143 / 299
リョウゲ
32
しおりを挟む
この儘、絞め殺してしまいたい。そうすれば、躯だけでも人間らしくいられるんじゃないだろうか。この温もりが嘘じゃないと証明出来るんじゃないだろうか。赤鳥姉さんは幸せそうだったじゃないか。それとも、殺したらあいつ等が真黒の身体を苗床にこの家まで飲み込んでしまうのだろうか。
もし、神様。貴方が存在するなら、私は。
神なんて、滅ぼしてしまいたい。
私が殺してやる。絶対に。
こいつをこんな化け物に変えたお前等を撲滅してやる。絶対に。
消し去ってやる。
私はお前が憎いんだ。なのに、お前にすがるしかない。
茶王、何処に行ったんだ。私に変えられるなんて、よくもまあ簡単に言ってくれたな。お前は人間最強と一緒にいすぎて、ニンゲンの持てる力の域を見失っている。私はそもそもニンゲンじゃないんだぞ、人間最強と同格を求めるな。
「あ、姉貴、あの、苦し……い、悪く、はねえけど。結構あるんだなって思ったけどさ、おう、好きだけどさ」
「まぐろ……」
「お、おう?」
「すき……なんだ。お前のことが」
「おう……? おう!?」
「すきなんだ、まぐろ……」
「お、おおおおおおおおおおおおおおう!? なななな、何言ってんだアンタ!?」
「大好きなんだ」
「へっ、あ、あう、あい、あいうえお、あ、う、えいおあう? いや、あの、まあ、その、俺も、姉貴の、ことは、その、きき、綺麗だなって、思うこともしばしば沢山もろもろある、あった、けど、ひえ」
「真黒……」
私の大事な兄。
返して下さい神様。
お願いだから。
皆を返してくれ。
皆を元に戻してくれ。
どうしたら元に戻せるのか教えてくれ。
自分で調べろって言うなら全力で調べるからその代わり皆を救える力を私に。
ちゃんと結果を見せろ。すぐにでも、そうしないと、そうしないとお前を。
お前を全力で呪ってやる。私は神なんかに負けないぞ、お前を必ず貶めてやる。
一人の願い位叶えろよ。もし、叶えられないなら、神なんて名乗るな。
八百万もいて、誰も夢を叶えてくれないっていうのなら、救おうとしてくれないのなら、私が全て破壊してやる。
私は天使の家系だぞ、人間よりは近い位置にいる。
足元を掬って地に落としてやる。
だから、だから皆を。
頼むから。
「まぐろ、何処にも行くな。……頼むから、連れていかないでくれ」
「な、泣いてるのか姉貴、だ、大丈夫だ! こ、こんな必死な告白されたの初めてだし、なんか甘えてくる姉貴超可愛いって思うしだからけ、結婚してもいい、かなって思うし、」
「まぐろ……」
いつから追い抜いていたのだろう。二人とも立っているのに、私から抱き付いている筈なのに、お前は私を見下ろせる。漆黒の瞳をすがるように、見上げれば、顔を真っ赤にしたお前がいて。
「お、おおおおお、おれ、おれ、も、姉貴を、す、好きに、なり、そ」
──…………こいつバカだ。
「何してるんだ、お前等……」
「──はへッ!? あ、え、は、白馬の兄貴! な、何でここに!? て言うかいつからそこに!? 部屋は本堂に移ったんじゃ……!?」
そう、ここに来させる前、屋敷の牢屋に閉じ込められる前に決まっていたことだが、真黒は白馬が捕えられたことを知らなかった。叫んでいるなとは思っていただろうが。
「黄泉……」
「…………っ」
目が合って、逸らしてしまう。
何か話さなければ何かしらの面で怪しまれてしまうだろう。
けれど、掛けるべき言葉が思い付かない。
兄さんの食事のシーンと化け物に変身するシーンばかりが、脳裏に繰り返し流れて、頭痛と吐き気が止まらない。
思わず、真黒に身を委ねると、ビクリと真黒の肩が震える。
兄の所為で気分が悪いが、真黒の様子も気になる。
「真黒、席を外せ。俺様は黄泉と二人きりで話がしたい」
「わ、分かったよ。すぐ出ていくから睨むなよ……っ、って離せよ姉貴!」
耳も赤い、そう思ったら、手も足も全身茹で蛸みたいに真っ赤だった。これじゃ何かしらの面の中で最も面倒な方に怪しまれても仕方がない。
「……悪かった。お前で遊び過ぎた。全部冗談だから出てっていいよ」
「じょ、冗談、じゃないだろ」
てっきり怒ると思っていたから、驚いてしまった。
