スパイス料理を、異世界バルで!!

遊森謡子

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オーブンと少年 3

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 そしてついに、港の夏至祭り当日になった。

 お祭は二日間。一日目の昼に始まり、夜を徹して行われ、二日目のお昼に終わる。そのクライマックスが、赤の女神シャーマの力が一番強くなる時間なわけね。
 ソル、オスカー、エイラ、それにチュロも、朝から駆けつけてくれた。
「仕事は大丈夫なの?」
 聞いてみると、
「この二日間にしなくて済むように片づけてきた」
「オレも」
「私もだ」
 あはは、さすが。  
 港には前日までに簡単な屋台がずらりと建てられており、それぞれにあのアンテナもちゃんとついていて、火が使えるようになっていた。当日も朝から町の役員さんたちが忙しく動き回っている。
 今日はドルフィはいなかったけれど、前日準備を彼に手伝ってもらってあったので、私たちは残りの下拵えをしたり荷物を運んだりと準備をした。
「何の料理を出すんですか?」
 うきうきした様子で聞くチュロに、私は笑顔で説明した。
「餃子と、オムレツと、焼きチュロス!」
「えっ!!」 
 チュロが愕然と立ち尽くす。
「ややや焼きチュロ、ですって!? この僕を食べようだなんて……!」
 私は吹き出した。
「チュロス、っていうお菓子があるの」 

 揚げ菓子のチュロス、スティック状のドーナツみたいなお菓子だけど、有名だよね。「チュロス」は複数形なので、「チュロ」の名前で売ってるお店もあるんだ。
 作り方は、まずグピのミルクとバターを鍋で煮立てる。普通のドーナツだと、ここからいきなり火を使ったりはしないけど、ここにギルト粉を入れて練ると粘りのある生地になるのがポイントだ。火加減には注意しなくちゃいけないし、練るのに力がいるので、結構大変だけど。火加減魔法も大活躍だ。
 生地がまとまってきたら火を止め、溶き卵を何度かに分けてよく混ぜ込んだら、生地の出来上がり。チュロスは使う粉や卵のあるなしによって食感が変わるけど、こちらのギルト粉は強力粉に近いので、かなりカリッとした本場っぽい食感になるはずだ。
『屋台でチュロス』を思いついてすぐ、いつもの金物屋さんに特注しておいたのは、星型の口金。生地を入れた布袋に穴を開けて口金をつけ、油を塗った鉄板の上にまっすぐに絞り出す。粘りのある生地は、丸い断面で絞ると揚げたときに破裂しちゃうので、星型はそれを防ぐための形状なんだって。
 本当は油で揚げたいところだけど、油の中に直接絞り入れると、まっすぐにならずにうねうねしてしまう。日本ではやり方を調べて、クッキングシートの上に絞り出して作った。シートごとシートを上にして油に入れると、まっすぐなまま揚げられるし、シートも燃えずに後からはがせる。
 こちらにはクッキングシートがないので、どうすればまっすぐな形で揚げられるかも考えてはみたんだ。例えば、鉄板のしきりのようなものを作って鍋に入れて、細長いスペースに生地を絞り入れれば、だいたいまっすぐにならないかなぁ、とか。でも、それ用のしきりをまた別に注文しなくちゃいけないし。それで、オーブンで焼くことにしたのだ。
 並んだ何本ものチュロス生地に、刷毛で油をまんべんなく塗ってから、オーブンへ。揚げた時ほどには生地が油を吸収しないのでヘルシーだし、でも揚げ物っぽく仕上がった。
 薬研とすり鉢を使って粉にしたシナモンとお砂糖を混ぜ合わせ、チュロスを入れてまぶしたら――
 焼きチュロスのシナモンシュガー味、出来上がり!
 このシナモンシュガー味と、それからレモンの皮をすり下ろして混ぜ込んだレモン味を、午前中にお店で作ってある。みんなに一口ずつ味見してもらうと、ソルもエイラもオスカーも「美味しい!」と言ってくれた。
 
