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最終話
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夜会の翌日。
予想通り、ローザはカンカンに怒っていた…。
ローザの兄である侯爵は、仕方ないなぁと苦笑いしながらも言った。
「一応、婚約者は決まったので、気にしないでほしい。兄としては、信頼のおける男だから良かったのだがね。」
前々から侯爵が考えていた親しい相手と、ローザ様は婚約されることになったらしい。
また、会う約束をして、私たちは伯爵家へ戻った。
再び長旅だったけれども、私は兄と様々な話をしたり、訪れる街で観光したりとリヴェリアの旅を楽しんだ。
そうして、リヴェリアの現状などを知りながら、変わり行く時代を感じている。サヨナラすら言わずに別れた、人たちのことも、時々思い出した。
この先、エヴァンの妃として、ヴァルシアに行ったら、やりたいことが何個か出て来た。
道中、指輪の通信装置で、エヴァンにその話をしていると、彼は笑った。
「フィオナの、そうゆう所が好きだ。どんな経験も、生かす事ができる。強くて真っすぐで、一生懸命。会うたびに違う顔を見せてきて、飽きないしな。」
最後は皮肉のつもりなんだろうけど、私は嬉しかった。
「違う顔かぁ。ふふ、変身は得意よ。立派な母親役も、女王役も、兵士役も、暗殺者にもなれるわ!そんな女でも好き?」
そう言うと、エヴァンは子供っぽく笑う。
「これから、そうするんだろう?王妃役と、それから優秀な母親役。ただ、私の前でだけは、ありのままがいい。私の前でだけは、ありのままの可愛いおまえがいい。」
なんだか、甘い雰囲気に飲まれていく。
「ありのままの私って、どんな女?」
「そうだな。気が強いくせに、ちょっと自信が無くて。」
「え~?!なにそれヤダなぁ。」
「ははは。それから泣き虫で。」
「それは、あなたのせい!」
「それから、そうだな。おまえは、自分よりも他人を優先するような、優しい女だ。」
「……そうかな。」
「あとは、エロい。」
「それは、そっちでしょ!!」
そんな、会話をしながらも、会いたい気持ちが募っていく。
そうして伯爵家に戻ると、母が見違えるほどの女主人ぶりを見せていた。
留守中の事務処理や、館の立て直しなど、忙しくしていた。それから、手紙をたくさん見せてきて言った。
「大変だわ。ミゲルに何通も婚約したいという申込の手紙が届いているのよ」
「お兄様に?!」
3人で手紙を囲んで、兄にピッタリの女性は誰かと話し合う。本当に、次から次へと、順風満帆に事が運んで行った。
そうして、私にも。
数日後、ヴァルシア王国の騎士団が屋敷に現れて、言った。
「フィオナ・レイン伯爵令嬢。お迎えに上がりました。」
私は再び、あの魔法の馬車に乗って、ヴァルシア王国のお城に向かった。
あの時とは全く違う気持ちで、眼下に広がるヴァルシア王国を見る。先日、エヴァンが言ってくれた言葉を思い出す。
「おまえなら出来る。全ての知識を使って、王妃を演じられるだろう。そして、人の痛みが解る心ある政治をするはずだ。」
そうでありたいと思う。
ううん。私はきっと出来る。
演じるなら、自信があるもの。
その時、馬車がお城の前に到着した。
懐かしい城内に1歩入れば、感じる。あの人の魔力。
高貴な女性らしく、背筋を伸ばし、堂々たる風貌で廊下を歩いて行く。
階段を上り始めてから、見上げる。
階段の踊り場で、嬉しそうに笑うエヴァンがいた。
いつの間にか、お互いに駆け出していて、抱き合う。
「おかえり、フィオナ。」
「エヴァン…!」
嬉しくて、嬉しくて。何度も互いに抱きしめあって、お互いの香りや肌の感触を確かめ合う。
それからは、エヴァンは私をこれでもかと言う程に甘やかした。
結婚式は盛大に執り行い、母も兄も出席した。レイン伯爵家には多すぎる程の資金を送り、大富豪になっていた。何もかも、彼と出会って、私の人生は変わった。
「エヴァン。ありがとう。あなたに出会ってから、私は幸せだわ。何もかも、あなたから貰ってばかりね。」
そう言うと、エヴァンは私をベッドに引きずり込みながら、笑って言う。
「私は、おまえと一緒に居られて、幸せなんだ。だから、今まで、どんな状況でも全て自分の力に変えて生きてきてくれたお前に、感謝するよ。フィオナの兄上にも、なんとか今まで耐えてきてくれたこと、感謝している。それが、今、全てがこのためだったのだと思えるのだ。」
ギュウと、私を抱きしめる。そして、エヴァンは噛みしめるように言った。
「どんなに辛い時があっても、何とか生きていける。人はとても強い。その強さは、とても美しい。」
エヴァンの言葉が、私にはよく分からなかった。けれど、そう言って笑う、あなたは優しい目でキラキラ輝いて見えた。
