乙女ゲームの攻略キャラに転生したけど、他の攻略キャラ達の好感度が上がる一方で……!?

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
上 下
5 / 35
第一章

1話 ④

しおりを挟む

 誰だっけこいつ……。確かルッシー……ルッシー……空中画面を操作して名前を確認すれば、《ルシフェル・ギーウェン》と書かれていた。こいつも攻略キャラである。
 ついさきほど教室の前の席で騒いでいた、追加設定でせんやにメロメロにされている一人だ。ってことはどこかにキスされたのか。
 せんやは全員攻略する気でいるけど……ヒロインは先生だし攻略対象は生徒だからほとんど恋愛要素はなかったゲームだよな。いやだからこそこの世界に来て燃えているのかもしれない。
「大変だなルッシー」
「それは俺のことか?」
「当たり前だろ、ル・ッ・シー」
 挑発するように言えば、ルッシーがどこから現れたのか、ガラの悪い不良達を後方に構えて俺のことを見据える。
「ザイド・スターク。お前が手を出したのは学園で一二を争う実力者だ」
 え、あいつそんなに有名な不良だったの? 弱かったけど。それにしてもこの不良達、別のクラスの生徒のようだ。普通科からも特進科からも来ている。制服の色で分かるのだがちなみに俺達はAクラス。白と黄色を基調とした服である。
「そんなあいつに目を付けられたお前と、みんな戦ってみたいんだってさ」
 こっちの世界に来てから初めての喧嘩か? わくわくしてきたぜ!
「ちょ、ちょっと待った!!」
 そう言って俺の前に飛び出してきた金髪に目を細める。彼は庇うようにして俺の前に立ち、徐々に下がって来て俺の腕を取った。
「アイちゃん?」
「複数人で一人を相手にするなんてズルイだろ!」
 本当に庇ってやがる……。
 ピンク色の瞳がちらりとこちらを覗き込む。誰かさんの上目遣いより可愛いんじゃねえか?
「アイちゃん、心配してくれてるのか! 大丈夫だこんくらいの人数!」
 後ろから抱き上げると、アインは「うわああっ」と手をばたつかせる。そのままアインを後ろによっこらせと下ろせば、背を向けた俺に複数人が襲い掛かってくる。きゃっとでも言いそうにアインが身を縮める。それを庇うようにして立ち、まず全員に回し蹴りをお見舞いしてやる――それだけで襲い掛かってきた不良はノックアウトされた様子だった。
 まだ残っている不良が身じろぎ、ルシフェルに困惑の色を浮かべた視線を向けるが……ルシフェルは「残り半分の金はこいつをやってからだ」と不良達に警告した。なるほど不良の正体は金に釣られた生徒だったか。
 襲い掛かってくる不良共をテキトーに相手して、ほいほいと投げていくと、全員立ち上がれなくなった頃に、ルシフェルは顔を真っ青にして震えていた。
 こぶしを握り締め、キッと睨み付けてくる。
「どうして全員魔法を使わないんだ……バカなのか!」
 ルシフェルは手のひらに魔法陣を浮かべるが、それは発動される前に光を失い消えていく。
「な、何で――魔法が発動できない!?」
「お前も不良達を見習って、魔法なんて使わずに殴り掛かってこいよ」
 こぶしを鳴らしながら距離を詰めていくと、ルシフェルは一歩一歩下がってついに背を向けて言った。
「今回はここまでにしてやる!」
「どう見てもこっちのセリフだば~か!」
 お決まりのセリフを吐いて去っていく背中にそう声を掛けてやれば、相手の背中が縮こまったのが見えた。
 返り討ちにしてやったとはいえ、なんか喧嘩が強くなりすぎていてモヤモヤする。こう、自分ももっと血を流したかった。喧嘩が1番強いはやめとくべきだったかなぁ。
 ……クラスメイトには見られてるし、一応好感度を確認しておくか。
 教室に残っている分の全員の好感度を確認すると、みんなゼロのままだった。マイナスにならなくて良かったがプラスになっても困るな。
 そう思った時、アインの好感度に止まって、少し上がっていることに気が付いた。マックスや半分にまで到達はしていないものの、ゼロに近かった数値は100%中8%まで上がっている。
「か、庇ってくれてありがとう」
「別に庇ったわけじゃねえよ」
 あ、3%下がった。
 ……そんなことを考えながら画面を見つめていたら、視界の右上に赤文字を発見した。

 -1000Pt

 え、何これ?
 右下にヘルプボタンらしきものがあり、それをタッチすると、画面操作のヘルプがあったためそれを押す。すると、右上のPt表示は来世へのポイントと説明があり、ぎょっとする。
 え、ちょっと待って、え?
 冷や汗が流れ、急激に体温を失っていく感覚を覚える。
 ヘルプ画面の目次に戻り、来世ポイントと記載されたそれをタップすると、こう説明があった。
 来世で使用できるポイント。今世では使用できない。来世が始まる前に追加設定を買うことができる。戦って貯める前世ポイントとは違い、善行を積むことで貯められるので喧嘩には注意が必要。
 え?

 え……

 えええええええええええ!?

 聞いてないぞ神様! 数人の不良を返り討ちにしただけで――いや、金に釣られた一般生徒に暴行を加えただけで-1000Ptって! 待ってくれよ!
 どう善行を積めって言うんだ、俺は喧嘩が大好きな不良だぞ! しかも魔法が使えないなら戦闘は必ず殴り合いになるわけで! そんな俺に-1000Ptから始めろって、ええええええええええ!?
 嘘だろおおおおおおお!!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...