 今日の港はいくつもの屋台の他、停泊した船まで布や花で綺麗に飾り付けられている。お祭りの開始時刻が近づいてくると、アルンセバールの町ってこんなに人がいたんだ、っていうくらい、港は混み合い始めた。
 わあ、ラトラルビーの人だけじゃなくて、トーパ人やエメルド人も増えてない? 船でお祭りに遊びに来てるのかな。
「あの、しばらく屋台を頼んでいい?」
 近くにいたエイラに頼むと、すぐに後ろからソルの声。
「どこに行くんだ?」
「ちょっとね、秘密」
「一人になるならダメだ。チュロを連れて行け」
 はーい。
 私は「チュロ、つきあって」と頼んで、二人で屋台を離れた。
「何ですか、何ですか?」
 チュロが小声で聞いてくる。私もひそひそと返した。
「実はね……」

 太陽が中天にさしかかった時刻。
 木箱で作られた簡単なステージに、町長さんが登壇した。開会宣言だ。
「アルンセバール夏至祭を開催します! 赤の女神シャーマに感謝し、その恵みを存分に味わいましょう!」
 集まった人々がわあっと沸き、そして、歌が始まった。
 それはとても自然な始まり方で、誰かはわからないけど歌い始めた人に回りの人が唱和して、その輪がどんどん広がっていく。歌に気づいた人が集まって、さらに声が大きくなる。

 生命を育む母なる神が
 世界に太陽の光をあまねく降り注ぎ
 我々は日々感謝しながら浴する
 どうかこの恵みが
 永遠に続きますように――

 そんなシンプルな、とても純粋な歌だ。聴き入っているうちに、緊張が解けてくる。

 私は、町の人々の前に進み出た。
 編み込んだ髪に生花をたくさん挿し、それに女神の顔の入った大きなメダルつきのかんざしも差し込んである。布を留めたり巻いたりした衣装はギリシャの巫女さんみたいで、スカート部分が結構ひらひらして足が見え、ちょっと恥ずかしい。
 軽くお化粧もして、炎の燃える松明を手にした私は、町長さんの依頼で今年のお祭りの『女神の申し子』役をすることになっていた。町の女性から毎年一人選ばれるそうで、巡合でやってきて活躍しているからと指名され、あっさり押し切られてしまったのだ。

 開会宣言がされた木箱のステージの横に、巨大な木組みが組まれている。
 私はチュロを従えて、そこに近づいた。いったん立ち止まり、ちらりと見ると、人垣の後ろの方でソルたちがこちらを見ている。オスカーは歌を知っているのか、一緒に歌っていた。ソルとエイラは歌っていなかったけど、じっと私を見つめていて、目が合うと微笑んでくれる。

 私はもう一度、木組みに向き直った。海風に、炎が揺れる。衣装のスカートがはためく。
 松明を、木組みの中に差し入れた。火は、中に入っている藁のようなものに少しずつ移っていたけれど、なかなか大きくならない。
 心配になって、私は木組みに手をかざした。

 さあ、起きて。祝祭が始まる。女神シャーマに感謝を届けて。

 ――炎が燃え上がった。

「ただいまー」
 屋台に戻ると、オスカーが餃子を焼きながら目をキラキラさせて言った。
「お疲れ様っ。びっくりしたよ! なんだか、コノミが女神様みたいだった。ガヤもそばにいるし」
「仕草がとても美しかった。素敵だったよ、コノミ」
 エイラも褒めてくれる。
 そしてソルは、
「あれ、もう着替えたのか。綺麗だったのに、もったいないな」
と私をじっと見つめて、微笑んだ。
「驚いたけど、コノミにぴったりの役だった。髪飾りはそのままなんだな。よく似合ってる」
「あ、ありがと。うん、飾りは私がもらっていいんだって。あー緊張した」
 私は照れまくって、額の汗を拭いた。何が恥ずかしいって、ソルに見られるのが一番恥ずかしかった……
 まあ、もう終わったし! 本業、張り切っていくぞ!

