影の刺客と偽りの花嫁

月野さと

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月光の夜 ※

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 緑色の目が、私を見つめる。
 目を反らす事が出来ない。
 見つめ合って、触れるだけのキスをする。
 気持ちが高ぶってしまって、ドクンドクンと心臓が鼓動する。そのせいで息が詰まりそうになる。視線を落として、溜め息をつくと、エヴァンは私の顎を持ち上げて、もう1度キスをした。
 手を伸ばすと、彼の手が私を捕まえて、指を絡ませる。そのまま、手をつないだままで、角度を何度も変えて、何度もキスをした。
 好きだ。
 あなたが、好きだ。
 そう、口から零れ出てしまいそうなほどに、心の中で叫んだ。
 2人で、ベッドに倒れこむと、エヴァンは部屋の灯りを消してしまった。驚いて、彼の目を覗き込む。

「今日は、月明かりだけでいい。」
 彼はそう言って、私を組み敷いたまま、再度キスをした。お互いの気持ちを確かめ合うかのように。見つめ合って、キスをして。頬をくっつけてから、またキスをする。なんだか照れくさくて下を向くと、おでこをくっつけられて、またキスをした。

 愛されている。そう、実感する。
 大事にしてくれる。それが熱い肌から感じる。
 
 それなのに…これは全部、セシリア王女に向けられたものだ。私じゃない。本当の私にじゃない!

「セシリア…?」
 気がつくと、私は、エヴァンの体を貪るように、キスをして激しく愛撫しまくっていた。
 …だって、あなたからされると、全部ウソになってしまう気がした。
 この優しいキスも、肌の熱さも、愛撫も、好きだって言葉も何もかも。

 だから、私からしたい。
 大好きのキスも、情熱も、欲情も、私からあなたへは本物だから。これだけは、本当だから。
 
 上に乗っていたエヴァンの腕と肩を掴んで、ひっくり返す。
 そして、キスをして言った。
「お願い…。名前を呼ばないで。今夜は、何も言わないで。」 
 私が愛したのは、この人だと。もう2度と、会えなくなる日が来ても、あなたを覚えていたい。今夜のことだけは、本物にしたい。

 キスをして、歯列をなぞるように舌を這わす。
 繋いだ手の感触。首筋の香り。
 彼の体中にキスをしていく。
 この大きな腕も、広い胸も、その鼓動も、体の熱さも、今だけは私だけのもの。
 乳首を舐めると、ビクリと反応する。どうやら、感じる場所だったようだ。つい、楽しくなって、男性器を手で包んで、優しく愛撫しながら乳首を愛していく。
 はっ、はっ、と、エヴァンの息づかいが聞こえて、私の肩に置かれた手が、ゆっくりと私の背中を撫で始める。興奮しているのが解って、その熱で私も高まっていく。
 おへそにキスをして、下腹部を舐め回し、男性器の先端にキスをした。
「うっ…」
 瞬間に、エヴァンの声が漏れて、ビクンッと硬直したものが反応する。それを見つめてから、飴を舐めまわすように上から下まで咥えて舐めあげた。
「!!…あっ…くぅ…」
 感じている声が、頭上から漏れ聞こえると、嬉しくなって激しくしていく。唾液をたくさん使って、吸い上げるようにしごく。口に納まりきらない場所は、指で包み込んだ。グッチュグチュで、口からも手からも卑猥な音が響く。
「~~~!!ダメだ!もう…いい!口を離せ…!!」
 そんな、耐えられないと言わんばかりの色気たっぷりの声に、やめられなかった。
「う!…早くっ…離すんだ!!あっ、ぐっ!!」
 これ以上ないくらいに、カチカチに大きく反り上がって膨らんだと思ったら、勢いよく頭を押さえられて引き抜かれた。彼の飛沫が、私の顔にかかる。

「バカ!危うく、口の中に出してしまうところだったぞ」
 息が上がったままで、エヴァンは少し怒った口調で言う。
「うん。欲しかったから。」
 そう返すと、彼は驚いた顔をした。そうだよね。育ちの良い王女様が、こんなことをしない。こんなこと、言うわけない。だけど、今夜だけ許して。今夜だけ。

