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30話 後悔
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そこは、城の一室。
魔法陣が描かれた、移動に使用する部屋だった。
血だらけの、サミュエルに抱きついて、サラは泣き叫んだ。
「助けて!彼を助けて!お願い・・う・・・うわぁぁぁぁぁ!」
すぐさま、治癒魔法使いのお姉さんが駆け寄る。
「・・・・副団長・・!サミュエル副長!!」
治癒魔法をかけながら呼びかけるも、反応が無い。
ピクリとも動かずに、グッタリとして動かない。
ダラリと降ろされた腕を血が伝い、血が床を染めていく。
「団長!!傷が深すぎます!治療魔法師を数名呼んでください!!」
レオンが、胸元の魔道具で、他の魔術師に応援を指示する。
サラは、ひたすらに叫んだ。
「サミュエルさん!!死なないで!お願い!嫌だ!嫌!いやだぁあ!」
子供のように泣きじゃくって、サミュエルを離そうとしない姿に、全員が黙り込んだ。
「うわぁぁあ!助けて!助けて!!」
見かねて、
レオン団長がサラの隣に、しゃがみ込む。
「サラ様、治療しますから離れてください。さぁ、立ってください。」
なだめるように言う。
けれど、サラは、サミュエルの血で濡れた血だらけの手で、レオンにしがみついて叫ぶ。
「た・・・助けて!お願い!!サミュエルさんを助けて!!」
そこへ、つかつかとアーサーが近寄り、レオン団長を払いのける。
アーサーは、かなり強引に、しがみつくサラから、レオン団長を引き離す。
そのまま、パン!と、サラに平手打ちした。
ドサッ!と床に転ぶ。
床に転がったサラを、庇うようにテルマが支える。
咄嗟に、アモン騎士団長がアーサーを抑える。
見たこともない顔で、アーサーは怒っていた。
「おまえの、軽率で身勝手な行動が、こうゆうことになるんだ!!何故分からない?!何かを失ってからでは遅いんだぞ!!」
サラの体が、ガクガクと震えて大粒の涙が溢れだし、しゃくりあげていた。
「ごめんなさい。う・・・・うう・・・ごめんなさい。ひっく!・・・お願い・・・助けて!!・・・・彼を助けて・・・うあああああん。うあああああ。」
血だらけの手で、涙をぬぐうので顔が血で染まっていく。
テルマさんが動いた。
「陛下。どうか、サラ様を自室にお連れすることを、お許しください。」
そう言ってサラを抱えるが、サラは完全に力が抜けて動けなかった。
「嫌だ!・・・嫌だ・・・サミュエルさんの傍に・・・いる!」
しゃくりあげながら言うと、サラの傍で膝をつき、レオン団長が優しい声で言う。
「大丈夫ですよ。あいつ、なんとか生きてますから。それよりも、あなたは?お怪我ありませんか?」
それを聞いて、サラは再びうめき声を上げる。
「うぅ・・・!!ごめんなさい。ひぃっく・・・うぅぅ・・・。」
次々と、魔術師が転移魔法で姿を現し、サミュエルの治療にとりかかる。
最初から居た、治療魔法師の女性が言う。
「あばら4本と鎖骨、足も折れてますね。まだ、移動させないでください。とりあえず血を止めなくては!」
2人目の治療魔法師が、治療魔法をかけながら言う。
「副長!副団長、聞こえますか?・・・意識は、まだですね。あ、左腕も折れてます。」
3人目の治療魔法師が言う。
「手分けしてやりましょう。」
・・・腕も?足も?
