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50話 運命のように
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「・・・・今のは、何??」
ガタガタと震えながら、ルカを抱えて家の外に出る。
すると、隣に住むご夫婦が出てきていた。
「エマさん!どうしたんだい?」
「あ、人買いです!!部屋に押し入ってきて・・・。」
隣の旦那さんが、2階に上がっていく。
暫くしてから降りてきた。
「あれは・・・どうしたんだい?2人とも死んでる。」
エマは、ガクガクと震えて黙り込んだまま。
ルカは眠っている様子だった。
隣のおじさんが言う。
「あれは、魔法だ。あんたがやったのか?」
ピクリ!と、エマの体が反応する。
「・・・・魔法?」
その様子を見て、おじさんはしっかりと確信したように言う。
「ルカか?ルカがやったのか?母親を守る為か・・・。」
そして、エマの目を真っすぐに見て、諭すように言う。
「いいかい?よく聞くんだ。俺は昔、遠く離れたウォステリア王国に行ったことがある。そこでは魔術をつかう人間がたくさんいた。戦が終わったあとに通った時、あんなふうに人が死んでた。」
エマは、おじさんの顔を見る。
「この国ではまず、魔法なんか使えるやつがいない。ルカに、魔法の使い方を教えてやれるやつがいない。それに、この街にいたら、これからも人買いに怯えて暮らさないといけない。たしか、ガルーダ王国では、金髪が多いそうだ。そっちに移住してみてはどうだろう?」
隣の奥さんが、家の中へ誘う。
「とりあえず、今日はウチにおいで。ニーナさんには、言っとくからね。」
さそわれるままに、ご夫婦の家に入る。
家の扉を閉めて、隣の旦那さんが言う。
「ずっと心配していたんだよ。このままじゃ、ルカが人買いに狙われ続けるんじゃないかってな。魔法が使えるとなると、急いだ方がいい。うっかり友達を傷つけてしまったりしたら、やっかいだ。」
エマは、頭がくらくらした。
「エマさん、急に色々な事があって、パニックだよね。今日はさ、ゆっくり休んで考えるといいよ。とにかく、後の事はやっておくからね。」
奥さんが温かいお茶を出してくれる。
「じゃぁ、俺は、ニーナのとこに行ってくるよ。」
旦那さんは、そう言って家を出て行った。
エマは、頭の中の整理にとりかかった。
遠い国に、ルカと同じ人種の人間が居るということ。
魔法が、ルカは使えるということ。
これ以上、人買いに怯えて暮らしたくない。
程なくして、ニーナさんがやってきた。
「ニーナさん!」
「エマ!」
2人は抱き合った。
「無事でよかったよ。」
「迷惑ばかりかけて、ごめんなさい。」
「そんなことはいいんだよ!それより、聞いたよ。ルカは、魔法が使えるんだって?」
エマは首をふる。
「今まで1度も、そんなそぶりは・・・・。」
おじさんが、ため息をつく。
「初めて魔法を使ったのが、悪人で良かったのかもしれんな。」
ニーナさんが、エマの両肩を掴む。思い切ったように言った。
「エマ、この国を出るんだよ。」
エマは泣きそうな顔になる。
「そんな顔するんじゃないよ!あんたは、ずっと私の娘だ。またここに帰ってくればいい。今は、ルカに魔法の使い方を教えるんだよ。」
おじさんも言う。
「幸い、ウォステリアだったら、知り合いがいるんだ。そいつを頼って行けばいい。ルカが上手く魔法を使えるようになったら、また戻って来い!」
隣のおばさんも言う。
「エマちゃんに、会えないのは寂しいけど、待ってるからね!」
みんなに背中を押されて、エマは泣いた。
「こんなに迷惑かけて、何も返せて無いのに・・・・。」
「バカだね。そんなのは、持ちつ持たれつ、お互い様なんだよ。」
おばさんは、豪快に笑った。
それからは、長旅だった。
ルカの髪を茶色に染めて旅に出た。
船に乗って、馬車に乗って。
お金が無かったので、ヒッチハイクばかりだったせいか、3ヵ月かかって、ガルーダ王国についた。
ルカは、目を輝かせた。
「かーさま!かーさま!!見て見て!!」
行きかう人が、金髪碧眼だった。
エマも、胸が高鳴った。
この子の父親は、この国の人なのではないか?
どんな人だったのか?私は、ここに来たことがあるのか?
