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リョウゲ
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「暴走したら檻破っちゃうからさぁ。暴れる前に人型の状態で檻から出てぇ、広い空間に歩いて移動してから、暴走するんだよぉ。文句ならお父さんに言ってぇ」
「まあ閉じ込めるメリットないしね。ばらまける方があの人は喜ぶ」
青海の父親、國哦伐家の長の一人――碧王。怪しい人を上げ出したらきっと切りがないが、砂金姉さんの発言も青海の発言も碧王とタフィリィの繋がりがあると示している。
碧王、シギュルージュ、或る液体……知らないことだらけだ。
「矢地さんは或る液体の在処を知ってるのかもしれない」
「そんなものが本当にこの洞窟にあるのか?」
「そう。得体のしれない虫が大量に沸いてくる原因でもある」
「原因だと?」
「吸血動物の虫がその液体を吸って進化したモノ、それがタフィリィだ」
……その液体が無くなればタフィリィは無くなるのか?
「虫だけか? ヒルやコウモリではだめなのか?」
「刺激が強すぎるし、液体に飲み込まれて終わりだ」
「飲み込まれる?」
「例えるなら襲ってくる溶解液の進化版ってところかな。少し刺激を与えただけで襲い掛かってくるこわぁい液体」
「……そんな恐ろしいものがこの洞窟の奥に存在していたのか? ――って、ちょっと待て、シギュルージュに使っていると言うことは――」
「そう、君も飲み込まれてるんだよ」
「おい姉!?」
「大丈夫大丈夫。緑龍子を塗れば治るからねぇ」
いろいろ言いたいことはあるが……今は我慢することにする。その液体が無くなれば……と思っていたのだが、襲い掛かってくるとなると。吸引して回収したり、それを移動させたりすることも出来ないのかもしれない。
「待て。その液体はこの洞窟にどれだけ存在しているんだ。それを虫が吸うだけでタフィリィが出来てしまうなら、……タ、タフィリィたちは野放しなのか!?」
「そうだね、タフィリィは本来寄生しなくてもふつうに生きていけるから、ハエやトンボなんかと同じでそこら中を飛び回れる。でも彼等はヒトに寄生する。体内に入りたがるんだ。私たちが家を建てて住むのと同じように、彼らは住処を欲しているのかもね」
「液体は洞窟の最深部に存在してるからねぇ、そこには血を吸う虫はほとんどいないんだよぉ。もし発生しても洞窟の中で住処が見つかっちゃうからぁ、洞窟の外に出ることが珍しいんだよねぇ。まぁ、洞窟以外にも住処を作っちゃってるんだけどさぁ」
「それは屋敷のことか?」
「そ~。ここら一帯の森は、ほとんどすべてが國哦伐家の敷地だって知ってるよね~? だから人型は私達しかいないし、私以外のキョウダイ達は高校に通ってるわけだけど、まだ周囲にばらまくような段階じゃないんだよぉ」
「周囲にばらまく段階? そんな基準があるのか?」
「そう、だから始末されないように隠されているだろう。この洞窟にね」
増やす役目も隠す役目もある洞窟か。
「なるほど、確かに巣だな」
「世界中に広まっちゃったら手が付けられないんだろうねぇ」
「だが、どうして屋敷のタフィリィはビー玉みたいな透明な器に入っているんだ? さっきの奴は試験管も溶かして出ようとしていたし、初めて見る種類だった。屋敷の奴らはおとなしいし同じ見た目をしているだろう?」
「さっきも言った通り進化して形が変化しているのも理由の一つだけど、君が知る以上にタフィリィにはいろいろな種類があるんだ。私が知っている分だけでも八種類あるよ。もちろん容器を溶かせるように進化すれば彼らはすぐにでも自由になれるさ。でも、特殊な容器と液体に入れてあるから、彼等はあの中を心地良いと感じるらしい」
「いや、そうではなくて、タフィリィがなくとも奴らは森中を飛び回ってるんだろう? 皮膚を食い破って体外へ出てくるんだろう? タフィリィとはなんだ。なぜ閉じこめる。わざわざビー玉に入れる意味が分からん」
「効率よく運ぶためだよ。世界中に配ったら手が付けられなくなっちゃうから特定の組織だけに輸送しているんだ。タフィリィは依存性も高い上、人間――いや、我々化け物以上の力を手に入れるには手っ取り早い方法なんだ。売り捌いたら大量のお金が入ってくるからね」
「それにタフィリィ達の意志に関係なく自分の中に制限なく取り込めるからねぇ。まあ寄生されたら〝仲間達よ、もっと中に入っておいで〟状態になるから、一つ服用するだけでも効果は絶大だよぉ」
つまり一匹でも体内に入ってしまえば、その〝効果〟が現れてしまうと言うことか。
厄介だな。面倒過ぎる……。無理やり虫を取り込む方法もあれば、無理やり入り込んでくることもある、一匹で効果絶大となると一体どう対処すればいいんだ。対策のしようはあるのか?
