を言う。
「ありがとうございました」
「あいがとごーまう」
「皆一緒に逃げるぞ!」
「はい……!」
 その子の可愛さにデレデレする楽ドの背に稲がぎゅ……とくっ付いてくる。
「お、おい……」
「…………だめ」
「何が!?」
 一方その頃、捕えられたオルトシアたちは見事に脱走していた。しかし敵はうじゃうじゃと湧き出てくる。どこからか歌声が聞こえ始め、オルトシアと茶飯は苦戦を強いられていた。
 廊下を走っている最中、ガラスの壁から部屋の中が見え、茶飯は絶句する。その様子を見たオルトシアが尋ねた。
「茶飯、どうした」
「つ、妻が、子供も……私たちの子供もここにいる!」
「助けよう」
 あっさりとそう言うオルトシアに、茶飯は緊張した顔を緩ませて頷く。しかし、その会話を聞いていた小麦色の肌の男が、部屋に入り、一人一人失敗作だと言って殺していく。
 茶飯が追いかけようとしたが、他の敵が邪魔をして助けに行けない。
 茶飯の子供の眉間に銃口が突きつけられる。引き金を引こうとしたその時、子供は横にそれて、妻の胸が銃口に迫った。
 子供を守ろうとし、小麦色の肌の男に飛び掛かろうとしたのだ。
 妻の胸から血液が飛び散り、茶飯は口を大きく開けて叫び散らした。
若葉わかばああああああああああああ!!」
「落ち着け茶飯、今は……子供を助けるぞ!」
 オルトシアの協力の下、茶飯の子供を助けることが出来た。



        ◇◇◇



 楽ドたちとオルトシアたちは合流してディヴァート・ウェザを後にしていた。大体あの子とオルトシアとあの研究員の美少年のおかげで助かった。
 美少年が逃がした実験体や、茶飯の子供は療養させると彼の仲間・武軍に頼み、軍隊に入ることとなった。茶飯は妻を助けることはできなかったが、子供は助けられた。茶飯はオルトシアたちと行動する必要はなくなった。しかし、楽ドたちを軍に連れ帰る使命があると共に行動することとなった。
 楽ドたちの向かう先、中立の町照国町てるくにちょうに向かうため、武軍の本拠点である鹿児島中央駅を通らないよう迂回して下荒田から南林寺町なんりんじちょうに来ていた。
 その道中で休憩となり、チビたちは美少年・ゼルベイユと遊ぶと言いどこかへ出かけ、楽ドは荷物を置いた建物――通称秘密基地――から近い周辺を探索していたが、あの子が付いてきて二人きりで行動することになる。
 楽ドは瓦礫の中にまぎれた苔まみれの石像を見つけてじっと観察する。どうやらユヤの破壊攻撃でどこかの街から吹っ飛んで来たらしい石像だった。もちろん楽ドにもさすがにそんなことは分からず、手を合わせて祈ってみる。
「それは田の神様だ。祈っても意味はないと思う」
 あの子がそう言って近づいてきて、
「し、知ってらぁ! ただちょっと凄いなぁって思っただけで……」
 楽ドはむすっと唇を尖らせ視線を横へ逸らす。
「何が凄いんだ?」
「だって、昔の人はこの荒れた土地で米作ってたんだぞ。昔はこんなんじゃなかったんだろうけどさ。今は国外からの密輸で手に入れてるんだぞ? 戦争ばっかしてるからだよなぁ」
「密輸? 輸入じゃないのか?」
「そりゃ国内のどこかでも作られてるんだろうけど、圧倒的に量が足りないからな。そこで国外。だけど相手国でも貴重なの。それに軍隊を名乗れるようなグループが買い占めてる。だから俺達みたいな弱小からグループが出来たり、それが成長したりしないように阻止してるんだよ。どんなに強い大人でも空腹には勝てないしな。弱い時に戦うか、戦う以前に餓死させる気でいるんだよ。まあグループが成長しないんじゃ武器は手に入らないからな」
「あるぞ?」
「ナイフや銃なんかは比較的手に入りやすい方なんだよ。落ちてたり、勇気がある人が死んだ軍人の懐漁ったりして手に入れる。銃は弾なしとか壊れてるとかで当たりはずれがあるけどな。まあほとんど持ってないよな。ハンドガンくらいなら使えるかもしれないけど、他は使えるって人があんまりいなさそうだし。それに弾なしでも使えなくても見た目だけで一時的な脅しに使えるかもしれないな」
「武器なんていらないだろう? 石ころ投げれば死ぬ。素手でも死ぬ」
「おい。それはお前だけなんだよ。いや、当たりどころが悪ければ死ぬかな? 俺達でもおっきな石ころで頭叩けば脳震盪くらいなら……」
「……? 爪で死ぬだろう?」
「それはひっかく方で? 刺す方で?」
「叩く方だ」
「うそつけ」
 子供はムッとして傍の壁に、ハエを払うかのような軽さで爪を叩き付ける。大気が震えるような音を立てて、払った方向へ吸い込まれるように一瞬にして建物が粉々に砕け散る。瓦礫さえ砕けて砂の山になってしまった。大気を震わせてくれちゃったせいだろうか、自分の身体がぷるってる気がする。二度目だぞこれ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...