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アノン
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「知らせてくれてありがとう。君達も、見たいのは分かるが危険な機械だって多いんだ」
と、大人の人に、自分達がポンプを見たがっていたと解釈できる説教をされる。
「ご、ごめんなさい……?」
戸惑いつつも素直に謝り、全員で頭を下げれば、鉄柵の外へ連れていかれ、解放された。
「お前が知らせたのか!」
鉄柵の外に出されてすぐに、シェルビーが美少年に掴みかかる。
「何者なんだよ!」
麗土が問い掛けると、美少年は「アライア」と答えた。彼の名前だろう。
「あらいあ……? 聞いたことあるような……」
麗土が首を傾げると、美少年も首を傾げた。向がそれを聞いて言う。
「僕も聞いたことある」
「え?」
「手洗い、洗い物、アライグマ」
「違え!!」
ゴチンと頭を叩かれ、涙目になる向。
「いや、そうかも?」
「怪我するより兄ちゃんに暴力振るわれる時の方が痛い……」
「何だとコラ、まだ殴られたいのかコラ?」
「暴力横暴大反対~!」
「いつも思ってたけどそれ何なんだよ」
シェルビーは「ああもう! 今はこいつが邪魔したことについて話してんだろ!」と麗土と向の顎を掴み、美少年――アライアに二人の顔を向けさせる。
アライアは生意気にも彼らに冷たい視線を送っている。
「あともう少しで外に行けたのに、あなたのせいで見つかっちゃったのよ!」
「ひどいょぉ……!」
「何が目的なんだよ!」
ラヴィラ、エリティ、シェルビーがそう言えば、相手はふぅと、呆れるようにため息を吐いた。
「ポンプを見たいと言って侵入したと大人達に言ってあげたんだから感謝してほしいくらいだ」
アライアの偉そうな態度に、シェルビーが反論しようとした時、彼はやれやれと首を振ってから続けて言った。
「それからポンプは外へは繋がっていない」
みんなが呆ける中、シェルビーだけが「それはおかしい!」と声を荒げる。
「設計図は外に繋がっていると書かれてた!」
「設計図だと? どこで手に入れた」
「図書館で見たモノを描いたモノだ」
アライアはシェルビーの取り出した設計図の書かれた布を眺める。細かい処まで完璧で、これをこいつが……? とは思ったが口にはしなかった。
「これはこの施設の設計図じゃない。そもそもこれはユヤ穴が出来た頃の古い設計図じゃないか。何百年も昔のモノだぞ。それに昔以上に水を再利用する技術も発展しているんだ。ポンプで下水を地上に戻す手間なんかとうの昔に捨ててるんだよ。上水は地上から供給されているしな」
「だが上水も使用すればやがて下水になる! この地下が水一杯になるじゃないか!」
「いいか、もう何年も前からその方法で動かしてきたんだぞ。でも水は溢れていないだろ」
「なら水は何処に消えてるんだよ!」
アライアはフッとバカにしたように笑って答える。
「この地下都市と、地上へ続く煙突の中だ。御存じの通り地下都市は熱を溜めこんでいる。膨大なエネルギーになるからだ。この施設以外にろ過施設も存在する。それなりに綺麗にしてから地上へ戻す。焼却炉と併用していらなくなった水は蒸発させて地上の施設へ水滴が付き、巨大な受け皿に溜まるような仕組みになっている。つまり下水は火力発電に活用されている。余った水は上水・アメとして地下都市に供給している。さらに地下都市内は熱がいっぱいになって寒くない。そういう仕組みだ」
「熱すぎだわ!」
とシェルビーが言うと、麗土が続けて言った。
「お前はどうしてそんなことを知っているんだ!」
「それが本当に正しい情報だと言えるのか!」
「俺達が入ろうとしていたポンプだって存在しているじゃないか!」
麗土とシェルビーが交互に言って彼に迫ると、彼は努めて冷静に言った。
「この施設以外にろ過施設があると言ったんだぞ。ろ過施設へ向かうポンプは他の場所にある」
二人は、それが? という顔をする。彼はカッと目を見開いて言い放った。
「ならさっきのポンプが向かう先は濃縮槽や脱水機だけだろう! あのポンプは濃縮槽と脱水機へとつながっているんだ! そしてその先は焼却炉だ! そんなものに侵入して外に出る!? 灰になって外に出たいのなら勝手にしろ!」
