リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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ディノル

23

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 オルトシアは大きく口を開けて爽やかにニカッと笑った。
「俺は君達を助けられなかったからな、感謝の言葉はいらないぞ」
 どうやらまだ光が残っているようで少しずつ治癒されている。
「……もしかしてお前もこうなのか?」
 楽ドが子供に尋ねると、彼はこくりと頷いた。
「ああ。でも私は怪我出来ない」
「あ、うん。そだね」
 そう言えば、〝こいつ〟、とか〝あの子〟、とかもういい加減疲れたんだよなぁ。
「俺は楽ド。お前は?」
「答えられない。それにどうせ長くは生きられないだろう」
 またそんなこと言って。なんでだ名前くらいいいだろ、早く教えてくれ、名前を呼びたいのに。ムッとして楽ドは言い返す。
「それはどっちがだ? ……まあいいや。よろしくな。俺は楽ド。お前は?」
「…………」
「俺は楽ド。お前は?」
「…………」
「俺は楽ド。お前は?」
「……分からない」
「ん?」
「……………………」
「どうした?」
「いや……何でもない」
「結局教えてくれないのかよ」
 楽ドはこのまま一緒に行動してくれると思っていたのだが、楽ドが離れると子供は背を向けてもっと離れていこうとする。
「ちょっと待て!」
「ん?」
「一緒にいるんだろ?」
「だめだ」
「またそれか!」
「君も見ただろう。まだ力がコントロール出来ていないし、何より私はディヴァート・ウェザで最も必要な見本だ。コントロールができるようになったとしても、必ず誰かが連れ戻しに来る。君たちを危険に晒してしまう」
 う~んと唸って、何か引き留められる方法はないかと模索する。
「じゃあお前が守れよ。最強だろ」
「最強?」
「そう、人間最強。お前は今日からディノルじゃなくて人間最強だ。出来るだけ建物とかも破壊しないように心掛けること、約束」
「そんなの出来るわけないだろう?」
「決め付けない。出来るようにするの」
「……悪いが私は帰る」
 なんで~っと楽ドが行かせないように腕を引っ張っていれば、チビたちも参戦してくる。びっくりしている様子の子供にラ矢が言った。
「あなたがこのバカの好きな人なの? お願いだから近くにいてあげて、ぼうっとしてあなたのことばかり考えていたり探し回ったりしていて面倒」
「や、やめて暴露しないで! って好きじゃねえし!」
「ばーろ、すち?」
「違うぞ、違うからねかわいい弟よ!」
 違うぞ、と振り向けば、彼は顔を赤くして、ぽっぽする。なんだその反応は。
「好きなんて初めて言われた……」
「言ってねえ!」
 ち、違う! と楽ドは必死になって否定するが彼は「じゃあな」と嬉しそうに笑ってバイバイして行ってしまったから引き止められなくなる。笑った顔始めてみた、かわいい……。くそ、引き止めたらかわいいって言っちゃいそうだ。くっ男の子でさえなければ……!!
 楽ドたちは彼の背中を途中まで見送ったあと、すぐにオルトシアの傍まで寄った。地面には青緑色の膜が張り付いている。オルトシアの血液だったモノと細胞だったモノだろう。少しずつオルトシアの身体に戻っていく。
「気を失ってしまったのだ。流石にあの戦闘の後ではこうなってしまう……こんな彼を見るのは初めてだ」
「ずっと聞きたかったんだが、オルトシアは何者なんだ?」
「さあ、知らないんだ。聞いたこともなかった。初めて会ったのは9年前、それ以降も何度か会い、共闘する機会もあって彼の体質を知ることになった。どこに行ってもオルトシアは不死身と――化け物と呼ばれた」
「化け物――……」
「彼は私より何百歳も年上なのだ。その間中ずっと旅を続けていて、よく人助けをしていたらしい。直接本人から聞いた話ではないが、彼を見た周りの反応が語っていたのだ。有名な白い男と言う話があって、その正体が彼だと知った」
 そう言えば……武軍でも白い男は実在したと、自分は助けられたんだと喚いていた若者を見たことがある気がする。じゃああの人を助けたのはオルトシアだったのか。
 楽ドはオルトシアと言う男の存在に、安心感を覚える理由が分かった気がした。
「取り敢えずこの場所から離れよう、こんな力を使えるのはあの子供だけの筈だ、おそらく気付かれている。やつらがやってくるぞ」
「そうだな。オルトシアを運べるか?」
「ああ、彼が頑張ってくれたおかげで少しなら術が使える。術で身体しんたいを強化すれば町までは何とか歩けるだろう」
 楽ドはチビたちを置いていかないよう気を配りながら、茶飯はオルトシアをおんぶしたり、肩に腕を回させて歩かせたりしながら、どこかに隠れ家のあるであろう町へと向かって進んだ。シチューも他の食糧も跡形もなく消えてしまったから、命からがら帰って来た町でも全員餓死寸前であった。その日の晩は、お魚ハンターたち曰く川魚がいっぴきも捕れなかったと言う。
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