リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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イルヴルヴ

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 次の町に着くと、なんと人の姿であったアシャは受け入れられ、聖茄と共に町で過ごすことが出来た。
アスファルトの上に建つ不思議な町で、港からフェリーが出ていると言う。町の人に詳しく聞き、それが船であり、海を渡り遠い場所へ行けるのだと知った。
 数日をその町の空き家で過ごしたが、ある日、白い軍服の男たちが町を徘徊し始めた。早朝、町を散歩していたアシャは聖茄と共に路地裏へ隠れ、様子を窺う。
「金髪の少女と、天色の髪の子供を見なかったか?」
「こんな二人だ」
 一人が聞き、もう一人が2枚の紙を見せる。
 どうやらアシャと聖茄の写真を見せて回っているようだった。
 町の人には数日間自分たちの姿を晒している。
 居場所がバレるのは時間の問題だった。
「帰れないね。ボクたちの居場所はないのかな……」
 聖茄もアシャと自分が狙われていることに気が付いている様子だった。奴らの目に留まらぬよう立ち回っている。
「そうだ。海を渡ってみようよ」
「名案だな……!」
 二人は家々の間を縫って歩き、見つかりそうになると屋根の上を登って進んだ。立って歩くと気付かれるだろうから、アシャたちは伏せて歩いた。
 しかし、カチャン、と瓦の音が鳴り、白い軍服の者たちに発見される。
あちらこちらから笛の音が鳴り、アシャは聖茄の手を引っ張って走った。聖茄は息を上げることなく並走している。
 屋根の上に上がって来た軍服たちを見てアシャたちは路地裏へ飛び降り、建物を避けながら走る。
 しかし、路地裏も屋根も囲まれてしまって、アシャと聖茄は逃げ場がないか、周囲を見渡した。
 逃げ場はない。
 ならば、倒すしかない。
 あの青い光線を放つ銃を構える彼等に、アシャは恐れをなしたが、聖茄を守るために変身した。
町の一部がアシャの下で潰れる。
 軍服の者たちは逃げおおせた者が多かったようで、青い光線を放って来た。アシャの赤と青のマーブル模様の血液が流れる。
 赤の割合が多い。
 アシャは聖茄を咥えて走った。
 不思議と聖茄に対しては食欲がわかなかった。
 軍服の者たちから逃げ切ると、アシャは人の姿に戻り、聖茄とフェリーに忍び込む。港に軍服の男たちが駆け付けたがフェリーはもう出港した後だった。
 聖茄とアシャは、甲板から海を眺めていた。
 大量の水の姿に、アシャと聖茄は感動する。
 そして、世界の広さに感嘆のため息を吐いた。
 沈んでいく太陽は、自分たちに希望を与えてくれた。世界がこれだけ広いなら、自分たちが静かに暮らせる場所がある筈だと。
「これからどうしようか」
 アシャが問うと聖茄が言う。
「海はまた見たいな」
「そうだな。こんなに美しいとは思わなかった」
「船にももう一度乗りたいな」
「奴らが追って来なくなった頃に乗ろうか」
「うん」
「私は人間と暮らしてみたいな。不思議と実験体以外には食欲がわかなくなった」
「君が人間に近くなったからじゃないかな」
「そうなのだろうか……」
 アシャたちは客室に入り、パンフレットやテレビを見てはしゃぐ。お客さんにたくさん外について教えて貰った。
 着いた町の名は、鹿児島市と言った。
 町の大きさに驚き、超高層ビル群を眺めようとすると二人して後ろにひっくり返った。行きかっていた人々は何してるんだろうと言う目で見てくる。
「どうしようアシャ。何が何だか分からない」
「人間がいっぱいいるぞ聖茄! 箱がもの凄い速さで動いている! 中にも人間がいっぱいだ! ……もしかして実験体か?」
「アシャ! 大きいテレビ!」
 テレビはフェリーの客に教わった一つだった。
 ビルの巨大な液晶画面に人が映り、おおはしゃぎする。町の人々には都会が初めてな田舎から来た子たちだと思われていただろう。
 アシャたちは住処を探すが、空き家は追い出されてなかなか住処が見つからなかった。アシャと聖茄は路地裏で暮らし、お金と言うモノの必要さを噛み締める。ご飯が手に入らないから人間でも食ってしまおうかとアシャが恐ろしい顔付きで震えていると、アシャは道路の向こう側に見える、張り紙のバイト募集の文字を見付ける。道行く人にバイトとは何かを聞き、お金が貰えることを知り、働きたいと店に言いに行った。
 後日行われたアシャの面接はめちゃくちゃだったが、働き手不足だった店はアシャを雇った。日払いにして貰い、店の人には苦労していると思われ、アシャには多めの給料がいつも払われた。
給料が払われた初日は聖茄と二人で銭湯に行った。店の人に風呂はちゃんと入れと怒られたのである。
アシャは聖茄にタオルを巻いてから服を脱ぐように言っており、自分もそうした。なぜなら実験体と分かる痣があるからだ、聖茄はどうか分からないがそうさせた。湯船に浸かる時はタオルを外すので極力色の付いている湯や、泡風呂に入った。
 アシャがバイトに行っている間、聖茄は森で遊んでいた。
 虫を捕まえたり、木に登ったり、土を掘って頭を突っ込んだりしていた。
 たまに昼寝もして、少し寂しい思いもしながら日々を過ごした。そんな聖茄には、アシャに朝一番で髪をポニーテイルに結んで貰うことが楽しみとなった。銭湯に行った時は髪が長いので洗うのに苦労した。
 聖茄がいつも通り森で遊んでいた、ある日のことだった。
 あのラウグストゥスと呼ばれた少年が聖茄の前に現れ、聖茄が逃げようとすると、「待って、何もしないから」と呼び止めてくる。
「そのネックレスは……もう一つあって、僕のお父さんの形見なんだ」
「そうなのか?」
 聖茄はアシャに渡してしまったことを思い出し、そうだと自分のネックレスを外す。
「ボクのを持っていて」
「……それは愛する者に与えるモノなんだよ」
 ラウグストゥスはそう言う。
 聖茄は訳が分からないまま言った。
「あいしてる……?」
 ラウグストゥスはその言葉にハッと息をのみ、目を輝かせ、聖茄を抱き締める。
「僕も君が好きだ、愛してるよ」
 聖茄の額にキスをしてくるラウグストゥス。
 聖茄は胸を突き放して拒絶した。
「や、やめろ!!」
 ラウグストゥスは「どうして」と聖茄の手を両手で包み込み、聖茄に迫り焦ったように言った。
「僕たちは愛し合える」
「愛し合うと言うことがそう言うことならボクは君を愛せない」
「愛し合えるよ。僕は男の子で君は女の子なんだから」
「ボクは男だ!!」
「君は女の子だよ」
 聖茄は涙目になって叫ぶ。
「男だ!!」
 ラウグストゥスは目を瞑り、ふぅ……と息を吐いた。
「……そうか。君がそう思おうと僕は女の子だと君を思おう。僕たちは愛し合える」
「…………」
「君へ最初に聞く質問を考えていたんだ。君のなま――」

「――ゼルベイユ・ラウグストゥス!! 何処にいる!!」

 ラウグストゥス――ゼルベイユの言葉を遮り、そんな怒鳴り声が聞こえてくる。
「もう行かなくちゃ」
 ゼルベイユはそう言って慌てて去って行った。
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