「いらっしゃいませ!」
 ガヤガヤ亭の屋台の前は、大勢のお客さんで賑わった。私たちは鉄板で餃子を、フライパンではスペインオムレツを焼く。
 ショウガをきかせた餃子はじゅうじゅう音を立て、ニンニクがほのかに香るオムレツはカラフルな断面で。二種類のチュロスは、持つところを紙で包んで提供し、どんどん売れていく。
 看板ガヤのチュロが時々「めぇー」と鳴いて、お客さんを和ませた。
「不思議な味だけど、これ美味しい。チュロスっていうの?」
「食べやすいし可愛いね」
「見て、いろんな色で綺麗!」
「やっぱりギョーザはうまいなー」
 いくつもの声が耳に届くと、顔が勝手にほころんじゃう。エネルギーもらった! 最後まで頑張るぞ。

 楽団が楽器を奏で始め、歌が始まり、人々は踊り出す。
 賑やかで、全てが生き生きしていて、しかも私という人間がその一部になっている。何て楽しいんだろう。
 この国に残ったことを後悔しないように、これからも頑張っていきたいな。
 しばらく必死で仕事をして、ようやく慣れてきた頃、私はちょっと屋台から半身を出してお祭の会場を見回した。
 ……ドルフィ、いないなぁ……

「コノミ」
「はいっいらっしゃい! って、ああ、ルガ」
 金髪三つ編みのルガが、いつものように色っぽく微笑んで立っている。
「君の料理を食べにきたよ。マニスンのチュロスを一つ」
 マニスン、つまりシナモンのチュロスを紙で巻いて差し出しながら、私はついマジマジとルガを見つめてしまった。
 この人も密偵、なんだよね。そう言われるとそう見えるから不思議。
 ルガはチュロスに手を伸ばし、私の手ごと握った。
「そんなに見つめてどうしたんです、美しき女神の申し子さま。ようやく俺の魅力に気づきましたか?」
「オムレツも買ってくれたら気づくかも」
 澄まして言うと、彼は笑って私の手を離し、チュロスを受け取りながら「じゃあオムレツも一つ」と言った。まいど。
 オムレツを紙に挟み込みながら、聞いてみる。
「ルガは、お店は?」
「二日目だけ、露店を出すよ」
「そう……じゃあドルフィは今日、そっちのお仕事はないよね」
「うん。こっちかと思ったら、いないんだな」
 ルガも、ドルフィの居所は知らないらしい。  
「もし会ったら、ちょっと焦がしちゃったチュロスがあるから食べに来てって、言ってくれる?」
「わかった」
 ルガは微笑み、両手にチュロスとオムレツを持って「また来るよ」と立ち去っていった。

 ドルフィ、どこにいるんだろう。

 やがて日が沈み、夜になった頃、チュロスが思ったより早く売り切れてしまった。お客さんに謝りながら、申し訳ない気持ちになる。
「レモンチュロスの方なら、まだ材料はあるんだよね」
 私はちょっと考え、隣にいたエイラに言った。
「私、ちょっと一度お店に戻って、追加で焼いてくる」
「コノミ、疲れてるだろう」
 心配してくれるエイラに、私はランタンを手に取りながら笑いかけた。
「大丈夫! ありがとう」
「そう……? 作るついでに、ちょっと休憩してきていいんだからね」
「わかった、じゃあそうするね。チュロ、つき合ってくれる?」
 屋台の陰で座っていたチュロに声をかける。チュロは「めぇ」と鳴きながら立ち上がり、近寄ってくると、よその人に聞こえないように
「チュロは忙しいですねぇ、焼かれたりつき合ったり」
なんて囁くので笑ってしまった。

