女神なんかじゃない

月野さと

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番外編2_郷愁

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 本当に、いつぶりだろう?
 何ヵ月も、2人きりになってないし、抱き合ってない。

「確かに。アーサーとこんなふうにイチャイチャするの、いつぶり?」
 茶化すように言うと、アーサーは少しムスッとする。
「サラは平気なのかもしれないが・・・私は、ずっと我慢している。」
 少しだけ顔を染めて、ムスッと拗ねて見せるアーサーは、可愛い。
 いつも、子供の前ではカッコイイ父親を演じて、みんなの前では王様らしくして、声色まで違うけれど。今のアーサーは、完全に甘えたそうにしていた。
 ふふふっと、おかしそうにサラが笑う。笑いながら、アーサーに抱きつく。その大きな腕が、私を包み込む。
 
「サラ。子供との時間も大事だが、私との時間もちゃんと作ってくれ。」
 そんなふうに言われると、嬉しくてドキドキする。
「うん。わかった。これからは、そうする。」
「約束だぞ?あぁ、そうだ。お前はすぐに子供優先にするから、曜日と時間を決めよう。」
「ふふふ。アーサーったら!大好き。」
 布団の中でゴロゴロしながら、抱き合って、軽くキスをする。それを皮切りに、何度も何度もキスが降ってきた。彼の髪を撫でて、たくましくてしっかりした肩と腕と背中を、なぞるように撫でる。 
 あぁ、この人が好きだなって、しみじみ感じる。
 アーサーの唇は、口から耳へ、そして首筋へと移動していく。

「アーサー・・・?」
「・・・すまない、サラ。我慢できない。」
 そう言うと、服の中に手が入り込んできて、太腿を撫でる。
「あっ、ダメ。アーサー、あたし、眠くて・・・んっ、途中で、寝ちゃう・・・かも」
 興奮しきった様子のアーサーは、耳を愛撫して、首筋をなぞるように舐め、時々噛みついた。
「サラっ!はぁ・・・おまえが、欲しい。」
 あぁ、まずい。愛撫が気持ちいい。
 雰囲気に流されて、無意識に彼の胸元のボタンを外していく。そのまま、ベルトを外そうとすると、アーサーが荒々しく自分でベルトを外した。彼のそそり立つ物を手で握ってしまい、そのまま上下に擦る。
「あっ、サラ、はぁっ、」
 アーサーが色っぽい声を出すので、なんだか自分まで興奮する。あっという間に服を脱がされていて、ショーツ1枚にされる。部屋が、まだ明るくて体を見られないように、咄嗟にアーサーの顔を押さえる。
「サラ?」
「ごめん、出産してから、体系崩れちゃったし・・・おなかとか、見られるのはちょっと・・・恥ずかしい。」
 アーサーは、呆れたように笑った。
「そんなこと、気にするな。サラが皺皺のおばあちゃんになっても抱いてやる。」
「へ?!なっ何言ってるの?!ウソでしょ?」
「なんだ?ダメなのか?」
「ダメじゃないけど・・・。」
 そんな風に言ってくれて、嬉しいけど、恥ずかしいよ。
 でも、髪を撫でたり、背中を撫でたり、抱き合ったり、キスしたり、手を繋いだり。そうゆうのは、ずっとしていたい。
 水色の目を見つめると、私の目を見つめ返してくれる。
「愛してるよ。サラ。」 
 誘うように耳元でささやいて、下腹部に硬いものをこすりつけて主張してくる。仕方ないので、サラも少し腰を上げて、自分の秘部に擦りつける。
 何も身につけずに擦りつけると、もうヌルヌルで、気持ち良さに酔いしれる。目を閉じると、そのまま睡魔に引っ張られた。
 あ~、ダメだ。寝不足で、アーサーの体温が気持ち良くて、心地よくて・・・寝そう。
 もはや、朦朧とする中、アーサーは挿入してきた。
「んっ。あぁ、あん。」
 気持ち良くて、眠くて、目が開けられないまま、体を揺さぶられる。
 いい感じに体の力が抜けて、最奥まで到達すると、電流が走るような快感が来た。
「あ!はぁっん!はうん!!あ、気持ちい!あっ、あっ!」
 あっという間に、気持ち良くなって、そのまま眠ってしまった。



