リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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リョウゲ

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 この儘、絞め殺してしまいたい。そうすれば、躯だけでも人間らしくいられるんじゃないだろうか。この温もりが嘘じゃないと証明出来るんじゃないだろうか。赤鳥姉さんは幸せそうだったじゃないか。それとも、殺したらあいつ等が真黒の身体を苗床にこの家まで飲み込んでしまうのだろうか。
 もし、神様。貴方が存在するなら、私は。
 神なんて、滅ぼしてしまいたい。
 私が殺してやる。絶対に。
 こいつをこんな化け物に変えたお前等を撲滅してやる。絶対に。
 消し去ってやる。
 私はお前が憎いんだ。なのに、お前にすがるしかない。
 茶王、何処に行ったんだ。私に変えられるなんて、よくもまあ簡単に言ってくれたな。お前は人間最強と一緒にいすぎて、ニンゲンの持てる力の域を見失っている。私はそもそもニンゲンじゃないんだぞ、人間最強と同格を求めるな。
「あ、姉貴、あの、苦し……い、悪く、はねえけど。結構あるんだなって思ったけどさ、おう、好きだけどさ」
「まぐろ……」
「お、おう?」
「すき……なんだ。お前のことが」
「おう……? おう!?」
「すきなんだ、まぐろ……」
「お、おおおおおおおおおおおおおおう!? なななな、何言ってんだアンタ!?」
「大好きなんだ」
「へっ、あ、あう、あい、あいうえお、あ、う、えいおあう? いや、あの、まあ、その、俺も、姉貴の、ことは、その、きき、綺麗だなって、思うこともしばしば沢山もろもろある、あった、けど、ひえ」
「真黒……」
 私の大事な兄。
 返して下さい神様。
 お願いだから。
 皆を返してくれ。
 皆を元に戻してくれ。
 どうしたら元に戻せるのか教えてくれ。
 自分で調べろって言うなら全力で調べるからその代わり皆を救える力を私に。
 ちゃんと結果を見せろ。すぐにでも、そうしないと、そうしないとお前を。
 お前を全力で呪ってやる。私は神なんかに負けないぞ、お前を必ず貶めてやる。
 一人の願い位叶えろよ。もし、叶えられないなら、神なんて名乗るな。
 八百万もいて、誰も夢を叶えてくれないっていうのなら、救おうとしてくれないのなら、私が全て破壊してやる。
 私は天使の家系だぞ、人間よりは近い位置にいる。
 足元を掬って地に落としてやる。
 だから、だから皆を。
 頼むから。
「まぐろ、何処にも行くな。……頼むから、連れていかないでくれ」
「な、泣いてるのか姉貴、だ、大丈夫だ! こ、こんな必死な告白されたの初めてだし、なんか甘えてくる姉貴超可愛いって思うしだからけ、結婚してもいい、かなって思うし、」
「まぐろ……」
 いつから追い抜いていたのだろう。二人とも立っているのに、私から抱き付いている筈なのに、お前は私を見下ろせる。漆黒の瞳をすがるように、見上げれば、顔を真っ赤にしたお前がいて。
「お、おおおおお、おれ、おれ、も、姉貴を、す、好きに、なり、そ」
 ──…………こいつバカだ。
「何してるんだ、お前等……」
「──はへッ!? あ、え、は、白馬の兄貴! な、何でここに!?  て言うかいつからそこに!? 部屋は本堂に移ったんじゃ……!?」
 そう、ここに来させる前、屋敷の牢屋に閉じ込められる前に決まっていたことだが、真黒は白馬が捕えられたことを知らなかった。叫んでいるなとは思っていただろうが。
「黄泉……」
「…………っ」
 目が合って、逸らしてしまう。
 何か話さなければ何かしらの面で怪しまれてしまうだろう。
 けれど、掛けるべき言葉が思い付かない。
 兄さんの食事のシーンと化け物に変身するシーンばかりが、脳裏に繰り返し流れて、頭痛と吐き気が止まらない。
 思わず、真黒に身を委ねると、ビクリと真黒の肩が震える。
 兄の所為で気分が悪いが、真黒の様子も気になる。
「真黒、席を外せ。俺様は黄泉と二人きりで話がしたい」
「わ、分かったよ。すぐ出ていくから睨むなよ……っ、って離せよ姉貴!」
 耳も赤い、そう思ったら、手も足も全身茹で蛸みたいに真っ赤だった。これじゃ何かしらの面の中で最も面倒な方に怪しまれても仕方がない。
「……悪かった。お前で遊び過ぎた。全部冗談だから出てっていいよ」
「じょ、冗談、じゃないだろ」
 てっきり怒ると思っていたから、驚いてしまった。
 恥ずかしいのか口元を隠しつつ、私の瞳をじっと見つめてくる。こんなに真っ直ぐな瞳を向けられる様になったのか。
 あの事件からずっとお前は、死人みたいな虚ろな目で世界も自分もどうでも良いって顔してたのに。
「姉貴の、その、あの抱擁はしっかりずっしり俺の心を射止めたからよ。心配すんなよ」
「い、いや。まあ、本音ではあったけどそう言う意味じゃ……」
「だ、大丈夫。自分の言動には責任持つから。け、結婚するから」
「ごめん。私が悪かった。お前相手にするべき行為じゃなかった。青海兄さん辺りにしとけば良かった、お前は絶対面倒なことになるって分かってたのに何でお前にしちゃったんだろう最悪」
「て、照れなくていいんだ」
「やめろ消えろくたばれ」
 ど、どうすれば良いんだ。面倒なことに巻き込まれているのにさらに面倒なことを引き入れてしまった。いや、そもそも茶王の口車に乗せられたのだから巻き込まれたと言うよりは矢張り自ら引き込んだのだろうか。面倒臭がりな癖に面倒を招くプロだな。
「真黒、黄泉と二人きりにしろ」
「あ、え。あ、そうだったな、悪い!! だ、だからそんな目で睨まないでくれ! ん? ま、まさか兄貴、姉貴のこと──ッ」
「──ッ、やめろこれ以上面倒にするなッ!!」
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