みんなが呆気に取られ、黙り込んでから、向が言った。
「あの、助けてくれて、ありがとう」
アライアは向に柔らかい微笑みを向ける、向は照れるように顔を背けた。それを見つつ、シェルビーは戸惑いながら言った。
「で、でも待ってくれ、その燃やしたゴミは何処にいってるんだよ。それこそ地下都市に溜まるじゃないか」
「地上へ運ばれる。他にも匂いを取ってから肥料の原料にされて地上施設内の畑で地下都市に配給される野菜や果物を作って貰ってる。以上だ」
「じゃあ下水からじゃなくて町から出るゴミは何処に行ってるんだ?」
「中央の施設に運ばれているらしい。ゴミは中央から外に運び出されているのかも」
「なんでわざわざそんな方法をとるんだ? ゴミは全部ポンプで地上へ押し流した方が楽だろ?」
「詰まるだろ」
バカなのか? と言いたそうな目でシェルビーが見られて、麗土はバカだからなと答えたくなった。
「あ、ああ。そっか」
シェルビーは納得しつつ、アライアの話に耳を傾ける。
「それにエネルギーも食うし。おそらく泥はベルトコンベア、町から出るゴミはエレベーターで運んでるんだろう」
それを聞いて、ラヴィラが顔をぱあっと明るくして言った。
「じゃあベルトコンベアに侵入すれば……!」
「だから、ちゃんと考えてから行動してくれ。運ばれた先がまた焼却炉だったらどうするんだ? 運ばれている最中に撹拌される仕組みだったら? まず地上に続くベルトコンベアなら万が一故障が起きても大丈夫なように複数あるかもしれないし、故障した際にすぐ修理できるよう監視もしているだろうし仲介所があってもおかしくはない。もし性能が良くて何もなく無事地上へ運ばれたとしても、何かしらの施設であることは明白だ。とにかく作業員に見つかって送り返されて親が責任とらされて終わりだな」
みんなが黙り込んで落ち込んでいると、さらにたたみかけられる。
「地下都市から出るゴミほとんど再利用されている。だからゴミも人の手でエレベーターに乗せて運べるレベルかもしれない。本気で逃げ出したいなら、もっと情報を集めてからじゃないと」
ん? あれ? とシェルビーはアライアの顔を見る。
外に出ることについては責めてこない?
と、大人の人に、自分達がポンプを見たがっていたと解釈できる説教をされる。
「ご、ごめんなさい……?」
戸惑いつつも素直に謝り、全員で頭を下げれば、鉄柵の外へ連れていかれ、解放された。
「お前が知らせたのか!」
鉄柵の外に出されてすぐに、シェルビーが美少年に掴みかかる。
「何者なんだよ!」
麗土が問い掛けると、美少年は「アライア」と答えた。彼の名前だろう。
「あらいあ……? 聞いたことあるような……」
麗土が首を傾げると、美少年も首を傾げた。向がそれを聞いて言う。
「僕も聞いたことある」
「え?」
「手洗い、洗い物、アライグマ」
「違え!!」
ゴチンと頭を叩かれ、涙目になる向。
「いや、そうかも?」
「怪我するより兄ちゃんに暴力振るわれる時の方が痛い……」
「何だとコラ、まだ殴られたいのかコラ?」
「暴力横暴大反対~!」
「いつも思ってたけどそれ何なんだよ」
シェルビーは「ああもう! 今はこいつが邪魔したことについて話してんだろ!」と麗土と向の顎を掴み、美少年――アライアに二人の顔を向けさせる。
アライアは生意気にも彼らに冷たい視線を送っている。
「あともう少しで外に行けたのに、あなたのせいで見つかっちゃったのよ!」
「ひどいょぉ……!」
「何が目的なんだよ!」
ラヴィラ、エリティ、シェルビーがそう言えば、相手はふぅと、呆れるようにため息を吐いた。
「ポンプを見たいと言って侵入したと大人達に言ってあげたんだから感謝してほしいくらいだ」
アライアの偉そうな態度に、シェルビーが反論しようとした時、彼はやれやれと首を振ってから続けて言った。
「それからポンプは外へは繋がっていない」
みんなが呆ける中、シェルビーだけが「それはおかしい!」と声を荒げる。
「設計図は外に繋がっていると書かれてた!」
「設計図だと? どこで手に入れた」
「図書館で見たモノを描いたモノだ」
アライアはシェルビーの取り出した設計図の書かれた布を眺める。細かい処まで完璧で、これをこいつが……? とは思ったが口にはしなかった。