 
 気を失うように眠ってしまったようで、気が付くと、部屋の中は暗くなっていた。

 寝ていた私の隣で、アーサーは座ったまま、本を読んでいた。 
「アーサー?今、何時?」
 むくりと起き上がって聞く。
「夜の8時だ。子供たちは食事も済ませて、ルカとアルフィーは2人で湯浴み中で、マリーは、女官達が面倒を見てくれているから大丈夫だ。」
 ふう、と息を吐いて、アーサーにもたれかかる。
「よく眠れたか?」
「うん。久しぶりによく寝たかも。」
 アーサーは、よしよしと私の頭を撫でてから口を開いた。

「さっき、レオンが城に来た。お前を、母親に会わせてあげられるかもしれないと言うんだ。」
 一瞬の間の後に、驚きと、嬉しさで興奮する。
「え?・・・本当に?」 
 だけど、見上げたアーサーの顔色は、暗かった。
「・・・すまない。おまえから母親を奪ったのは私だ。今まで、どんな気持ちだったか、私は・・・」
「アーサー!違う、違うよ?」
 彼の手を握りしめる。
「私ね、今、とても幸せなの。心から愛して、愛されて、可愛い子供もいる。幸せ過ぎて、伝えたくなったの。それだけだから。」

 アーサーは、今にも泣きそうな顔をして唇を噛むと、サラを引き寄せて、力いっぱい抱きしめた。

「私は・・・私は、おまえが・・・何を失って、どんな努力をしてきたのか、誰より理解しているつもりだ。どんな事でも良い。些細なことでも、一緒に分け合いたい。私たちは夫婦だ。会えなかったとしても、どこに居ても、サラの母親は、私にとっても、もう家族だ。」
 
 あぁ、本当に、なんて優しい人。
 結婚して、子供も居て、ずっと一緒にいるのに、アーサーの優しさや、その想いに、いつも幸せにさせられる。

 この人には敵わない。
 私の言い出せなかった気持ちも、なにもかもお見通しなんだ。
 なにもかも、捧げたくなってしまう。

「大好き。大好きだよ。アーサー。」
  

 
 
 
 子供達が寝静まった頃。
 アーサーと2人で、神殿に向かった。
 
「両陛下。こちらへ。」
 サミュエルさんが、かしこまって案内する。
 少し進んだ所に、レオン団長とウィルさんが、石のベッドの前に居た。
  
「王妃様。お持ちくださいましたか?」
 レオンが聞くので頷く。
「うん。女神の指輪と、魔力入りのローズティーでしょ?」
「はい。では、少し冷たくて固いのですが、こちらにお掛けになってください。」
 指示通りに、よっこいしょと座る。石で出来ているので冷たいけど、気にならない。
 レオンが、準備を始めながら説明する。

「これから、サラ様には魔術を使って夢を見て頂きます。女神の指輪の力を使って、聖水に溶かした女神の魔力を含んだローズティーを飲んで頂き、我々も手助けさせて頂きます。この、神殿には空間に歪みがあるので、上手くいけば、お会い出来るのではないかと。」
 レオンは、アーサーを見る。
 アーサーは、黙って頷いた。
 よくわからないけど、サラが聞く。
「私は、どうしたらいい?寝るだけ?」
「出来る限り、会いたい人を鮮明に思い出して、必死で祈っててください。」
「わかったわ!」

 そうして、聖水で作ったローズティーを飲み、横になろうとすると、何故かアーサーが座って、膝の上に寝るように言われる。仕方ないので、膝枕で横になり、目を閉じて、必死で母を思い出した。

 お母さん。
 お母さん。お母さん。
 今、どうしてる?お母さん。1度だけでいい。最後に1度でいい。

 会いたい。


『サラ・・・サラ・・・。』

 懐かしい。それは、世界で1番、優しい声を私は聞いた。 

「お、お母さん!!!」







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