いや、そもそも……
「タフィリィを一度服用してしまうと、その後服用した者をなおすことは出来ないのか……?」
「難しいね」
「黄泉ちゃん、助ける方法があるのかどうかも分からない相手を捕まえてどうする気なのかなぁ?」
「助けるに決まってるだろう」
どう助けるかは決まっていなくても、助けると言うことだけは決まっている。
「今まで見て見ぬふりをしてきたのにぃ、どうして急に助けなくなったの~?」
「……それは」
「矢地さんと何かがあったのかなぁ?」
「…………あの姿を見たことがきっかけだ」
「ふぅ~ん。そう言うことにしといてあげるよぉ」
「どう言う意味だ」
「実は見てたんだよねぇ。監視カメラでぇ」
「な、なな」
な、にい!! この姉は見られたくないことをいつも見てやがってこのこの!
「あははぁ。真っ赤になっちゃってか~わい~」
「何を見たのかな姉さん」
「お前には関係ないよねぇ」
「黄泉が変だ。何を見たんだい姉さん」
「お前ちょっと怖いぞぉ」
ちょっとじゃない。気付くのがおそいぞ姉よ。
三人で仲良くの~んびり歩いている時だった。前の枝分かれした道の一番左から、ぬちゃっと言う音とともにその辺りに影が差す。
「げ」
「あ」
「ひょぇ」
「まあ閉じ込めるメリットないしね。ばらまける方があの人は喜ぶ」
青海の父親、國哦伐家の長の一人――碧王。怪しい人を上げ出したらきっと切りがないが、砂金姉さんの発言も青海の発言も碧王とタフィリィの繋がりがあると示している。
碧王、シギュルージュ、或る液体……知らないことだらけだ。
「矢地さんは或る液体の在処を知ってるのかもしれない」
「そんなものが本当にこの洞窟にあるのか?」
「そう。得体のしれない虫が大量に沸いてくる原因でもある」
「原因だと?」
「吸血動物の虫がその液体を吸って進化したモノ、それがタフィリィだ」
……その液体が無くなればタフィリィは無くなるのか?
