転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第十一章

237話 第9層ソーサン

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 俺達は四皇級階の者が住む屋敷がある階層、第9層ソーサンへ着いた。
屋敷は白い森の中に3つ建っており、中でも吸血鬼の配下が多いイーハの屋敷が一番大きい。

「ヴァントリア様、久しぶりだね」
「イーハ」

 階層を移動しただけでもう夕方だ。実はこのソーサンに来るまでに本軸のエレベーターを使っていない。何故ならシストに知られたくないから。いや、まあ主従契約で居場所が知られてるんだけど、でも、それでも、ゲームでは本軸のエレベーターに乗ると追っ手が増えるからどうしても乗りたくないんだよ!!
 その話をウォルズにしたら「分かる~」と頷いてくれた。
 そう言うわけで遠回りしたせいで夕方になってしまった。
 その日はイーハの屋敷で休ませてもらうことになった。
 部屋につき風呂に入った後、食事を取る。歯を磨いて――いつもここは省くんだが、ロベスティゥに磨かれたので言っておく――真っ先に俺を抱きしめながら寝に来たロベスティゥに引くディスゲル兄様。

「シストだけじゃなかったのか。サイオン兄さんってまともだったのかもしれない……」
「聞こえているぞディスゲル。キサマのそう言うところが可愛くない。サイオンがまともなわけあるか」

 え、そこ?

「あ、でも、ロベスティゥ。サイオンもメルカデォと奴隷制度の廃止に納得してシストを説得してくれたんだ」
「あのサイオンがか?」
「うん」
「そうか……。シストも説得させられたようだし、妙だな」
「いや、ヴァントリアが頼めば一発だろう?」
「なぜだ?」
「え、知らなかったのかロベスティゥ兄さん」
「何の話だ?」
「ええええ。ロベスティゥ兄さんってもっと鋭い人かと思ってた……いや、オレの奴隷解放運動のことも知ってたし鋭いではあるのか?」

 何の話だろう。

「それで、どうしてなんだ」
「シストはヴァントリアのこと大好きだから」
「どこがだ。少しも可愛がっていなかったではないか」

 そうだそうだ!

「それ兄さんが言うのか?」
「ワタシは可愛がっていた、この子のためなら何だってしたぞ」
「え?」

 不思議そうにするディスゲル兄様に教えてあげる。

「主従契約結んでるんだってさ」
「だってさ?」
「俺、ちょっと記憶が曖昧で……」
「え!? 大丈夫なのか!?」

 心配そうにしてくるディスゲル兄様を見ると申し訳なくなる。本当はただ転生しただけなんだ……ごめんディスゲル兄様。

「うん、結構前からこうだから大丈夫。思い出そうとすれば大抵思い出せるしな」
「そ、そうか」
「だからロベスティゥのことも知らなくてさ。悪者扱いしちゃった」
「いや、あれは勘違いするだろ誰でも」
「そう言うところだぞディスゲル」

 地獄耳か。って言うか暑苦しいからひっついてくるな。無理か、今の俺はこいつの抱き枕なんだから。

「…………まあ、兄さんが味方って知って嬉しいよ」

 ディスゲル兄様は続けてボソリとつぶやく。

「一番厄介そうだったし……」
「聞こえているぞディスゲル。もういいからキサマもこっちへ来い」
「え?」
「ヴァントリアの抱き心地を知ればキサマも不眠になる」
「なりたくないんだけど!? 」
「だがこの快眠を知らずに一生を終えるなど可哀想だと思うぞ」
「そこまで言われると気になるんだよな……」

 そう言いながらベッドに上がってきて、ロベスティゥと反対側に周り、よっこいせと抱っこしてくる。

「ヴァントリアオマエぇ……」
「な、何だよ」
「オマエは異常すぎる。贅肉め」
「酷い! そんなに言うなら離せ!」
「いやに決まってるだろう?」
「真顔やめて!」

 何故かそのまま3人で寝ることになってしまった。ジノもイルエラも微妙な顔してたけどウォルズなんか床に座って拝んでた。因みにコゲテルは椅子に座って寝ています。エレベーター移動中もずっと寝てましたが、みんなが歩き出すとテケテケついてきて可愛かったです。
 ヒオゥネってばいいプレゼントするよな、癒された~。


 翌朝。寝苦しかったせいか早起きできて、二人の腕から這い出る。
 屋敷の一階に降り、廊下でイーハと出会う。

「どこに行くんだ? 食堂はこっちだ」
「広くて迷子になる……」

 昨日もご馳走してくれたのにいいんだろうか。そう思っていたら、イーハが「そうだ」と立ち止まり、向き直ってくる。

「ルーハンが会いたがっていたよ」
「ルーハンが会いにきたのか?」
「うん。ナキューシオで別れてからすぐね」

 そう言えば一層下はルーハンの屋敷がある階層ゴードンだったな。

「俺もルーハンに会いたかったな、ちゃんと話してみたいし」
「ウロボスの王宮で待っていると思うよ」
「そっか、楽しみだな」

 食堂でみんな待っていたらしく、昨日はどうだったとウォルズに聞かれ、寝苦しかったとだけ答えた。その原因の二人は置いてきたと言えば、彼は「寝顔チャンス!」と飛び出していく。
 食事を取った後は、四皇級階であるマアス・グリフォンの屋敷へ向かうために準備をする。
 その後、支度が済んだと言う皆と共に、マアス・グリフォンの屋敷へ向かった。
 彼はサイオンの母シエルバ・グリフォンの親戚だ。サイオンが望むメルカデォと奴隷制度の廃止には協力するだろう。

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