 顔を手で拭いて、彼の上に乗る。まだ固い肉棒を、自分の陰口にあてがう。ウズウズして我慢できなくなっていた胎内へと、自ら腰を下ろして突き入れて行く。
「あ…あぁ…んっ」
 気持ち良くて、やっと1つになれた心地よさに浸る。
 肉棒が熱い!気持ち良い!足の力を抜いて、完全に彼の上に座り込むと、硬い先端が、おへその裏あたりにゴリっと当たった。
「あ゛!」 
 体中に電気が走ったかのような、串刺しにされて貫かれてしまったかのような感覚に、息が苦しくなる。ギュウギュウと膣内を締め付けて、勝手に感じ始める。
「んっ、んっ、んっ!」
 気持ちよくて、自ら腰を振る。たまらない気持ちになった。
「はぁ、あぁ!はぁ、んっ、んっ!良い‥気持ち良い!好き…好き!大好き!あっ!」
 好きなの。ずっと傍にいたい。ずっとずっと、このままでいたい。もう、何も考えずに、ずっと、このまま1つになっていたい。
「好き…好き!」
 わけもわからず、涙が溢れる。
「うっ‥うぅ…んっ!」
 必死に腰を振り続けて、だんだんと、もう本当に、わけが解らなくなってきた。
 愛しい気持ちと、快感と、嬉しさと苦しい気持ちが、ごちゃまぜになって、何もかもから逃げ出して、振り切るみたいに腰を振った。
 すると、エヴァンの大きな手が、私の頬の涙を拭う。
「私も好きだ」
 彼の瞳を見ると、真剣な顔だった。
「…言わないで。」
 私は、泣きながら首を振る。涙が溢れ出す。あなたのその好きは、私にじゃないから。
「…お願い…今日だけ…今だけ…!」
 私の手をそっと握りしめて、上半身を少し起きがらせて、エヴァンは私の頬を撫でる。
「今だけではない。毎日、こうして居たい。」
 熱い、涙が頬を伝う。
 結局嘘でも嬉しくて、縋りつくようにして、キスをした。
「あっ!ああ!」
 急に下から、突き上げられて、私は声を上げた。目を閉じ、顔を上に上げて、口はだらしなく開いたまま、快感に背中を反らす。腰を掴まれ、何度も激しく打ち付けられる。悲鳴に近い声を上げて、私は髪を振り乱し、彼の皮膚に爪を立ててしまう。大きな腕が伸びてきて、ギュウっと抱きしめられたまま、何度も何度も力強く奥を突かれて絶頂にあえいだ。

 はぁ、はぁ、と互いに荒い息を吐きながら、息を整えていると、エヴァンが言った。
「好きだ」
 真剣な顔で、彼は続けた。
「初めて会った時は、義務感からだった。だが、今は違う。こうして体を重ねて、互いに惹かれていったんだ。そうだろう?これからも、理解し合える。だから…」
 ……理解?
「あなたは、本当の私を知らない!」

 つい、口走ってしまってから、ハッとする。な…なんてことを言ったの?
 戸惑い、焦って目が泳ぐ。

「ならば、教えてくれないか?」
 エヴァンは、私を抱き寄せて言った。
「何もかも、全て、私に明け渡してしまえ。どんなことでも全部、受け止めてやるから。」
 おでこにキスをされて、顔を上げる。そこには、いつにも増して、優しい瞳があった。

 何もかも全て…
 その言葉だけで、充分だと思った。とても嬉しい。もう、そんな事言われたら、全然涙が止まらないよ。

 あなたに全てを捧げよう。この瞬間、そう思えた。
 隊長から結論が来る。その指示がどのような事であっても。私は、エヴァンの為に最後まで生きる。
 そう決意して、彼の背中に手を回す。
 抱き合って、キスをして、もう一度、私たちは愛し合った。
 今度こそ、何も考えずに。




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