「これはこの施設の設計図じゃない。そもそもこれはユヤ穴が出来た頃の古い設計図じゃないか。何百年も昔のモノだぞ。それに昔以上に水を再利用する技術も発展しているんだ。ポンプで下水を地上に戻す手間なんかとうの昔に捨ててるんだよ。上水は地上から供給されているしな」
「だが上水も使用すればやがて下水になる! この地下が水一杯になるじゃないか!」
「いいか、もう何年も前からその方法で動かしてきたんだぞ。でも水は溢れていないだろ」
「なら水は何処に消えてるんだよ!」
アライアはフッとバカにしたように笑って答える。
「この地下都市と、地上へ続く煙突の中だ。御存じの通り地下都市は熱を溜めこんでいる。膨大なエネルギーになるからだ。この施設以外にろ過施設も存在する。それなりに綺麗にしてから地上へ戻す。焼却炉と併用していらなくなった水は蒸発させて地上の施設へ水滴が付き、巨大な受け皿に溜まるような仕組みになっている。つまり下水は火力発電に活用されている。余った水は上水・アメとして地下都市に供給している。さらに地下都市内は熱がいっぱいになって寒くない。そういう仕組みだ」
「熱すぎだわ!」
とシェルビーが言うと、麗土が続けて言った。
「お前はどうしてそんなことを知っているんだ!」
「それが本当に正しい情報だと言えるのか!」
「俺達が入ろうとしていたポンプだって存在しているじゃないか!」
麗土とシェルビーが交互に言って彼に迫ると、彼は努めて冷静に言った。
「この施設以外にろ過施設があると言ったんだぞ。ろ過施設へ向かうポンプは他の場所にある」
二人は、それが? という顔をする。彼はカッと目を見開いて言い放った。
「ならさっきのポンプが向かう先は濃縮槽や脱水機だけだろう! あのポンプは濃縮槽と脱水機へとつながっているんだ! そしてその先は焼却炉だ! そんなものに侵入して外に出る!? 灰になって外に出たいのなら勝手にしろ!」
みんなが呆気に取られ、黙り込んでから、向が言った。
「あの、助けてくれて、ありがとう」
アライアは向に柔らかい微笑みを向ける、向は照れるように顔を背けた。それを見つつ、シェルビーは戸惑いながら言った。
「で、でも待ってくれ、その燃やしたゴミは何処にいってるんだよ。それこそ地下都市に溜まるじゃないか」
「地上へ運ばれる。他にも匂いを取ってから肥料の原料にされて地上施設内の畑で地下都市に配給される野菜や果物を作って貰ってる。以上だ」
「じゃあ下水からじゃなくて町から出るゴミは何処に行ってるんだ?」
「中央の施設に運ばれているらしい。ゴミは中央から外に運び出されているのかも」
「なんでわざわざそんな方法をとるんだ? ゴミは全部ポンプで地上へ押し流した方が楽だろ?」
「詰まるだろ」
バカなのか? と言いたそうな目でシェルビーが見られて、麗土はバカだからなと答えたくなった。
「あ、ああ。そっか」
シェルビーは納得しつつ、アライアの話に耳を傾ける。
「それにエネルギーも食うし。おそらく泥はベルトコンベア、町から出るゴミはエレベーターで運んでるんだろう」
それを聞いて、ラヴィラが顔をぱあっと明るくして言った。
「じゃあベルトコンベアに侵入すれば……!」
「だから、ちゃんと考えてから行動してくれ。運ばれた先がまた焼却炉だったらどうするんだ? 運ばれている最中に撹拌される仕組みだったら? まず地上に続くベルトコンベアなら万が一故障が起きても大丈夫なように複数あるかもしれないし、故障した際にすぐ修理できるよう監視もしているだろうし仲介所があってもおかしくはない。もし性能が良くて何もなく無事地上へ運ばれたとしても、何かしらの施設であることは明白だ。とにかく作業員に見つかって送り返されて親が責任とらされて終わりだな」
みんなが黙り込んで落ち込んでいると、さらにたたみかけられる。
「地下都市から出るゴミほとんど再利用されている。だからゴミも人の手でエレベーターに乗せて運べるレベルかもしれない。本気で逃げ出したいなら、もっと情報を集めてからじゃないと」
ん? あれ? とシェルビーはアライアの顔を見る。
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