最後にサミュエルは、その腕で、サラをしっかりと抱きかかえたのを思い出す。
「う・・・!うぅぅ・・・。」
サラは、額を床にくっつけて、呻き泣いた。
「サラ様・・・。サラ様。きっと大丈夫です。さぁ、血を拭きましょう。」
動かないサラに、テルマがオロオロしながら、なんとか立たせようとする。
見かねたウィルが、テルマの肩に手を置く。
かがみこむと、サラを抱き起こした。
「サラ様。治療の邪魔になってしまいますから、行きましょう。」
ウィルは、ひょい!とサラを横抱きにして、部屋へと歩きだした。
廊下で、ウィルが静かに話してくれる。
「すごく心配したんですよ?それはもう、陛下が一番。・・・おわかりですね?」
ウィルは、ふふっと笑った。
「レオン団長が隠してることがすぐにバレて、もう、すごい乱闘でした。レオン団長ったら魔法省に立て籠もりするとか言い出して、もう大人気無いんだから。でも、もう少しで国内紛争かとヒヤヒヤしました。」
少し黙ってから、でも、と続けた。
「サミュエル副長からSOS信号と、転移誘導が作動した時は、レオン団長と陛下が団結したからホッとしましたが・・・・よほどの事なので、全員慌てました。」
ともあれ、ご無事でよかった。
そう言って、ウィルはサラを部屋まで送ると、去って行った。
テルマさんに、お風呂に入れられ、体中を洗われた。
その間も、涙と震えが止まらなかった。
「ごめんなさい・・・・。」
テルマさんに謝ると、手を握られる。
「・・・ウィルと同じです。本当にご無事でよかったです。」
一人になりたいと言うと、いつでも呼んでくださいと言い残して出て行った。
眠れなかった。
私は、女神ではないと思っていた。
普通の人間のフリをして、女神の地位を利用した。
なんてわがままで、身勝手なんだろう。
魔法省は独立した組織とはいえ、女神である私を守るという責任をはたした。
自分の行動が、人の命を奪うことになる。
これが、上に立つ人間の責任。
ベッドで震えて泣いていると、部屋のドアが開いた。
誰かが、ベッドに近づいてくる音がした。
顔だけ持ち上げると、そこには、アーサーがいた。
ベッドに腰掛けると、サラに手を伸ばす。
叩かれた方の頬に優しく触れて、そっと撫でる。
怒っているのは分かってる、だけどアーサーの胸に顔を突っ伏する。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
アーサーが、息を吸い込む音がして、それから、穏やかな声が響く。
「数刻前、サミュエルもなんとか傷か治って、少し話をした。」
アーサーは、そう言いながら、サラの頭に手を置いた。
「おまえが、何故あんな行動をとったのかも、レオンとサミュエルから話は聞いた。」
自分の情け無さに涙が出る。
「違う・・・違うの」泣きながら話続ける。
この手を伝った、サミュエルさんの温かい血を思い出す。
彼は自分を盾にしただけじゃない、確実に私を助けるようにアーサー達を呼んでくれた。
魔石や魔道具は彼に任せていたので、その準備をしていてくれたのだ。
いざとなったら、最初からそうする覚悟で。
みんな、どんな状況であっても、自分の立場をわきまえて、責任を果たしている。
それなのに・・・私は・・・・私は。
「そうか。サミュエルも立派な副団長だからな。」
アーサーは静かな声で、そう言った。
サラの部屋へ来る、少し前のこと。
傷口がふさがりはじめて、サミュエルが「サラ様は?」と言った。
レオンは、すぐにサミュエルの傍に行く。
「ご無事だ。よくやった」とレオンは褒めた。サミュエルは、ニカッと笑う。
そして、静かに言った。
「サラ様は、我が国に必要な方だ。」
大きく息を吐くと、彼はアーサーを見て続けた。
「あの方は、サラ様は、この国に必要な方です。俺は、あの方の力になれて光栄です。」
サミュエルは、自分の胸に手を置いて、深呼吸すると話し続けた。
「サラ様が考えるこの国の未来を・・・俺は見てみたいと思った。だから、すみません。危険を承知で、ついて行ってしまいました。サラ様を、そんなに責めないでください。」
暫しの沈黙の後、レオン団長が沈黙を破る。
「おまえ、ずっと意識はあったな?」
「ははは。声出したら、吐血しそうだったんですよ。しかし・・・・あんなに泣かれるとは思いませんでしたよ。」
ゴードンが、この一件の責任は、魔法省がとるのでしょうか?
