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第一章

4話 ①

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 次の日。食事をとらない俺を心配するジュレア――また勝手に準備していた――と、サイフェン、コゴと共に学校へ向かう。
 アインとは相変わらず話さず、ザイドには喧嘩したいよオーラを放っておいた。アインに関してはオロクに言われたとおりにしていると言うよりは、仲直りする必要性を感じていない。
 まあ前世から優等生とは馬が合わなかったし、アインもそうだと思えばいい。癒しはルシフェルがいるし、気にすることでもない。
 教室に着くと、チヨ・アキヅキに好意を持つ勢がせんやを囲んでいた。
 せんやは俺と目が合うと駆け寄って来て、背に隠れる。
「は、はやくみんなの魔法解いてくれよ」
「誰でもかんでも魅了したお前が悪い。しばらく反省しやがれ」
「モテモテなのは嬉しいから反省にはならないよ?」
「この野郎……」
 睨み付けていたら潤んだ目で見つめてくる。やめろ、変な雰囲気出すな。チヨ・アキヅキに好意を持つ勢の視線が痛い。こう考えると、すぐに掴みかかってくるルシフェルは非常に素直な性格だったんだな。
「ルッシ~」
「な、何だよ」
 せんやから離れ、ころっと表情を変えれば、ルシフェルが引き気味に構える。
「あんまり近づかないでくれよ。お前の友達怖いし」
「俺に命令すんじゃねえ」
 笑顔でそう言えば、ルシフェルは顔を逸らしてから涙を流す。
「横暴……」
「ルッシー、保健室の先生の顔見た?」
「見たけど……ってあの時お前いたよな?」
「声だけ聞いて帰ったから顔見てねえ」
 声は脳に響くようなイケボだった。なあんか聞き覚えあるんだよな。ゲームで聞いたことあるとか?
「なんで気にしてるんだ?」
「チョコ渡しに保健室行こうと思ってな」
「なんで?」
「世話になっただろ」
「お前は世話になってないだろ。って言うかチョコ全部配ったんじゃなかったか?」
「うん、だから市販のチョコ」
「あのうまさを知れないとは可哀そうに……」
「最近体調も悪いし」
「え? そうなのか?」
 日差しがきついんだよな。吸血鬼だからか知らないが。
 前まで平気だったのに、なんかだんだんと苦しくなってきた。おそらく研究室から薬が出ているはず。先生のほとんどが俺のこと吸血鬼だって知ってるみたいだし、保健室なら研究室より近いしめんどうくさくても取りに行ける。薬を取りにくることを交渉する予定である。
 薬のおかげか血も偶に飲ませてもらうくらいでいい。薬は必要だ。それにシロくんに悪いからな。なんなら保健室の先生に飲ましてもらえばよくね?
「あの……顔がゲスイんですけど」
「いいこと思いついちゃってさ~」
 保健室の先生は前世で精神面まで支えてくれようとしていた。つまり、喧嘩したくなったら先生に相手してもらえばいいんだあ! 俺天才!
「あ~昼休みが楽しみ~」
「おいクソ師匠。保健室の先生は顔がいいって有名だぞ。お前まさかそれ目当てで……」
「リリアくん、アキヅキ先生ともただならぬ関係みたいだし、別のクラスの生徒もいつの間にかメロメロにしちゃうし心配だよ……」
「リリアちゃん、ベッドのある部屋で男と一緒とかふざけてんの?」
「いや、それを言うとサイフェンとは毎晩一緒……」
「「サイフェン?」」
 サイフェンは睨み付けられてもにこやかだ。びくびくしていた頃が懐かしい。
「え、何? ルームメイトなんだから仕方なくない?」
「「ルームメイトが一番うぜえ!!」」
 今日は昼休みが終わると、5・6時間目は実技の授業だ。実技の授業とは魔法の授業。魔法の使えない俺には暇すぎる授業である! いつも暇ではあるけど、魔法を無効化してしまうため生徒の周りから離れなくてはならない。友達とも話せないし相当暇なのである!
「……そうだザイド! 実技では俺と組もうぜ!」
 喧嘩しよ、喧嘩! 喧嘩!
「…………アインと組んでるから」
「ぐうううう」
 やはり保健室の先生に相手してもらうしかない。喧嘩できてないし、ストレス溜まってんだよなあ。来世ポイントの件もあるし、その辺にいるやつを殴ることが出来ないからな……。先生に相談して相手してもらうってことは了承を得ているわけでボコボコにしたところで来世ポイントには影響なさそうじゃね?
「昼休み楽しみ~」
「「「心配だから着いていく!」」」
「邪魔したら殺す♡」
「「「…………」」」
 三人とも頭を抱えてしまった。なぜかルシフェルも抱えている。
 誰であろうと喧嘩だけは邪魔させねえぞ!

 ◇◇◇

「失礼しま~す。って誰もいねえ」
 いつも間が悪いよな……。
 保健室に着いて、日差しのせいでぼうっとする頭でベッドへ向かう。
「ああ……しんどい」
 なんか日に日にしんどさが増してくる。喉が渇いて渇いて仕方がないし。
 ベッドに寝ころんでいれば、徐々に意識が遠くなっていく。

『これで寂しくないよ』

 しばらく眠っていれば、薬品の匂いに感化されてか昔のことを思い出した。
『もうすぐここから出してあげられるよ』
 誰かの声が脳内に響く。そして脳内に浮かぶ青年の顔。ああ、確か、この人が魔法学園に報告して俺は保護されたんだっけ。闇魔術組織の研究員だったが、組織を裏切って……保護されてから離れ離れになった。冷たい建物の中で唯一家族のように接してくれた人だった。
 魔法学園に入ってからは会えていないし、どうしているか分からない。
「シーシェン……」
「――呼びました?」
「は? ぎゃあああああああああ!!」
 意識が呼び起こされ、目を開けると、すぐそこに物凄い美形があって驚く。
「昔みたいにお兄ちゃんと呼んでくれたらいいのに……」
「な、は⁉ シーシェン⁉ なんでここに⁉」
 ついさっきまで夢の中にいた相手がそこにいて、驚きを隠せない。
 元闇魔術組織の研究員であるシーシェン・シェンランは、ベッドの上に手を付き、俺を見下ろしている。逃げられない……。
「見れば分かるでしょう?」
 シーシェンは片手を羽織っている白衣に伸ばす。
「え……まさか」
「私がここの先生」
「ええええええええええええええ!?」
 シーシェンが保健室の先生⁉
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