乙女ゲームの攻略キャラに転生したけど、他の攻略キャラ達の好感度が上がる一方で……!?

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
上 下
6 / 35
第一章

2話 ①

しおりを挟む

「アイちゃん!!」
 目の前にいるアインの両手を取って、ずいっと顔を近づけて懇願する。
「な、なななな何だよ!? ち、近いぞ……」
「教えてくれアイちゃん、善行の積み方ってやつを!」
「え。善行を積むのか? どうして?」
 アインはぽかんと口を開けて呆ける。
「そ、それは……今までの自分 (不良)を改めて! 新しい自分 (転生した自分)を正しくするためにっ?」
「なんかよく分かんないけど……必死なのは分かった」
「分かってくれるのか……」
「でもまあ、今日のところは帰ろうぜ。寮で荷ほどきしなきゃいけないだろ」
「そーいやそうかもな……」
「俺ザイドと同じ部屋なんだぁ!」
 なんかめちゃくちゃ嬉しそう。
「なんでそんなにウザイドくんのことが好きなんだよ?」
「そりゃ大好きだから! 大切な大切な幼なじみだからな!」
 大好き……って簡単に言うなよ。まあこれがアインのいいところなのかな? いや待てよ、なんか違和感があるんだよな。こんなの普通か?
「俺のことは?」
「え?」
「俺のことは好きなのか?」
「えっと……」
 クラスメイトも何人か残っている教室のすぐそばで、そんなことを聞かれるなんて思ってもいなかっただろう。出会ったばかりで好きも嫌いもない。なのに……教室からは「ヒューヒュー」「モテモテだなアイン!」なんて言葉が飛んでくる。
「お、俺はザイドが好きだから!!」
 アインは顔を真っ赤にして、そう叫ぶように言い残して去って行ってしまった。教室に残るザイドも頭を抱えてはいるものの、頬は赤い。そんな様子にからかいを入れる生徒もちらほらいた。まるでこの異常な仲良しが普通かのように。
 なんか嫌な予感がするな。これは明日せんやを捕まえて聞くしかない。
「ヴォ、ヴォンヴァートくん」
 後ろから呼び掛けられて、振り返る。
「サイフェン?」
「う、うん。僕はサイフェン・ブロイズ、よろしくね」
 やっぱり近くで見ると美形だな、サイフェン。
「何か用か?」
「アインくんにフられちゃったね」
「変な言い回しはやめろ」
 睨み付けながら言い捨てると、「ごごご、ごめんなさい」と相手は一歩下がる。
「一緒に帰らない? 寮の部屋同じでしょ?」
「なんでそんなこと知ってるんだ?」
「今朝荷ほどきしに行ってたから、その時に名札を見たんだ」
「なるほど」
 じゃあ帰るか、と通路を進んでいくと、後ろからサイフェンが「いいの!?」と言いながらパタパタ駆け寄ってついてくる。隣に並んでこないので歩みを緩めれば驚いた顔をされる。
「どうした?」
「い、いや。何でもない……」
「ところでお前、善行を積むにはどうしたらいいと思う?」
「そう言えばアインくんにも言ってたね。……まだバレンタインイベント中だし、お菓子を配るとかどうかな!」
 見事に自分の得意分野へ方向転換させたな。
「まあいいか。めんどうくさいけど……お前も手伝えよ?」
「う、うん! 全力で手伝うよ……!」
「どこで作る?」
「帰ってから寮母さんに、寮のキッチンを借りられないか聞いてみるよ」
 ゲームの世界だし、バレンタインイベント中だし、こう言うご都合展開ではたぶんOKが出るんだろうな。
 それから寮に帰りつき、サイフェンは荷ほどきを始めた。俺にもダンボールがいくつか届いていたが、荷ほどきがだるくて備え付けのベッドに寝ころんで放っておいたらサイフェンがなぜか俺の分までやりだした。
 俺から言ってやらせたわけじゃないし、来世ポイントに影響はない。こいつ使えるな。
 空中画面を表示してみんなのプロフィールを確認していると、サイフェン・ブロイズと書かれた文字の下に《趣味お菓子作り。魔法水魔法。寮ヴォンヴァートと同室》と書き足されていた。もしかして、と他のやつのプロフィールを見ていけば、彼らのした自己紹介の内容が書き足されていた。どうやら俺が知った情報が反映されるらしい。
 ルッシーは……
 ルシフェル・ギーウェンのプロフィールを表示して確認すれば、好感度はマイナスにはなっていなかったがゼロであった。まあいいんだけどその前にさ。

ルシフェル・ギーヴェン
 誕生日5/12 年齢16歳 趣味ギター 魔法氷魔法 寮???
 チヨ・アキヅキに好意を持つ。
親密度 0%
好感度 0%

 これ何?
 マーカー引くよ?

 チヨ・アキヅキに好意を持つ。

 ここ何?
 そう言えば、他の攻略キャラのプロフィールにもこの説明文あったな。
 ザッと確認していけば6人はもう餌食になっているらしい。純粋で可愛いアイちゃんと便利なサイフェンだけは守らなければ……。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?

彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、 たけど…思いのほか全然上手くいきません! ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません? 案外、悪役ポジも悪くない…かもです? ※ゆるゆる更新 ※素人なので文章おかしいです!

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...