転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

第二章

11話 45層ヅォルイ

　突然、身体がふわりと浮いた感覚がした。またジノに引っ張られたのかと思ったが、自分の目の前に先刻までの白い景色がなく、博士もジノもいない。

　目前は完全な闇だった。

「ここは一体」

　何が起きたんだ。

　自分が檻の中にいて、拘束されていることに気が付き、ハッとする。拘束と言っても荊棘が身体に絡み付いているだけだが、かなりキツく縛られていて身動きが取れない。

　目前は闇だが、遙か遠くに灯りが付いているのはわかる。

　そこへ、何かがやってくる気配がした。

　底冷えのするその気配を感じるだけで、自分の身体とは思えないくらいガタガタと震えだし、その感覚に酷い吐き気を覚えた。

　見えないその姿に闇そのものに話しかけられているような感覚がする。

「誰だ」といえば、その誰かは何も答えず、何にも触れずに檻の扉を開けた。

　拘束が一瞬で解かれる。

　ポカンとしていると、その誰かの気配は消えていた。

　灯りが瞬き、そちらを見ると、黒い影が。

「待て、どうして逃す、ここはどこだ」

　と追いかけるが、その後ろ姿はどんどん遠くなり、追い付けそうにない。

　その時だった。

　姿は遠くにあるのに、声だけが頭の中に響いた。

　――――最下級階45層。

　その言葉を聞いて、ゾッとする。

　ゲームでは謎に包まれたままの階。主人公さえもまだ行ったことがない、入り口も出口もない謎の監獄。入れば二度と出られないと言われた監獄だった。

　入り口ではないが、本軸は繋がっている。しかし王族の指輪でもエレベーターはここにはやってこないのだ。

　ヴァントリアが命を落とした場所、45層ヅォルイ。

　何が起きたのかちんぷんかんぷんだが、取り敢えずこの状況がピンチであることは確かだろう。