「虫だけか? ヒルやコウモリではだめなのか?」
「刺激が強すぎるし、液体に飲み込まれて終わりだ」
「飲み込まれる?」
「例えるなら襲ってくる溶解液の進化版ってところかな。少し刺激を与えただけで襲い掛かってくるこわぁい液体」
「……そんな恐ろしいものがこの洞窟の奥に存在していたのか? ――って、ちょっと待て、シギュルージュに使っていると言うことは――」
「そう、君も飲み込まれてるんだよ」
「おい姉!?」
「大丈夫大丈夫。緑龍子を塗れば治るからねぇ」
いろいろ言いたいことはあるが……今は我慢することにする。その液体が無くなれば……と思っていたのだが、襲い掛かってくるとなると。吸引して回収したり、それを移動させたりすることも出来ないのかもしれない。
「待て。その液体はこの洞窟にどれだけ存在しているんだ。それを虫が吸うだけでタフィリィが出来てしまうなら、……タ、タフィリィたちは野放しなのか!?」
「そうだね、タフィリィは本来寄生しなくてもふつうに生きていけるから、ハエやトンボなんかと同じでそこら中を飛び回れる。でも彼等はヒトに寄生する。体内に入りたがるんだ。私たちが家を建てて住むのと同じように、彼らは住処を欲しているのかもね」
「液体は洞窟の最深部に存在してるからねぇ、そこには血を吸う虫はほとんどいないんだよぉ。もし発生しても洞窟の中で住処が見つかっちゃうからぁ、洞窟の外に出ることが珍しいんだよねぇ。まぁ、洞窟以外にも住処を作っちゃってるんだけどさぁ」
「それは屋敷のことか?」
「そ~。ここら一帯の森は、ほとんどすべてが國哦伐家の敷地だって知ってるよね~? だから人型は私達しかいないし、私以外のキョウダイ達は高校に通ってるわけだけど、まだ周囲にばらまくような段階じゃないんだよぉ」
「周囲にばらまく段階? そんな基準があるのか?」
「そう、だから始末されないように隠されているだろう。この洞窟にね」
増やす役目も隠す役目もある洞窟か。
「なるほど、確かに巣だな」
「世界中に広まっちゃったら手が付けられないんだろうねぇ」
「だが、どうして屋敷のタフィリィはビー玉みたいな透明な器に入っているんだ? さっきの奴は試験管も溶かして出ようとしていたし、初めて見る種類だった。屋敷の奴らはおとなしいし同じ見た目をしているだろう?」
「さっきも言った通り進化して形が変化しているのも理由の一つだけど、君が知る以上にタフィリィにはいろいろな種類があるんだ。私が知っている分だけでも八種類あるよ。もちろん容器を溶かせるように進化すれば彼らはすぐにでも自由になれるさ。でも、特殊な容器と液体に入れてあるから、彼等はあの中を心地良いと感じるらしい」
「いや、そうではなくて、タフィリィがなくとも奴らは森中を飛び回ってるんだろう? 皮膚を食い破って体外へ出てくるんだろう? タフィリィとはなんだ。なぜ閉じこめる。わざわざビー玉に入れる意味が分からん」
「効率よく運ぶためだよ。世界中に配ったら手が付けられなくなっちゃうから特定の組織だけに輸送しているんだ。タフィリィは依存性も高い上、人間――いや、我々化け物以上の力を手に入れるには手っ取り早い方法なんだ。売り捌いたら大量のお金が入ってくるからね」
「それにタフィリィ達の意志に関係なく自分の中に制限なく取り込めるからねぇ。まあ寄生されたら〝仲間達よ、もっと中に入っておいで〟状態になるから、一つ服用するだけでも効果は絶大だよぉ」
つまり一匹でも体内に入ってしまえば、その〝効果〟が現れてしまうと言うことか。
厄介だな。面倒過ぎる……。無理やり虫を取り込む方法もあれば、無理やり入り込んでくることもある、一匹で効果絶大となると一体どう対処すればいいんだ。対策のしようはあるのか?
いや、そもそも……
「タフィリィを一度服用してしまうと、その後服用した者をなおすことは出来ないのか……?」
「難しいね」
「黄泉ちゃん、助ける方法があるのかどうかも分からない相手を捕まえてどうする気なのかなぁ?」
「助けるに決まってるだろう」
どう助けるかは決まっていなくても、助けると言うことだけは決まっている。
「今まで見て見ぬふりをしてきたのにぃ、どうして急に助けなくなったの~?」
「……それは」
「矢地さんと何かがあったのかなぁ?」
「…………あの姿を見たことがきっかけだ」
「ふぅ~ん。そう言うことにしといてあげるよぉ」
「どう言う意味だ」
「実は見てたんだよねぇ。監視カメラでぇ」
「な、なな」
な、にい!! この姉は見られたくないことをいつも見てやがってこのこの!
「あははぁ。真っ赤になっちゃってか~わい~」
「何を見たのかな姉さん」
「お前には関係ないよねぇ」
「黄泉が変だ。何を見たんだい姉さん」
「お前ちょっと怖いぞぉ」
ちょっとじゃない。気付くのがおそいぞ姉よ。
三人で仲良くの~んびり歩いている時だった。前の枝分かれした道の一番左から、ぬちゃっと言う音とともにその辺りに影が差す。
「げ」
「あ」
「ひょぇ」
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