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第九章
205話 イベント発生!
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ヴァントリア達が逃げようとしていたそこへ、ディスゲルとダンデシュリンガーも駆けつける。
ディスゲルは弟を発見してから、気付いた。
奴隷達の姿がない!? 仲間達とは集まっているように見えるが……。
「まさか、奴隷達を囮にして……」
ディスゲルは仲間と連絡を取るため、その場から離れる。
「あれ、ディスゲル様!? どこに……!?」
ディスゲルは見当たらず、赤い髪、赤い瞳の青年に振り返る。
「くっ、やはりあの女はヴァントリア様だったか、よくも、よくも俺のエルデちゃんを……! 男のくせにいいいい!」
階段へ走り、それを登って彼等を追いかけようとするが、階段は消えてなくなり、ダンデシュリンガーは地面へ向かって落ちていく。
空中でくるりと回転し、見事に着地し、階層の天井を見上げた。
「あの階段は一体……。どうやって出現させたんだ」
.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+
階段を上がった後、両腕を空に突き上げる。
「ついたー! 40層ゴーシェタルト!」
亜人と少しの獣人が住む、賑やかな町に心を躍らせるが、それは一瞬のことで、なんだか嫌な感じがする。
路地裏に身を隠すと、更に不安と吐き気が押し寄せた。
「大丈夫か? ヴァン」
イルエラに心配され、「大丈夫だ」と笑う。
そこかしこ亜人だらけで、亜人か獣人のフリをした方がいいかもと言う話になり、作戦を考えた時から用意して貰っていたテイガイアの作った薬がみんなに配られた。
薬を飲めば、自分達の頭には耳が生える。いわゆるケモミミというやつか。ウォルズが目を輝かせながら俺のケモミミを触ってくる。
「オオカミだぁ、かわいい~」
「ウォルズは猫か、ベタだな」
でもかわいいかも。
ジノはウサギで、イルエラはヤギ、テイガイアは犬でラルフは…………なんだ? え、ネズミかな?
「見事に全員獣人だな」
「ゴーシェタルトって亜人が多いよね」
ウォルズに言われ、大通りを見ると本当に亜人だらけだった。人が住んでいるのか、と言うくらい多い。
そう思った矢先、路地裏に入ってきた人間の子供を発見する。その女の子に亜人が多いことについて聞こうと話しかけようとすれば、喚き散らし逃げていくではないか。それには皆も戸惑う。獣人が珍しかったのか? 珍しくはないと思うが。
何が起きてるんだ。
そう考えた一瞬――脳裏に見たことがない映像が浮かぶ。この路地裏に変なモノが増えていた気がしたのだ。逆に、この路地裏には何か足りない気さえする。
血痕付きの、恐ろしい映像だった。
前世のゲームの記憶かと思い、ウォルズへ振り向くが、彼も気分が悪そうだった。
なんだ、今の……。
ヴァントリアの記憶か? ゲームの記憶かもしれないし、ウォルズに後で聞いてみよう.
路地裏から出て町を歩いて回っていると、ビレストと兵士の姿を発見して路地裏に隠れる。ビレストもだが、兵士もかなりの数が出払っているようだ。
「流石に一層上に移動しただけじゃ逃げ切れないか……。逃げて来た時のために配備されてたんだろうね」
ウォルズの言葉を聞きつつ、エレベーター付近を確認しに行く。
サイオンと一緒に、エルデやダンデシュリンガーなどのビレストがやって来ているらしい。
シストとの主従関係で居場所がわかるようになってしまって逃げるにも逃げられないようだった。
エレベーターから離れ、俺達は路地裏をこれからどうするか話し合いながら移動する。
ある店の前に出た時だった、目の前に突然1匹の犬が現れて吠えては何度も大通りへ出ようとして戻るを繰り返す。
「ウォ、ウォルズ! これって……!」
「きっとそうだ! 行こうヴァントリア!」
手を引っ張られ、犬のあとを追いかける。すると、路地裏で獣人の幼い少女が大人の亜人達複数人に囲まれて襲われていた。ウォルズはあっという間にそいつらを倒し、彼等は気絶から目が覚めると悲鳴をあげて逃げていった。
おお! まさにゲームの中で起きたイベントだ! ってよく考えたら今タイミング悪くないか!?
兵士が騒ぎを聞きつけ、何事だとこちらへ走ってくるのが見える。
「やっべえ! 隠れろ!」
全員で店の裏に隠れると、兵士達はその場にいた女の子に「何かあったのか」と尋ねる。
「ヤックと遊んでいただけです。騒いでしまってすみませんでした」
「そうか。まあ周りも騒がしいからな。……亜人の大人達が逃げていったように見えたが」
「いじめられそうになってたところを、ヤックが助けてくれたんです。犬は怖かったみたい」
「そう言う大人もいるか……次もそうとはいかないから気をつけるんだぞ。赤い瞳と赤い髪の男を見つけたら教えてくれ」
兵士達はそう淡々と告げると、去っていく。女の子は手を振っていた。女の子は俺達のところへやって来て、頭を下げる。
「助けてくれてありがとうございます」
お礼を言われ、テイガイアが前屈みになって少女に教える。
「君のワンコロが知らせてくれたんだ」
わんころ?
