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アノン
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アライアがカプセルに閉じ込められていた部屋――ング・エンタ第六研究基地重要保管庫【H】にて、複数の研究者達がその上司によって責め立てられていた。
「ロックはかかっていたのか? このカプセルは外からしか開けられない、掛けていたなら誰かがロックを解除するしかない!」
「し、しかし、誰も入っていない筈です!」
「監視カメラは!」
「設置されていないので――」
「――カメラがないだと!?」
「実はその……まだ取り付けるか協議中でして。他の部屋の監視カメラも停電から調子が悪く、止まってしまっていたようで。業者も島の外から来ますし……」
「くそが!」
上司らしき男は傍にあった長机を蹴り倒す。
「し、しかし、成功体の身体の一部は切除してありますから!」
「そう言う問題じゃない、その一部がどれほどの期間持つと思ってるんだ、体内の物質をバシリに付けていたらその機能がなくなることは、もう、過去の研究で証明されているんだ。いくら成功体でも、バシリは未だ未知数だ、何よりあれは元に戻そうとする力が大きい物質、人間の状態に戻られてはただのバシリ漬けにされた人間の身体の一部に過ぎない、そんなものはすぐ手に入る!」
騒がしく廊下を走っている他の研究者や警備員に彼は「くまなく探せ!」と指示を出す。そうして、あることに気が付いた。
「待てよ? 扉が開いた形跡は残っていないんだったな? どうなんだ、扉からこの部屋に入った者はいないのか?」
「は、はい……」
「扉から侵入していないと言うことは……ほう。それに成功体が一人でに施設へやってきたと言うのも変な話だ。相手は子供で、赤ん坊の頃に攫われここの記憶もない筈。施設周辺や施設内の監視カメラには何か映っていないのか?」
「それが、施設内全てのブレーカーが落とされた際に電気系統を管理している機器が、故障してしまったようで監視カメラや一部機器が正常に動かなくなりまして」
「ブレーカーの前の記録は?」
「全て消えてしまっています」
「リカバリーは試したのか?」
「現在試しております。そろそろ結果が出るころだとは思うのですが」
ちょうどよく、通信を知らせる音色が鳴り、研究者の一人がそれに出て「リカバリー成功です」と上司に伝える。
「よし、こちらにモニターを出して映し出せ」
巨大なモニターが運び込まれ起動され、暗闇の部屋が明るく照らされる。
映像を見ていると。
施設内には研究者や警備員しか映っていないが、施設周辺に5人の子供の姿が映っていた。彼らは水門へと消えていく。
「なるほど、相手は複数人の子供グループか。その中に成功体が混じっていたと? どれが成功体だ?」
「は、はい、その紫の髪の――」
「――ふふふふふ、そうかそうか、子供か。ならば、扉を使わなかったのも頷ける」
紫の髪の子供を見つめ、恍惚とした笑みを浮かべる。研究者はその不気味な笑みにビクッと肩を震わせた。
「水路から侵入したなら、移動手段も狭い場所と言うことだ。まさにネズミだな」
上司はバッと左手を廊下に掲げ、廊下を騒がしく走る研究員や警備員達に言い放つ。
「通気口、ダクト類、水路を徹底的に調べ上げろ! 施設内や施設外の町中もくまなく探せ! 奴らの顔や背丈はこの映像で分かるだろう! 他施設の監視映像も回して人物照合を頼む! その親にも連絡を入れろ! ――……それから、エレベーターの近くで発見したと言っていたな?」
「は、はい」
「では、地上の方の施設にも連絡を入れて施設周辺と通気口、水路を確認するように指示を出せ!」
上司の研究者は、地上の施設を蔑むように、不気味な笑みを顔に浮かべた。
「向こうも成功体が逃げ出したと言えば、すぐにでも行動してくれるだろうさ」
「ロックはかかっていたのか? このカプセルは外からしか開けられない、掛けていたなら誰かがロックを解除するしかない!」
「し、しかし、誰も入っていない筈です!」
「監視カメラは!」
「設置されていないので――」
「――カメラがないだと!?」
「実はその……まだ取り付けるか協議中でして。他の部屋の監視カメラも停電から調子が悪く、止まってしまっていたようで。業者も島の外から来ますし……」
「くそが!」
上司らしき男は傍にあった長机を蹴り倒す。
「し、しかし、成功体の身体の一部は切除してありますから!」
「そう言う問題じゃない、その一部がどれほどの期間持つと思ってるんだ、体内の物質をバシリに付けていたらその機能がなくなることは、もう、過去の研究で証明されているんだ。いくら成功体でも、バシリは未だ未知数だ、何よりあれは元に戻そうとする力が大きい物質、人間の状態に戻られてはただのバシリ漬けにされた人間の身体の一部に過ぎない、そんなものはすぐ手に入る!」
騒がしく廊下を走っている他の研究者や警備員に彼は「くまなく探せ!」と指示を出す。そうして、あることに気が付いた。
「待てよ? 扉が開いた形跡は残っていないんだったな? どうなんだ、扉からこの部屋に入った者はいないのか?」
「は、はい……」
「扉から侵入していないと言うことは……ほう。それに成功体が一人でに施設へやってきたと言うのも変な話だ。相手は子供で、赤ん坊の頃に攫われここの記憶もない筈。施設周辺や施設内の監視カメラには何か映っていないのか?」
「それが、施設内全てのブレーカーが落とされた際に電気系統を管理している機器が、故障してしまったようで監視カメラや一部機器が正常に動かなくなりまして」
「ブレーカーの前の記録は?」
「全て消えてしまっています」
「リカバリーは試したのか?」
「現在試しております。そろそろ結果が出るころだとは思うのですが」
ちょうどよく、通信を知らせる音色が鳴り、研究者の一人がそれに出て「リカバリー成功です」と上司に伝える。
「よし、こちらにモニターを出して映し出せ」
巨大なモニターが運び込まれ起動され、暗闇の部屋が明るく照らされる。
映像を見ていると。
施設内には研究者や警備員しか映っていないが、施設周辺に5人の子供の姿が映っていた。彼らは水門へと消えていく。
「なるほど、相手は複数人の子供グループか。その中に成功体が混じっていたと? どれが成功体だ?」
「は、はい、その紫の髪の――」
「――ふふふふふ、そうかそうか、子供か。ならば、扉を使わなかったのも頷ける」
紫の髪の子供を見つめ、恍惚とした笑みを浮かべる。研究者はその不気味な笑みにビクッと肩を震わせた。
「水路から侵入したなら、移動手段も狭い場所と言うことだ。まさにネズミだな」
上司はバッと左手を廊下に掲げ、廊下を騒がしく走る研究員や警備員達に言い放つ。
「通気口、ダクト類、水路を徹底的に調べ上げろ! 施設内や施設外の町中もくまなく探せ! 奴らの顔や背丈はこの映像で分かるだろう! 他施設の監視映像も回して人物照合を頼む! その親にも連絡を入れろ! ――……それから、エレベーターの近くで発見したと言っていたな?」
「は、はい」
「では、地上の方の施設にも連絡を入れて施設周辺と通気口、水路を確認するように指示を出せ!」
上司の研究者は、地上の施設を蔑むように、不気味な笑みを顔に浮かべた。
「向こうも成功体が逃げ出したと言えば、すぐにでも行動してくれるだろうさ」
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