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公爵令嬢ローザ・アーデルバート
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その日の夜。
侯爵と妹ローザ、兄と私の4人で晩餐となった。
ローザは、相変わらずツンケンしていたけれど、仕方のないことなので、あえて触れないようにした。触らぬ神にたたりなしなのである。
そこへ、メイドたちが、ニコニコと私に気を使ってくれるのが分かる。すると、その様子を見ていた侯爵が言った。
「フィオナ嬢は、使用人に好かれたようだ。気立ての良いご令嬢で感心する。庭の老木に、花を咲かせてくれたとか?皆、喜んでいた。ありがとう。」
すると兄が嬉しそうにする。
「妹は魔法が使えます。お力になれたのなら何よりです。」
「フィオナ嬢の噂はかねがね。妖精だとか魔術師だとか。それにしても、魔法は無償で使って貰えるものではない。気前よく、何でもしてくれたと聞いている。礼を言う。」
そうなのだ。リヴェリアでは特に、魔法は貴重で価値のあるものだ。私としては、大した事の無いことなのだけれど。
「勝手な事を致しましたが、喜んでいただけたようで良かったですわ。」
作り笑いを浮かべると、目の前にいたローザが厳しい口調で言った。
「屋敷に宿泊させてあげてるのよ。その位のことをして当然よ」
あくまでも、気に入らない様子だ。
「ローザ。是非、我が家に宿泊して欲しいと頼んだのは私だ。それにな、レイン伯爵家は歴史ある由緒正しき家柄だ。是非、昔のように再建されることを、この私が願っているんだ。」
その侯爵様の言葉に、兄は嬉しそうにする。
「侯爵様。心強いお言葉、ありがとうございます。」
兄と侯爵の関係性は、良好だ。しかし、私がご令嬢とこんな関係では良くないだろう。とは言え、あからさまに嫌われているのに、どうすることも出来ない。何かすれば余計に嫌われてしまいそうだしなぁ。
そんなことを考えていると、侯爵が気を使ったのか、話題を振ってくれた。
「そういえば、お土産に頂いた、月光ローズのお茶があったな?」
侯爵の言葉に、メイドがお辞儀をして、茶葉と共に月光ローズの蕾を持ってくる。
私は、率先して言った。
「よろしければ、私がお茶をお入れしましょう。」
そして、ほのかに光る蕾をテーブルに飾る。立ち上がって、お茶の準備をすると、ローザはつぶやいた。
「…綺麗」
興味津々の様子だ。目を輝かせて見つめている。
私はニッコリ笑って、侯爵令嬢の傍に蕾を持って行く。
「触ってみますか?香りも良いのですよ。」
手を伸ばしかけて、ローザはプイッと拒否した。私への抵抗があるのだろう。
仕方がないので、お茶を淹れに行き、説明をする。
「この花は、蕾にこそ魔力を含んでおりますが、花開くと消えてしまいます。しかし、その花は、この様に香りも良く、見た目も綺麗ですから、兄がハーブティーにしてはどうかと、試行錯誤して作りました。」
全員に淹れてふるまうと、侯爵は一口飲んで頷いた。
「これは、良い!香りも味も、気に入ったよ。他には無いものだ。」
私と兄は、互いにヤッターと微笑み合う。
兄と侯爵様の話が盛り上がる中、私が視線を向けると、ローザ様はそっぽを向いてしまう。仕方が無いので、少し話をふった。
「侯爵令嬢は、明日の夜会で社交界デビューされるのだと伺いました。おめでとうございます。」
すると、ローザは私の方を睨みつけて言った。
「えぇ。そうよ。あなたも、明日デビューされるそうね?20歳でなんてギリギリじゃない?」
まぁ、その通りなので、 私はテヘッと笑って見せる。
「そうですね。お恥ずかしながら、遅くなってしまいました。私は、夜会に出席出来て、本当に嬉しく思っています。女性であれば必ず夢見る、アーデルバート侯爵家の夜会ですから。もう、天にも昇るほどに嬉しくて、ついワクワクしてしまい、はしたなくも、あちこちで魔法を使ってしまった次第です。」
まぁ、それだけでは無いのだけれど、ワクワク浮かれてしまっているのは本当だ。
「ははははは!そんなに喜んで頂けて光栄だよ。明日の夜会はね、毎年秋の恒例なんだ。良かったら、是非、毎年出席して頂けると嬉しい。」
「はい。是非!」
はぁ~♬私の社交も悪く無いかも!これで伯爵家も本当に安泰!と思った瞬間だった。侯爵令嬢が言い出した。
「明日の主役は、私よ!私の婚約者を決めてから、あなたにピッタリの殿方を見繕って差し上げるわ!」
……え?