・・・何も思いだせない。
あ、夢。あのたまに見る、夢の中の男性。
もしかすると、私の記憶なのかもしれない。
「私って、意外と面食いだったのかも」
「?かーさま?」
「ううん。なんでもないわ。」
ルカは、屋台で買った肉まんを美味しそうに頬張る。
「今日はここに泊まりましょう。ウォステリアまで、もう少しだよ。」
「うん!」
ガタガタと震えながら、ルカを抱えて家の外に出る。
すると、隣に住むご夫婦が出てきていた。
「エマさん!どうしたんだい?」
「あ、人買いです!!部屋に押し入ってきて・・・。」
隣の旦那さんが、2階に上がっていく。
暫くしてから降りてきた。
「あれは・・・どうしたんだい?2人とも死んでる。」
エマは、ガクガクと震えて黙り込んだまま。
ルカは眠っている様子だった。
隣のおじさんが言う。
「あれは、魔法だ。あんたがやったのか?」
ピクリ!と、エマの体が反応する。
「・・・・魔法?」
その様子を見て、おじさんはしっかりと確信したように言う。
「ルカか?ルカがやったのか?母親を守る為か・・・。」
そして、エマの目を真っすぐに見て、諭すように言う。
「いいかい?よく聞くんだ。俺は昔、遠く離れたウォステリア王国に行ったことがある。そこでは魔術をつかう人間がたくさんいた。戦が終わったあとに通った時、あんなふうに人が死んでた。」
エマは、おじさんの顔を見る。
「この国ではまず、魔法なんか使えるやつがいない。ルカに、魔法の使い方を教えてやれるやつがいない。それに、この街にいたら、これからも人買いに怯えて暮らさないといけない。たしか、ガルーダ王国では、金髪が多いそうだ。そっちに移住してみてはどうだろう?」
隣の奥さんが、家の中へ誘う。
「とりあえず、今日はウチにおいで。ニーナさんには、言っとくからね。」
さそわれるままに、ご夫婦の家に入る。
家の扉を閉めて、隣の旦那さんが言う。
「ずっと心配していたんだよ。このままじゃ、ルカが人買いに狙われ続けるんじゃないかってな。魔法が使えるとなると、急いだ方がいい。うっかり友達を傷つけてしまったりしたら、やっかいだ。」
エマは、頭がくらくらした。
「エマさん、急に色々な事があって、パニックだよね。今日はさ、ゆっくり休んで考えるといいよ。とにかく、後の事はやっておくからね。」
奥さんが温かいお茶を出してくれる。
「じゃぁ、俺は、ニーナのとこに行ってくるよ。」
旦那さんは、そう言って家を出て行った。
エマは、頭の中の整理にとりかかった。
遠い国に、ルカと同じ人種の人間が居るということ。
魔法が、ルカは使えるということ。
これ以上、人買いに怯えて暮らしたくない。
程なくして、ニーナさんがやってきた。
「ニーナさん!」
「エマ!」
2人は抱き合った。
「無事でよかったよ。」
「迷惑ばかりかけて、ごめんなさい。」
「そんなことはいいんだよ!それより、聞いたよ。ルカは、魔法が使えるんだって?」
エマは首をふる。
「今まで1度も、そんなそぶりは・・・・。」
おじさんが、ため息をつく。
「初めて魔法を使ったのが、悪人で良かったのかもしれんな。」
ニーナさんが、エマの両肩を掴む。思い切ったように言った。
「エマ、この国を出るんだよ。」
エマは泣きそうな顔になる。
「そんな顔するんじゃないよ!あんたは、ずっと私の娘だ。またここに帰ってくればいい。今は、ルカに魔法の使い方を教えるんだよ。」
おじさんも言う。
「幸い、ウォステリアだったら、知り合いがいるんだ。そいつを頼って行けばいい。ルカが上手く魔法を使えるようになったら、また戻って来い!」
隣のおばさんも言う。
「エマちゃんに、会えないのは寂しいけど、待ってるからね!」
みんなに背中を押されて、エマは泣いた。
「こんなに迷惑かけて、何も返せて無いのに・・・・。」
「バカだね。そんなのは、持ちつ持たれつ、お互い様なんだよ。」
おばさんは、豪快に笑った。
それからは、長旅だった。
ルカの髪を茶色に染めて旅に出た。
船に乗って、馬車に乗って。
お金が無かったので、ヒッチハイクばかりだったせいか、3ヵ月かかって、ガルーダ王国についた。
ルカは、目を輝かせた。
「かーさま!かーさま!!見て見て!!」
行きかう人が、金髪碧眼だった。
エマも、胸が高鳴った。
この子の父親は、この国の人なのではないか?
どんな人だったのか?私は、ここに来たことがあるのか?
・・・何も思いだせない。
あ、夢。あのたまに見る、夢の中の男性。
もしかすると、私の記憶なのかもしれない。
「私って、意外と面食いだったのかも」
「?かーさま?」
「ううん。なんでもないわ。」
ルカは、屋台で買った肉まんを美味しそうに頬張る。
「今日はここに泊まりましょう。ウォステリアまで、もう少しだよ。」
「うん!」
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