と言うと、レオン団長が笑いながら「いいえ。」と言った。
「我々は、次期王妃様をお守りしたに過ぎません。」
次期王妃と、魔法省のトップが言った。
アーサーは、それを聞いて深いため息をついた。
「サラ。。。」
ギュッと、抱きしめる。
「無事で本当に良かった。」
アーサーの声は、穏やかだった。
サラの体は、まだ震えていた。小さく「ごめんなさい」と繰り返す。
しっかりと抱きしめて、大丈夫だとなだめる。
アーサーには、サラの気持ちは、痛いほどわかる。
自分の為に、誰かの命が奪われる痛み。人の命を預かる責任。
強くなるんだ。サラ。
どんなに泣いても構わない。
それでも立ち上がって、強く前を見るんだ。
そう、願いながら、サラを抱きしめた。
空は白みがかって、もうすぐ朝焼けだった。
魔法陣が描かれた、移動に使用する部屋だった。
血だらけの、サミュエルに抱きついて、サラは泣き叫んだ。
「助けて!彼を助けて!お願い・・う・・・うわぁぁぁぁぁ!」
すぐさま、治癒魔法使いのお姉さんが駆け寄る。
「・・・・副団長・・!サミュエル副長!!」
治癒魔法をかけながら呼びかけるも、反応が無い。
ピクリとも動かずに、グッタリとして動かない。
ダラリと降ろされた腕を血が伝い、血が床を染めていく。
「団長!!傷が深すぎます!治療魔法師を数名呼んでください!!」
レオンが、胸元の魔道具で、他の魔術師に応援を指示する。
サラは、ひたすらに叫んだ。
「サミュエルさん!!死なないで!お願い!嫌だ!嫌!いやだぁあ!」
子供のように泣きじゃくって、サミュエルを離そうとしない姿に、全員が黙り込んだ。
「うわぁぁあ!助けて!助けて!!」
見かねて、
レオン団長がサラの隣に、しゃがみ込む。
「サラ様、治療しますから離れてください。さぁ、立ってください。」
なだめるように言う。
けれど、サラは、サミュエルの血で濡れた血だらけの手で、レオンにしがみついて叫ぶ。
「た・・・助けて!お願い!!サミュエルさんを助けて!!」
そこへ、つかつかとアーサーが近寄り、レオン団長を払いのける。
アーサーは、かなり強引に、しがみつくサラから、レオン団長を引き離す。
そのまま、パン!と、サラに平手打ちした。
ドサッ!と床に転ぶ。
床に転がったサラを、庇うようにテルマが支える。
咄嗟に、アモン騎士団長がアーサーを抑える。
見たこともない顔で、アーサーは怒っていた。
「おまえの、軽率で身勝手な行動が、こうゆうことになるんだ!!何故分からない?!何かを失ってからでは遅いんだぞ!!」
サラの体が、ガクガクと震えて大粒の涙が溢れだし、しゃくりあげていた。
「ごめんなさい。う・・・・うう・・・ごめんなさい。ひっく!・・・お願い・・・助けて!!・・・・彼を助けて・・・うあああああん。うあああああ。」
血だらけの手で、涙をぬぐうので顔が血で染まっていく。
テルマさんが動いた。
「陛下。どうか、サラ様を自室にお連れすることを、お許しください。」
そう言ってサラを抱えるが、サラは完全に力が抜けて動けなかった。
「嫌だ!・・・嫌だ・・・サミュエルさんの傍に・・・いる!」
しゃくりあげながら言うと、サラの傍で膝をつき、レオン団長が優しい声で言う。
「大丈夫ですよ。あいつ、なんとか生きてますから。それよりも、あなたは?お怪我ありませんか?」
それを聞いて、サラは再びうめき声を上げる。
「うぅ・・・!!ごめんなさい。ひぃっく・・・うぅぅ・・・。」
次々と、魔術師が転移魔法で姿を現し、サミュエルの治療にとりかかる。
最初から居た、治療魔法師の女性が言う。
「あばら4本と鎖骨、足も折れてますね。まだ、移動させないでください。とりあえず血を止めなくては!」
2人目の治療魔法師が、治療魔法をかけながら言う。
「副長!副団長、聞こえますか?・・・意識は、まだですね。あ、左腕も折れてます。」
3人目の治療魔法師が言う。
「手分けしてやりましょう。」
・・・腕も?足も?
