リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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イルヴルヴ

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 大地は真っ白に染め上げられていた。岩や木の上も自然によって白く染め上げられている。
6号は初めて【雪】と言うモノを触った。
全身の背と言う背から身体の芯までその冷たさが染み込んでくる。底冷えするような寒さに凍え、冷たい頬から出ていく白い息を吐くが、6号はその場所を離れなかった。
 いや、離れられなかったのだ。
 全身を雪の下の大地に打ち付けられ、いたるところが骨折していた。

 やんちゃが渦になったように毛先の跳ねた金の髪。

 大きな白く七色に輝く瞳と、優しそうな垂れ目。

 蝋のように真っ白な肌。

 実験体用の清潔さ溢れる白い服。

 周りを見渡しても、人気ひとけのあるものはない。
 周りには木々や岩しか見えなかった。
 6号はその開けた場所へ溶け込んで転がっていた。6号は首をゆっくりと動かし、顔を顰め、辺りを見渡した。そうしてから誰にも発見されず凍え死んでしまうことを悟った。
 ――――4時間くらい経った頃だった。
 ちらちらと降っていた雪は吹雪いてきて、6号は雪に埋もれかけていた。
 そんな6号は体内に浸透していた緑龍子で凍傷を再生し、何とか生き延びていた。……骨折はまだ治りそうにない。
 寒さによってか、視界が暗く靄がかかって見えるほど意識が朦朧としてきていた。
 雪の冷たさで真っ赤になった耳にギュッギュッと雪を潰すような音が聞こえてきて、6号は一定に奏でられ近づいてくるそれが足音であると理解した。彼女は音には敏感だったのだ。
 重ための足音が冷えた後頭部の近くで止まる。
 頭の上の方から前かがみに動く気配が感じられた。
 霞む視界に、人影が映るが、視界がぼやけていて顔は見えない。
「……女の子」
 声が降ってきて、6号は朦朧とした意識を取り戻そうと踏ん張った。
 しかし。
 吹雪は容赦なく、6号の意識を飛ばしたのだった。



        ◇◇◇



 意識が戻った時、目を開く前に6号の耳には、パチパチと言う音が聞こえてきていた。
目を開け、辺りを見渡すと、木の模様が浮かぶ天井と、太い梁、暖炉の中の眩しい光が見えた。
 6号は初めて、黄金に燃え上がる炎を見た。その神秘的な美しさに虜になる。
「それは火だ」
 そう言った声に聞き覚えがあった。あの人影がどうやら自分を救ってくれたらしいと、6号は頭の中で認識する。
「あ……あ……」
「話せないのか?」
「う~! ううううッ!!」
「無理に話さなくていい。話し方は俺が教えるから」
 救った人物が6号の顔を覗き込んできた。6号はその視界に入って来た、彼の容姿の美しさに感嘆の吐息を洩らす。

 振ったばかりの雪のように白い髪。

 陶器のように白い肌。

 宝石のように輝く、アイル・トーン・ブルーの瞳。


 美しい。


 6号はそう認識した。
「何かがユヤから落ちていくのが見えたんだ。見に行ったら君だった。捜索は得意なんだ」
 6号がただ黙って眺めていると、彼は目をパチパチと開く。
「君は言葉を理解してるのか?」
「う~」
 6号は返事をしようとしたが、上手く発声出来なかった。
「俺も12年前、ユヤから落ちてしまったんだ」
「あ~う~?」
 彼の正体を聞きたかったが、彼女には難しかった。
「お前の名前を決めるぞ……アシャ。アシャにしよう」
 彼は優しく笑って6号に自らが付けた名前を呼んだ。
「これからよろしく、アシャ」

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