「ヤック、ありがとう! さすが私の夫ね!」
「お、夫?」
ジノが驚いているので、「獣人は動物とも結婚できるんだ」
と耳打ちして教えてやる。
「変なの」
と、ジノがぽそりと呟くと、犬の獣人らしい彼女の耳がぴくりと動く。
「変じゃない!」
「地獄耳かよ」
耳付いてるからな。
ディスゲルは弟を発見してから、気付いた。
奴隷達の姿がない!? 仲間達とは集まっているように見えるが……。
「まさか、奴隷達を囮にして……」
ディスゲルは仲間と連絡を取るため、その場から離れる。
「あれ、ディスゲル様!? どこに……!?」
ディスゲルは見当たらず、赤い髪、赤い瞳の青年に振り返る。
「くっ、やはりあの女はヴァントリア様だったか、よくも、よくも俺のエルデちゃんを……! 男のくせにいいいい!」
階段へ走り、それを登って彼等を追いかけようとするが、階段は消えてなくなり、ダンデシュリンガーは地面へ向かって落ちていく。
空中でくるりと回転し、見事に着地し、階層の天井を見上げた。
「あの階段は一体……。どうやって出現させたんだ」
.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+
階段を上がった後、両腕を空に突き上げる。
「ついたー! 40層ゴーシェタルト!」
亜人と少しの獣人が住む、賑やかな町に心を躍らせるが、それは一瞬のことで、なんだか嫌な感じがする。
路地裏に身を隠すと、更に不安と吐き気が押し寄せた。
「大丈夫か? ヴァン」
イルエラに心配され、「大丈夫だ」と笑う。
そこかしこ亜人だらけで、亜人か獣人のフリをした方がいいかもと言う話になり、作戦を考えた時から用意して貰っていたテイガイアの作った薬がみんなに配られた。
薬を飲めば、自分達の頭には耳が生える。いわゆるケモミミというやつか。ウォルズが目を輝かせながら俺のケモミミを触ってくる。
「オオカミだぁ、かわいい~」
「ウォルズは猫か、ベタだな」
でもかわいいかも。
ジノはウサギで、イルエラはヤギ、テイガイアは犬でラルフは…………なんだ? え、ネズミかな?
「見事に全員獣人だな」
「ゴーシェタルトって亜人が多いよね」
ウォルズに言われ、大通りを見ると本当に亜人だらけだった。人が住んでいるのか、と言うくらい多い。
そう思った矢先、路地裏に入ってきた人間の子供を発見する。その女の子に亜人が多いことについて聞こうと話しかけようとすれば、喚き散らし逃げていくではないか。それには皆も戸惑う。獣人が珍しかったのか? 珍しくはないと思うが。
何が起きてるんだ。
そう考えた一瞬――脳裏に見たことがない映像が浮かぶ。この路地裏に変なモノが増えていた気がしたのだ。逆に、この路地裏には何か足りない気さえする。
血痕付きの、恐ろしい映像だった。
前世のゲームの記憶かと思い、ウォルズへ振り向くが、彼も気分が悪そうだった。
なんだ、今の……。
ヴァントリアの記憶か? ゲームの記憶かもしれないし、ウォルズに後で聞いてみよう.
路地裏から出て町を歩いて回っていると、ビレストと兵士の姿を発見して路地裏に隠れる。ビレストもだが、兵士もかなりの数が出払っているようだ。
「流石に一層上に移動しただけじゃ逃げ切れないか……。逃げて来た時のために配備されてたんだろうね」
ウォルズの言葉を聞きつつ、エレベーター付近を確認しに行く。
サイオンと一緒に、エルデやダンデシュリンガーなどのビレストがやって来ているらしい。
シストとの主従関係で居場所がわかるようになってしまって逃げるにも逃げられないようだった。
エレベーターから離れ、俺達は路地裏をこれからどうするか話し合いながら移動する。
ある店の前に出た時だった、目の前に突然1匹の犬が現れて吠えては何度も大通りへ出ようとして戻るを繰り返す。
「ウォ、ウォルズ! これって……!」
「きっとそうだ! 行こうヴァントリア!」
手を引っ張られ、犬のあとを追いかける。すると、路地裏で獣人の幼い少女が大人の亜人達複数人に囲まれて襲われていた。ウォルズはあっという間にそいつらを倒し、彼等は気絶から目が覚めると悲鳴をあげて逃げていった。
おお! まさにゲームの中で起きたイベントだ! ってよく考えたら今タイミング悪くないか!?
兵士が騒ぎを聞きつけ、何事だとこちらへ走ってくるのが見える。
「やっべえ! 隠れろ!」
全員で店の裏に隠れると、兵士達はその場にいた女の子に「何かあったのか」と尋ねる。
「ヤックと遊んでいただけです。騒いでしまってすみませんでした」
「そうか。まあ周りも騒がしいからな。……亜人の大人達が逃げていったように見えたが」
「いじめられそうになってたところを、ヤックが助けてくれたんです。犬は怖かったみたい」
「そう言う大人もいるか……次もそうとはいかないから気をつけるんだぞ。赤い瞳と赤い髪の男を見つけたら教えてくれ」
兵士達はそう淡々と告げると、去っていく。女の子は手を振っていた。女の子は俺達のところへやって来て、頭を下げる。
「助けてくれてありがとうございます」
お礼を言われ、テイガイアが前屈みになって少女に教える。
「君のワンコロが知らせてくれたんだ」
わんころ?
「ヤック、ありがとう! さすが私の夫ね!」
「お、夫?」
ジノが驚いているので、「獣人は動物とも結婚できるんだ」
と耳打ちして教えてやる。
「変なの」
と、ジノがぽそりと呟くと、犬の獣人らしい彼女の耳がぴくりと動く。
「変じゃない!」
「地獄耳かよ」
耳付いてるからな。
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