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第三章
39話 ラルバンのマーシー
しおりを挟む紹介された宿屋の下の酒場にてウォルズとジノとイルエラとヒュウヲウンでご飯を食べることになった。
ジノは食い漁るがイルエラは手を付けない。
それを見かねたウォルズが「どうしたんだい」とイルエラに話し掛ける。
「これは食べ物なのか」
「ああ、君が今まで食べて来たのは亜人で出来た餌だもんねぇ」
とウォルズが言い出して、イルエラはシーン。
——お前は何を言い出してるんだああああああッ!?
どうしてそうデリカシーがない時のとんでも発言を制御出来ないんだお前は! そのけろっとした表情やめろ!
そう言えば誰に対しても優しいけど「ダサい服だね」とか「今日かわいくないね」とか「俺そう言うの興味ないからパス」とか言っちゃいけないような事をたまに投下してくるんだ晴兄は!
余計手を付けなくなってしまったイルエラに「う、うまいぞ!」と自分のフォークを差し出しすと。
ウォルズが「あーんキタコレ! 録画録画!」と何やら漁っている。ないだろ録画するものなんか。
「ほら、食べてみろ」
「…………」
イルエラの喉がごくりと動く。其の儘黙ってパクリ。すると、目を見開いて呟いた。
「うまい。」
「おお、もっと食え食え」
と俺のフォークで食わせていったが、正に餌付けの絵面だな。
しかし雛鳥みたいにパクパク食べて顔を綻ばせる様は普段の彼とは一風違っていて可愛らしい。
そんな時だ、隣から殺気を感じたのは。イルエラと俺の仲睦まじい様を見て美しい踊り子様が鋭い視線を送ってきている。
そ、そうだな。この役目は君だよな。
野獣のような目からそっと目を逸らそうとすると。
「ヴァ、ヴァントリア! それじゃ食べれないでしょ、ど、どうぞ」
てっきりイルエラに差し出されるだろうと思っていたフォークに刺された飯を、真逆毒入りじゃ——と考えて、その先を考えるのをやめた。彼女ならあり得るからだ。
「……いや、いいよ。」
「はがぐぅっ」
ヒュウヲウンは背後から攻撃を受けたかのようにのたうち回りやがて机に伏した。やはり毒入りだったか。
今度はウォルズが「あーん」と差し出してくる。此奴も此奴で何か入れてそうだな。
「いらねえ」
「あはぁ、可愛いヴァントリア♡」
お前はどのヴァントリアなら可愛くないんだよ。
「ほら」
今度はジノが差し出してきた。
えっと……この場合、ジノさんは俺にあーんすることが普通のことだと認識していると思ってもいいのだろう。
「さっさと食べろよ。手が疲れる」
まあジノなら変なものは……入れない、筈。いやしかし一番の危険人物は彼じゃないか、彼はヴァントリアをゲームの世界で殺害した張本人だぞ。
「……オイ。さっさと食え」
しかしヒュウヲウンの狩人の目よりウォルズの変態より怖い表情と声音でそう言われれば食べるしかあるまい。
恐る恐る口に含めば、目の前の顔が歪められる。お前はどのヴァントリアが正解なんだ。
そんなこんなでわちゃわちゃウォルズの奢り飯を楽しんでいた時だ、たった今店に入ってきた客を見てヒュウヲウンの表情が固まった。
彼女の視線を追って彼等の姿を確認する。
先刻ヒュウヲウンを襲った男とその他にも柄の悪い男が数人やって来て、店内が余計に騒がしくなる。
さらに兵士迄やって来て、ウォルズに相談して俺達は二階に移動した。
てっきりウォルズもついて来ると思ったが、ウォルズは残ると言う。
彼の視線の先には先刻の柄の悪い男達。
名の知れた男達のようでラルバンのマーシーと呼ばれていた。
ゲームで言うラルバンとは確か、人攫いの集まり——組織の名前だ。
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