リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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イルヴルヴ

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 2号の声は、脳に直接響いてくるような叫び声――否、歌声だった。
 クィネジュは2号に押され、頭を抱えて前かがみになる。それでも叫び声だけは止めない。声と声がぶつかり合い、颶風が巻き起こりユヤが大きく傾いた。
 アシャと聖茄はユヤから発射され続けている緑の光線から逃れるため、互いを支え合い、彼らから離れないよう努めた。

⦅おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ―――――…………⦆

 2号の青い冷たい眼光がアシャにちらりと向けられる。
 2号はアシャを背にして立ち、クィネジュと戦った。クィネジュはその行動に一瞬気を抜いて叫び声を止めてしまう――――
 ――――その一瞬で、相殺されていた叫ぶ歌声が彼を四方から追い詰める。
 クィネジュの幾多の骨が砕けるメロディを鳴らす。
 身体は全方向から受けた力の圧迫により、膨張して爆風を起こし破裂し、血の雨が周辺の空から降った。地面のアスファルトは青緑色の血を吸って足下で不穏な音を立てた。
 肉の音だ。
 それぞれの肉片が再生されていく。
 アシャは、身体の形を取り戻そうとする足下のそれの一つを、足を退け、人差し指と親指で掴み、ユヤを見上げ、大きく開けた口の中に放り込んだ。
 咀嚼するアシャを見て、2号は冷や汗を垂らす。
 アシャの身体中――町中がクィネジュの血と肉に溢れ、アシャの空腹が爆発したのだ。
 アシャは未だに降る美しい緑の光と、血と肉の雨を受け、空から飴玉が降って来たかのようにはしゃいでそれを喰らった。
「アシャ!!」
 光線を口の中に受けて、今度は己の血で身体を赤く青く染め上げるアシャ。彼女に、聖茄が飛びつく。
 緑の光線は弧を描き、アシャではなく聖茄に向かっていく。聖茄は光を吸収した。すべての光線をそうやって防ぎ聖茄がアシャを守ろうとする。
 アシャは正気には戻らず、血肉と再生するクィネジュの身体たちをすべて食い尽くしてから、意識を失いその場に倒れ伏した。
 聖茄は気を失ったアシャを守る為に身を挺して庇い続ける。
あの美しかった晴天の空のような天色の髪は、緑龍子の影響か、空色の髪に変わってしまった。
 あの赤黒い血液のような瞳も、淡い桃色の瞳に変化していた。
 金の瞳孔とその淵の青さだけが元の容姿の面影を残していた。
 聖茄が保管されていたカプセル内は、緑龍子の液体で満ちていた。
 緑の光線はその液体の数千倍以上の緑龍子が凝縮され放たれる兵器だ。カプセルの液体中に含まれる緑龍子より、高濃度だった。
 聖茄の容姿に変化が現れたのはその影響だった。
 ユヤの攻撃が止まり、ユヤはゆっくりと地上に降りてきた。
 ユヤの門から橋が降りてくる。ユヤから白い軍服の者たちが大勢やって、それを見た聖茄はアシャを逃がそうと揺すって起こそうとする。
 聖茄の背に軍服の者の手が伸ばされる。

 ……………………アシャ。
 ………………………………アシャ。
 ………………………………………………目を開けて。
 ………………………………………………アシャ。
 ………………………………………………逃げよう。
 ………………………………………………あの日みたいに。
 ………………………………………………一緒に。
 ………………………………………………。
 ………………………………………………逃げて。
 ………………………………………………逃げて。
 ………………………………………………アシャ。

 アシャの背に軍服の者の手が伸ばされる。





「アシャああああああああああああああああ……!!」
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