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リョウゲ
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何故理解して欲しくない時は理解する癖に、して欲しい時にはしてくれないんだ。
恐々と振り向くと、青海はただ不思議そうにしていた。
彼がいつも通り微笑んでいないことに安心感を覚える。しかし同時に焦りも生じた。
「今は二人きりなんだから名前で呼べばいいだろう」
「ああ、そう言うことか。ごめんね、黄泉。ダブルデートって言う名目だからつい兄さんと姉さんがいる感覚が抜けなくて」
「いるんだろう」
「何が?」
「もういい」
黙ってただ外を眺めていた。
私は今後ろを見てはいけない。そんな気がした。
そもそも微笑んでいない青海ほど珍しいものはないんだ。二人きりになって、やっと安心したのか。それとも私が背中を向けているからか。
観覧車の軋む音が青海の嗚咽を掻き消した。
「私はお前の笑顔さえ見られれば良かったんだ」
「私もだよ。黄泉」
観覧車が頂上にくれば、向かい合わせで座って外を眺めた。四人で乗った時は青かった空が今は赤く染まっている。
「青海。私はやはり、あいつらを助けるべきだと思う」
「そうだね。手遅れの者もいるかもしれないけど、協力者を呼ぼう。当てはある」
「協力者? 当て? もし本当にあったとして、頼んだって、屋敷の現状を知れば逃げ帰るだろう」
「大丈夫。専門の人だから」
「専門? まさか……」
タフィリィの専門と言われて思い浮かべるのは彼女しかいない。いつか、家族を燃やした女。悪夢と呼ばれる数日を作り上げた女。
「アリシア・バルマディッジか。信用出来るのか?」
「体内のタフィリィを抜くことが出来るのは彼女だけだ。それに、最近は能力協会にも協力したと聞いたよ」
「あの能力協会にか? それこそ信用できないだろう、向こう側についていると言うことじゃないか」
能力協会はカナキリを保護する組織、我々カナキリを狩る組織である國哦伐家とは相いれない関係だ。
「能力協会にも頼み込むしかないね。向こうからそれなりの条件が出るとは思うけど」
「……皆を助ける為か。だが、連絡手段はあるのか?」
「そっちは私に任せてよ」
その青海の意味深な言葉を最後に、扉が開いてしまった。キャストの期待した笑顔が迎える。
「失敗しました」
え、とキャストの顔が引きつる。
「成功だよね」
「腰に腕を回すな」
「ありがとうございました」
青海が振り返りながらひらひらと手を振る。やめろ、注目を集めているではないか。
白馬と赤鳥はすぐ近くの店の、パラソル付きのテーブル席で夕食を取っていたようだった。
「待たせたな」
「黄泉ったら大胆過ぎよ!! びっくりしちゃったじゃない! で、で? どうだったの?」
「どうって、何のことだ。私は夕焼けを見たかっただけだぞ。キャストの応援でばっちりな景色が見れた」
「ああ~夕焼けかぁ、ロマンチックだわ! は、白馬お兄様、この後私と観覧車で夜景でも――っ」
「却下。もう帰る時間だ」
「えええええっ!」
恐々と振り向くと、青海はただ不思議そうにしていた。
彼がいつも通り微笑んでいないことに安心感を覚える。しかし同時に焦りも生じた。
「今は二人きりなんだから名前で呼べばいいだろう」
「ああ、そう言うことか。ごめんね、黄泉。ダブルデートって言う名目だからつい兄さんと姉さんがいる感覚が抜けなくて」
「いるんだろう」
「何が?」
「もういい」
黙ってただ外を眺めていた。
私は今後ろを見てはいけない。そんな気がした。
そもそも微笑んでいない青海ほど珍しいものはないんだ。二人きりになって、やっと安心したのか。それとも私が背中を向けているからか。
観覧車の軋む音が青海の嗚咽を掻き消した。
「私はお前の笑顔さえ見られれば良かったんだ」
「私もだよ。黄泉」
観覧車が頂上にくれば、向かい合わせで座って外を眺めた。四人で乗った時は青かった空が今は赤く染まっている。
「青海。私はやはり、あいつらを助けるべきだと思う」
「そうだね。手遅れの者もいるかもしれないけど、協力者を呼ぼう。当てはある」
「協力者? 当て? もし本当にあったとして、頼んだって、屋敷の現状を知れば逃げ帰るだろう」
「大丈夫。専門の人だから」
「専門? まさか……」
タフィリィの専門と言われて思い浮かべるのは彼女しかいない。いつか、家族を燃やした女。悪夢と呼ばれる数日を作り上げた女。
「アリシア・バルマディッジか。信用出来るのか?」
「体内のタフィリィを抜くことが出来るのは彼女だけだ。それに、最近は能力協会にも協力したと聞いたよ」
「あの能力協会にか? それこそ信用できないだろう、向こう側についていると言うことじゃないか」
能力協会はカナキリを保護する組織、我々カナキリを狩る組織である國哦伐家とは相いれない関係だ。
「能力協会にも頼み込むしかないね。向こうからそれなりの条件が出るとは思うけど」
「……皆を助ける為か。だが、連絡手段はあるのか?」
「そっちは私に任せてよ」
その青海の意味深な言葉を最後に、扉が開いてしまった。キャストの期待した笑顔が迎える。
「失敗しました」
え、とキャストの顔が引きつる。
「成功だよね」
「腰に腕を回すな」
「ありがとうございました」
青海が振り返りながらひらひらと手を振る。やめろ、注目を集めているではないか。
白馬と赤鳥はすぐ近くの店の、パラソル付きのテーブル席で夕食を取っていたようだった。
「待たせたな」
「黄泉ったら大胆過ぎよ!! びっくりしちゃったじゃない! で、で? どうだったの?」
「どうって、何のことだ。私は夕焼けを見たかっただけだぞ。キャストの応援でばっちりな景色が見れた」
「ああ~夕焼けかぁ、ロマンチックだわ! は、白馬お兄様、この後私と観覧車で夜景でも――っ」
「却下。もう帰る時間だ」
「えええええっ!」
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