最後にサミュエルは、その腕で、サラをしっかりと抱きかかえたのを思い出す。
「う・・・!うぅぅ・・・。」
サラは、額を床にくっつけて、呻き泣いた。
「サラ様・・・。サラ様。きっと大丈夫です。さぁ、血を拭きましょう。」
動かないサラに、テルマがオロオロしながら、なんとか立たせようとする。
見かねたウィルが、テルマの肩に手を置く。
かがみこむと、サラを抱き起こした。
「サラ様。治療の邪魔になってしまいますから、行きましょう。」
ウィルは、ひょい!とサラを横抱きにして、部屋へと歩きだした。
廊下で、ウィルが静かに話してくれる。
「すごく心配したんですよ?それはもう、陛下が一番。・・・おわかりですね?」
ウィルは、ふふっと笑った。
「レオン団長が隠してることがすぐにバレて、もう、すごい乱闘でした。レオン団長ったら魔法省に立て籠もりするとか言い出して、もう大人気無いんだから。でも、もう少しで国内紛争かとヒヤヒヤしました。」
少し黙ってから、でも、と続けた。
「サミュエル副長からSOS信号と、転移誘導が作動した時は、レオン団長と陛下が団結したからホッとしましたが・・・・よほどの事なので、全員慌てました。」
ともあれ、ご無事でよかった。
そう言って、ウィルはサラを部屋まで送ると、去って行った。
テルマさんに、お風呂に入れられ、体中を洗われた。
その間も、涙と震えが止まらなかった。
「ごめんなさい・・・・。」
テルマさんに謝ると、手を握られる。
「・・・ウィルと同じです。本当にご無事でよかったです。」
一人になりたいと言うと、いつでも呼んでくださいと言い残して出て行った。
眠れなかった。
私は、女神ではないと思っていた。
普通の人間のフリをして、女神の地位を利用した。
なんてわがままで、身勝手なんだろう。
魔法省は独立した組織とはいえ、女神である私を守るという責任をはたした。
自分の行動が、人の命を奪うことになる。
これが、上に立つ人間の責任。
ベッドで震えて泣いていると、部屋のドアが開いた。
誰かが、ベッドに近づいてくる音がした。
顔だけ持ち上げると、そこには、アーサーがいた。
ベッドに腰掛けると、サラに手を伸ばす。
叩かれた方の頬に優しく触れて、そっと撫でる。
怒っているのは分かってる、だけどアーサーの胸に顔を突っ伏する。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
アーサーが、息を吸い込む音がして、それから、穏やかな声が響く。
「数刻前、サミュエルもなんとか傷か治って、少し話をした。」
アーサーは、そう言いながら、サラの頭に手を置いた。
「おまえが、何故あんな行動をとったのかも、レオンとサミュエルから話は聞いた。」
自分の情け無さに涙が出る。
「違う・・・違うの」泣きながら話続ける。
この手を伝った、サミュエルさんの温かい血を思い出す。
彼は自分を盾にしただけじゃない、確実に私を助けるようにアーサー達を呼んでくれた。
魔石や魔道具は彼に任せていたので、その準備をしていてくれたのだ。
いざとなったら、最初からそうする覚悟で。
みんな、どんな状況であっても、自分の立場をわきまえて、責任を果たしている。
それなのに・・・私は・・・・私は。
「そうか。サミュエルも立派な副団長だからな。」
アーサーは静かな声で、そう言った。
サラの部屋へ来る、少し前のこと。
傷口がふさがりはじめて、サミュエルが「サラ様は?」と言った。
レオンは、すぐにサミュエルの傍に行く。
「ご無事だ。よくやった」とレオンは褒めた。サミュエルは、ニカッと笑う。
そして、静かに言った。
「サラ様は、我が国に必要な方だ。」
大きく息を吐くと、彼はアーサーを見て続けた。
「あの方は、サラ様は、この国に必要な方です。俺は、あの方の力になれて光栄です。」
サミュエルは、自分の胸に手を置いて、深呼吸すると話し続けた。
「サラ様が考えるこの国の未来を・・・俺は見てみたいと思った。だから、すみません。危険を承知で、ついて行ってしまいました。サラ様を、そんなに責めないでください。」
暫しの沈黙の後、レオン団長が沈黙を破る。
「おまえ、ずっと意識はあったな?」
「ははは。声出したら、吐血しそうだったんですよ。しかし・・・・あんなに泣かれるとは思いませんでしたよ。」
ゴードンが、この一件の責任は、魔法省がとるのでしょうか?
と言うと、レオン団長が笑いながら「いいえ。」と言った。
「我々は、次期王妃様をお守りしたに過ぎません。」
次期王妃と、魔法省のトップが言った。
アーサーは、それを聞いて深いため息をついた。
「サラ。。。」
ギュッと、抱きしめる。
「無事で本当に良かった。」
アーサーの声は、穏やかだった。
サラの体は、まだ震えていた。小さく「ごめんなさい」と繰り返す。
しっかりと抱きしめて、大丈夫だとなだめる。
アーサーには、サラの気持ちは、痛いほどわかる。
自分の為に、誰かの命が奪われる痛み。人の命を預かる責任。
強くなるんだ。サラ。
どんなに泣いても構わない。
それでも立ち上がって、強く前を見るんだ。
そう、願いながら、サラを抱きしめた。
空は白みがかって、もうすぐ朝焼けだった。
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