恥ずかしいのか口元を隠しつつ、私の瞳をじっと見つめてくる。こんなに真っ直ぐな瞳を向けられる様になったのか。
あの事件からずっとお前は、死人みたいな虚ろな目で世界も自分もどうでも良いって顔してたのに。
「姉貴の、その、あの抱擁はしっかりずっしり俺の心を射止めたからよ。心配すんなよ」
「い、いや。まあ、本音ではあったけどそう言う意味じゃ……」
「だ、大丈夫。自分の言動には責任持つから。け、結婚するから」
「ごめん。私が悪かった。お前相手にするべき行為じゃなかった。青海兄さん辺りにしとけば良かった、お前は絶対面倒なことになるって分かってたのに何でお前にしちゃったんだろう最悪」
「て、照れなくていいんだ」
「やめろ消えろくたばれ」
ど、どうすれば良いんだ。面倒なことに巻き込まれているのにさらに面倒なことを引き入れてしまった。いや、そもそも茶王の口車に乗せられたのだから巻き込まれたと言うよりは矢張り自ら引き込んだのだろうか。面倒臭がりな癖に面倒を招くプロだな。
「真黒、黄泉と二人きりにしろ」
「あ、え。あ、そうだったな、悪い!! だ、だからそんな目で睨まないでくれ! ん? ま、まさか兄貴、姉貴のこと──ッ」
「──ッ、やめろこれ以上面倒にするなッ!!」
もし、神様。貴方が存在するなら、私は。
神なんて、滅ぼしてしまいたい。
私が殺してやる。絶対に。
こいつをこんな化け物に変えたお前等を撲滅してやる。絶対に。
消し去ってやる。
私はお前が憎いんだ。なのに、お前にすがるしかない。
茶王、何処に行ったんだ。私に変えられるなんて、よくもまあ簡単に言ってくれたな。お前は人間最強と一緒にいすぎて、ニンゲンの持てる力の域を見失っている。私はそもそもニンゲンじゃないんだぞ、人間最強と同格を求めるな。
「あ、姉貴、あの、苦し……い、悪く、はねえけど。結構あるんだなって思ったけどさ、おう、好きだけどさ」
「まぐろ……」
「お、おう?」
「すき……なんだ。お前のことが」
「おう……? おう!?」
「すきなんだ、まぐろ……」
「お、おおおおおおおおおおおおおおう!? なななな、何言ってんだアンタ!?」
「大好きなんだ」
「へっ、あ、あう、あい、あいうえお、あ、う、えいおあう? いや、あの、まあ、その、俺も、姉貴の、ことは、その、きき、綺麗だなって、思うこともしばしば沢山もろもろある、あった、けど、ひえ」
「真黒……」
私の大事な兄。
返して下さい神様。
お願いだから。
皆を返してくれ。
皆を元に戻してくれ。
どうしたら元に戻せるのか教えてくれ。
自分で調べろって言うなら全力で調べるからその代わり皆を救える力を私に。
ちゃんと結果を見せろ。すぐにでも、そうしないと、そうしないとお前を。
お前を全力で呪ってやる。私は神なんかに負けないぞ、お前を必ず貶めてやる。
一人の願い位叶えろよ。もし、叶えられないなら、神なんて名乗るな。
八百万もいて、誰も夢を叶えてくれないっていうのなら、救おうとしてくれないのなら、私が全て破壊してやる。
私は天使の家系だぞ、人間よりは近い位置にいる。
足元を掬って地に落としてやる。
だから、だから皆を。
頼むから。
「まぐろ、何処にも行くな。……頼むから、連れていかないでくれ」
「な、泣いてるのか姉貴、だ、大丈夫だ! こ、こんな必死な告白されたの初めてだし、なんか甘えてくる姉貴超可愛いって思うしだからけ、結婚してもいい、かなって思うし、」
「まぐろ……」
いつから追い抜いていたのだろう。二人とも立っているのに、私から抱き付いている筈なのに、お前は私を見下ろせる。漆黒の瞳をすがるように、見上げれば、顔を真っ赤にしたお前がいて。
「お、おおおおお、おれ、おれ、も、姉貴を、す、好きに、なり、そ」
──…………こいつバカだ。
「何してるんだ、お前等……」
「──はへッ!? あ、え、は、白馬の兄貴! な、何でここに!? て言うかいつからそこに!? 部屋は本堂に移ったんじゃ……!?」
そう、ここに来させる前、屋敷の牢屋に閉じ込められる前に決まっていたことだが、真黒は白馬が捕えられたことを知らなかった。叫んでいるなとは思っていただろうが。
「黄泉……」
「…………っ」
目が合って、逸らしてしまう。
何か話さなければ何かしらの面で怪しまれてしまうだろう。