「あ、侯爵令嬢、その、私は特に…婚約者は探してはおりませんので…」
「嘘仰い!!言っておきますけどね、お兄様はダメよ!あなたが姉になるとかムリですわ!それと、私が気に入った殿方を誘惑したりしたら、絶対に許しませんからね!!」
「え、あ、はい。」
ん?なんか嫌な予感するようでしないような…。
困り顔になってしまった侯爵までもが言う。
「妹は明日の夜会で、婚約者を決めたいそうなんだ。フィオナ嬢も、まだ婚約者が居ないと聞く。良かったら私の方から紹介しよう。」
なんだろう…なんか嫌な予感。
私も兄も、引きつった笑顔になり、妙に不安になった。
侯爵と妹ローザ、兄と私の4人で晩餐となった。
ローザは、相変わらずツンケンしていたけれど、仕方のないことなので、あえて触れないようにした。触らぬ神にたたりなしなのである。
そこへ、メイドたちが、ニコニコと私に気を使ってくれるのが分かる。すると、その様子を見ていた侯爵が言った。
「フィオナ嬢は、使用人に好かれたようだ。気立ての良いご令嬢で感心する。庭の老木に、花を咲かせてくれたとか?皆、喜んでいた。ありがとう。」
すると兄が嬉しそうにする。
「妹は魔法が使えます。お力になれたのなら何よりです。」
「フィオナ嬢の噂はかねがね。妖精だとか魔術師だとか。それにしても、魔法は無償で使って貰えるものではない。気前よく、何でもしてくれたと聞いている。礼を言う。」
そうなのだ。リヴェリアでは特に、魔法は貴重で価値のあるものだ。私としては、大した事の無いことなのだけれど。
「勝手な事を致しましたが、喜んでいただけたようで良かったですわ。」
作り笑いを浮かべると、目の前にいたローザが厳しい口調で言った。
「屋敷に宿泊させてあげてるのよ。その位のことをして当然よ」
あくまでも、気に入らない様子だ。
「ローザ。是非、我が家に宿泊して欲しいと頼んだのは私だ。それにな、レイン伯爵家は歴史ある由緒正しき家柄だ。是非、昔のように再建されることを、この私が願っているんだ。」
その侯爵様の言葉に、兄は嬉しそうにする。
「侯爵様。心強いお言葉、ありがとうございます。」
兄と侯爵の関係性は、良好だ。しかし、私がご令嬢とこんな関係では良くないだろう。とは言え、あからさまに嫌われているのに、どうすることも出来ない。何かすれば余計に嫌われてしまいそうだしなぁ。
そんなことを考えていると、侯爵が気を使ったのか、話題を振ってくれた。
「そういえば、お土産に頂いた、月光ローズのお茶があったな?」
侯爵の言葉に、メイドがお辞儀をして、茶葉と共に月光ローズの蕾を持ってくる。
私は、率先して言った。
「よろしければ、私がお茶をお入れしましょう。」
そして、ほのかに光る蕾をテーブルに飾る。立ち上がって、お茶の準備をすると、ローザはつぶやいた。
「…綺麗」
興味津々の様子だ。目を輝かせて見つめている。
私はニッコリ笑って、侯爵令嬢の傍に蕾を持って行く。
「触ってみますか?香りも良いのですよ。」
手を伸ばしかけて、ローザはプイッと拒否した。私への抵抗があるのだろう。
仕方がないので、お茶を淹れに行き、説明をする。
「この花は、蕾にこそ魔力を含んでおりますが、花開くと消えてしまいます。しかし、その花は、この様に香りも良く、見た目も綺麗ですから、兄がハーブティーにしてはどうかと、試行錯誤して作りました。」
全員に淹れてふるまうと、侯爵は一口飲んで頷いた。
「これは、良い!香りも味も、気に入ったよ。他には無いものだ。」
私と兄は、互いにヤッターと微笑み合う。
兄と侯爵様の話が盛り上がる中、私が視線を向けると、ローザ様はそっぽを向いてしまう。仕方が無いので、少し話をふった。
「侯爵令嬢は、明日の夜会で社交界デビューされるのだと伺いました。おめでとうございます。」
すると、ローザは私の方を睨みつけて言った。
「えぇ。そうよ。あなたも、明日デビューされるそうね?20歳でなんてギリギリじゃない?」
まぁ、その通りなので、 私はテヘッと笑って見せる。
「そうですね。お恥ずかしながら、遅くなってしまいました。私は、夜会に出席出来て、本当に嬉しく思っています。女性であれば必ず夢見る、アーデルバート侯爵家の夜会ですから。もう、天にも昇るほどに嬉しくて、ついワクワクしてしまい、はしたなくも、あちこちで魔法を使ってしまった次第です。」
まぁ、それだけでは無いのだけれど、ワクワク浮かれてしまっているのは本当だ。
「ははははは!そんなに喜んで頂けて光栄だよ。明日の夜会はね、毎年秋の恒例なんだ。良かったら、是非、毎年出席して頂けると嬉しい。」
「はい。是非!」
はぁ~♬私の社交も悪く無いかも!これで伯爵家も本当に安泰!と思った瞬間だった。侯爵令嬢が言い出した。
「明日の主役は、私よ!私の婚約者を決めてから、あなたにピッタリの殿方を見繕って差し上げるわ!」
……え?
「あ、侯爵令嬢、その、私は特に…婚約者は探してはおりませんので…」
「嘘仰い!!言っておきますけどね、お兄様はダメよ!あなたが姉になるとかムリですわ!それと、私が気に入った殿方を誘惑したりしたら、絶対に許しませんからね!!」
「え、あ、はい。」
ん?なんか嫌な予感するようでしないような…。
困り顔になってしまった侯爵までもが言う。
「妹は明日の夜会で、婚約者を決めたいそうなんだ。フィオナ嬢も、まだ婚約者が居ないと聞く。良かったら私の方から紹介しよう。」
なんだろう…なんか嫌な予感。
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