結局、私たちは、周囲があきれるほどに、いつまでもいつまでも、仲睦まじくくらしたのでした。
予想通り、ローザはカンカンに怒っていた…。
ローザの兄である侯爵は、仕方ないなぁと苦笑いしながらも言った。
「一応、婚約者は決まったので、気にしないでほしい。兄としては、信頼のおける男だから良かったのだがね。」
前々から侯爵が考えていた親しい相手と、ローザ様は婚約されることになったらしい。
また、会う約束をして、私たちは伯爵家へ戻った。
再び長旅だったけれども、私は兄と様々な話をしたり、訪れる街で観光したりとリヴェリアの旅を楽しんだ。
そうして、リヴェリアの現状などを知りながら、変わり行く時代を感じている。サヨナラすら言わずに別れた、人たちのことも、時々思い出した。
この先、エヴァンの妃として、ヴァルシアに行ったら、やりたいことが何個か出て来た。
道中、指輪の通信装置で、エヴァンにその話をしていると、彼は笑った。
「フィオナの、そうゆう所が好きだ。どんな経験も、生かす事ができる。強くて真っすぐで、一生懸命。会うたびに違う顔を見せてきて、飽きないしな。」
最後は皮肉のつもりなんだろうけど、私は嬉しかった。
「違う顔かぁ。ふふ、変身は得意よ。立派な母親役も、女王役も、兵士役も、暗殺者にもなれるわ!そんな女でも好き?」
そう言うと、エヴァンは子供っぽく笑う。
「これから、そうするんだろう?王妃役と、それから優秀な母親役。ただ、私の前でだけは、ありのままがいい。私の前でだけは、ありのままの可愛いおまえがいい。」
なんだか、甘い雰囲気に飲まれていく。
「ありのままの私って、どんな女?」
「そうだな。気が強いくせに、ちょっと自信が無くて。」
「え~?!なにそれヤダなぁ。」
「ははは。それから泣き虫で。」
「それは、あなたのせい!」
「それから、そうだな。おまえは、自分よりも他人を優先するような、優しい女だ。」
「……そうかな。」
「あとは、エロい。」
「それは、そっちでしょ!!」
そんな、会話をしながらも、会いたい気持ちが募っていく。
そうして伯爵家に戻ると、母が見違えるほどの女主人ぶりを見せていた。
留守中の事務処理や、館の立て直しなど、忙しくしていた。それから、手紙をたくさん見せてきて言った。
「大変だわ。ミゲルに何通も婚約したいという申込の手紙が届いているのよ」
「お兄様に?!」
3人で手紙を囲んで、兄にピッタリの女性は誰かと話し合う。本当に、次から次へと、順風満帆に事が運んで行った。
そうして、私にも。
数日後、ヴァルシア王国の騎士団が屋敷に現れて、言った。
「フィオナ・レイン伯爵令嬢。お迎えに上がりました。」
私は再び、あの魔法の馬車に乗って、ヴァルシア王国のお城に向かった。
あの時とは全く違う気持ちで、眼下に広がるヴァルシア王国を見る。先日、エヴァンが言ってくれた言葉を思い出す。
「おまえなら出来る。全ての知識を使って、王妃を演じられるだろう。そして、人の痛みが解る心ある政治をするはずだ。」
そうでありたいと思う。
ううん。私はきっと出来る。
演じるなら、自信があるもの。
その時、馬車がお城の前に到着した。
懐かしい城内に1歩入れば、感じる。あの人の魔力。
高貴な女性らしく、背筋を伸ばし、堂々たる風貌で廊下を歩いて行く。
階段を上り始めてから、見上げる。
階段の踊り場で、嬉しそうに笑うエヴァンがいた。
いつの間にか、お互いに駆け出していて、抱き合う。
「おかえり、フィオナ。」
「エヴァン…!」
嬉しくて、嬉しくて。何度も互いに抱きしめあって、お互いの香りや肌の感触を確かめ合う。
それからは、エヴァンは私をこれでもかと言う程に甘やかした。
結婚式は盛大に執り行い、母も兄も出席した。レイン伯爵家には多すぎる程の資金を送り、大富豪になっていた。何もかも、彼と出会って、私の人生は変わった。
「エヴァン。ありがとう。あなたに出会ってから、私は幸せだわ。何もかも、あなたから貰ってばかりね。」
そう言うと、エヴァンは私をベッドに引きずり込みながら、笑って言う。
「私は、おまえと一緒に居られて、幸せなんだ。だから、今まで、どんな状況でも全て自分の力に変えて生きてきてくれたお前に、感謝するよ。フィオナの兄上にも、なんとか今まで耐えてきてくれたこと、感謝している。それが、今、全てがこのためだったのだと思えるのだ。」
ギュウと、私を抱きしめる。そして、エヴァンは噛みしめるように言った。
「どんなに辛い時があっても、何とか生きていける。人はとても強い。その強さは、とても美しい。」
エヴァンの言葉が、私にはよく分からなかった。けれど、そう言って笑う、あなたは優しい目でキラキラ輝いて見えた。
結局、私たちは、周囲があきれるほどに、いつまでもいつまでも、仲睦まじくくらしたのでした。
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