 少し歩いたところで、後ろから足音。振り向くと、ソルが走ってくる。
「ソル」
「俺も行く」
 私に追いついて歩幅をゆるめると、彼は並んで歩きながら言った。
「皆が港に集まっていて、町はひと気が少ないからな。今日のコノミは目立つ。危ない」
「え、あ、しまった。飾り、取っちゃった方がいいかな」
 あわてて髪に手をやったけど、ソルは笑った。
「取るのはもったいないよ。綺麗だから目立つのはしょうがないってことだ。美女の護衛は俺がするから」
「別にそんな……あ、ありがと……」
 私がもごもご言いながら視線を落とすと、チュロがじーっと私たちを見ていて、「僕、おじゃま」とつぶやいた。
 町なかに入っていくと、ソルの言ったとおり道は静まりかえっていた。人もめったに通らない。
「結局、今日は一度もドルフィを見てないな」
 私がいうと、ソルもうなずく。
「俺もだ。さっき会場をぐるりと回ってみたけど、いなかった」
「そう……港に来てないのかな」
 会話がとぎれ、私はしばらく、前を行くチュロの尻尾を見つめながら黙って歩いた。
 なんだか、今日はとてもソルの視線を感じる。気のせいかな。
「あ」
 暗いので足下が見えにくく、軽くつまづいた。といっても転ぶほどではなかったんだけど――
 ――ソルの大きな手が、私の手を握った。
 手をつないだまま、何でもないように、彼は私の歩調にあわせてゆっくり歩き続ける。
 私も、軽く、その手を握ったまま歩いた。
 ガヤガヤ亭の裏口に到着して木戸を開けると、チュロが先にするりと入った。
「僕、ここで待ってますね」
 彼はそう言って、中庭で草を食べ始める。
 私とソルは、手をつないだまま、倉庫に入った。
 今までは外を歩いていただけだけど、建物の中で、二人きりだ。少し、手が汗ばむのを感じる。

「レモンがね、まだたくさんあって」
 私は棚のレモン――こっちではオーメル――の方に視線をやった。これを使って、レモンチュロスの追加分を作る。
 けれど、ソルはまだ手を離さないまま、言った。
「いい匂いがする」
「そうだね」
「オーメルもだけど。コノミが、いい匂いだ」
「……髪飾りの、花が」
「うん……」

 ソルが、私に一歩近づいた。向かい合う。
 彼は少しかがみ込んで、髪飾りの花の匂いをかぐように、顔を近づけた。鼻先が、私の髪にも触れる。
 顔を上げられない私の目の前に、ソルのシャツの胸元があって、体温まで感じられそうだ。
 ドキドキしすぎて、耳がぼわーんとなりそう。

 つないでいない方のソルの手が、髪飾りにちょっと触れてから、私の耳のあたりに降りてきた。
 それから、頬へ。

「……コノミに触れていたくて、仕方ないんだ」
 低い声が鼓膜に響いて、心臓が爆発しそうになった、そのとき。

 かたん、と、小さな音がした。

 びくうっ! となって、私は思わずソルから飛び離れる。
「な、何? 今の音」
「しっ」
 ソルの雰囲気がさっきまでとガラリと変わり、鋭い目つきになった。
「誰かいる。コノミは俺の後ろに」
「う、うん」

 まさか、泥棒……?

 倉庫から階段室に通じる扉は、いつもだいたい開けっぱなしにしてある。ランタンは倉庫に置いたままにして、ソルが足音を消してそちらに進み、私も恐る恐る後ろからついていった。
 倉庫から漏れる明かりで、階段室はほのかに明るい。耳を澄ませ、私たちは音がどこから聞こえたのか確かめようとした。
 すると、厨房に通じる扉の向こうで、床に何かが擦れる音。

 私とソルは、顔を見合わせた。
 厨房に貴重品なんて特にないと思うんだけど……あっ、日誌。日誌は貴重品だよ、もちろん。でも泥棒が狙うようなものかな……

 ソルが手を伸ばし、バッ、と扉を開けた。

 ――オーブンの前で、人影が動いた。
 小さい。子ども……?

「え、ちょ」
 私は急いで倉庫にとって返し、ランタンを持って駆け戻った。
「ドルフィ!」
 そこにいたのは、気まずそうな顔で厨房の床に座り込んだ、ドルフィだったのだ。
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※ このお話には、近所のスーパーのスパイスコーナーに置かれているような、手に入りやすいスパイスばかり登場する予定です。使ったことのないものがあったら、ぜひ試してみて下さい。
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