けれど、掛けるべき言葉が思い付かない。
兄さんの食事のシーンと化け物に変身するシーンばかりが、脳裏に繰り返し流れて、頭痛と吐き気が止まらない。
思わず、真黒に身を委ねると、ビクリと真黒の肩が震える。
兄の所為で気分が悪いが、真黒の様子も気になる。
「真黒、席を外せ。俺様は黄泉と二人きりで話がしたい」
「わ、分かったよ。すぐ出ていくから睨むなよ……っ、って離せよ姉貴!」
耳も赤い、そう思ったら、手も足も全身茹で蛸みたいに真っ赤だった。これじゃ何かしらの面の中で最も面倒な方に怪しまれても仕方がない。
「……悪かった。お前で遊び過ぎた。全部冗談だから出てっていいよ」
「じょ、冗談、じゃないだろ」
てっきり怒ると思っていたから、驚いてしまった。
恥ずかしいのか口元を隠しつつ、私の瞳をじっと見つめてくる。こんなに真っ直ぐな瞳を向けられる様になったのか。
あの事件からずっとお前は、死人みたいな虚ろな目で世界も自分もどうでも良いって顔してたのに。
「姉貴の、その、あの抱擁はしっかりずっしり俺の心を射止めたからよ。心配すんなよ」
「い、いや。まあ、本音ではあったけどそう言う意味じゃ……」
「だ、大丈夫。自分の言動には責任持つから。け、結婚するから」
「ごめん。私が悪かった。お前相手にするべき行為じゃなかった。青海兄さん辺りにしとけば良かった、お前は絶対面倒なことになるって分かってたのに何でお前にしちゃったんだろう最悪」
「て、照れなくていいんだ」
「やめろ消えろくたばれ」
ど、どうすれば良いんだ。面倒なことに巻き込まれているのにさらに面倒なことを引き入れてしまった。いや、そもそも茶王の口車に乗せられたのだから巻き込まれたと言うよりは矢張り自ら引き込んだのだろうか。面倒臭がりな癖に面倒を招くプロだな。
「真黒、黄泉と二人きりにしろ」
「あ、え。あ、そうだったな、悪い!! だ、だからそんな目で睨まないでくれ! ん? ま、まさか兄貴、姉貴のこと──ッ」
「──ッ、やめろこれ以上面倒にするなッ!!」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。
すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!?
「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」
(こんなの・・・初めてっ・・!)
ぐずぐずに溶かされる夜。
焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。
「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」
「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」
何度登りつめても終わらない。
終わるのは・・・私が気を失う時だった。
ーーーーーーーーーー
「・・・赤ちゃん・・?」
「堕ろすよな?」
「私は産みたい。」
「医者として許可はできない・・!」
食い違う想い。
「でも・・・」
※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。
※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
それでは、お楽しみください。
【初回完結日2020.05.25】
【修正開始2023.05.08】
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~
さとう
ファンタジー
町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。
結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。
そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!
これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる