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暗殺計画
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ロイド隊長とフィオナは、魔術師団長マーカスと共に、女王の執務室に居た。
我が国リヴェリア王国の、エイレーネ女王が言う。
「魔術師フィオナ・レイン。そなた、隣国の王を始末してまいれ。」
まぁ、そう言われれば、人は「承知しました」としか言えない。
フィオナは魔術師学校を卒業し、魔術師団に入って3年、様々な現場で実践を経験してきた。とはいえ、まだ3年目だ。こんな任務を任されることになるとは、想像もしていなかった。あまりの大役に戸惑った。
隊長と団長に、チラリと視線を移したけれども、2人とも表情を変える事は無い。魔術師団長マーカスは、返答した。
「御意にございます。必ずや、お求めの首をとって参りましょう。」
団長の言葉に、女王は嬉しそうに笑った。
「マーカス団長。失敗は許されぬぞ?」
団長は頷く。
「秘密捜査隊隊長である、ロイドを同行させます。」
それを聞いて、女王は安心したような表情を浮かべる。
「それは安心だ。先帝の影をしていた殺し屋の息子か。幼少から鍛え上げられて、かなりの腕だと聞いておる。頼んだぞ?」
「承知いたしました。」
ロイド隊長が平然と答える傍らで、衝撃的な事実を今、知ったばかりのフィオナは、目を丸くした。
マジか~!隊長は凄い人だとは思っていたけれども、まさかの殺し屋の英才教育されてた人かぁ・・・。味方で良かった。この人だけは怒らせないようにしよう・・・。
「ヴァルシア王国の若き王は、他国を汚い手で侵略している。王になる為にその父王すらも無残に処刑し、城壁にさらし首にするような冷酷な男。我が国との交渉にも応じずに、使者が帰って来ることは無かったのだ。世界が、ヴァルシア王国を恐れている。」
女王様は、私の方に視線を移す。
「ヴァルシア国王が、此度の婚姻で領土を広げ、これ以上の力をつけさせるわけには行かぬ!良いな?世界の平和が、そなたたちにかかっている。」
世界平和。
それはあまりにも、大儀である。
恐怖が頭をよぎるが、しかし、やりがいは有るだろう。
◇◇◇◇
魔術師団本部に戻ると、団長が言った。
「極秘任務だ。団の中でも上層部のみが知っている。他言はするな。」
魔術師団団長、マーカス・サンダース。年齢は50歳だと聞いている。見た目は、ダンディ叔父様という感じがする。今までは遠くで見るだけで、直接お話することは無かった。この距離で見たのは初めてだ。まじまじと見つめながら、質問してみる。
「何故、私が任命されたのでしょうか?」
団長は、私を真っ直ぐに見つめたままで言った。
「お前は変身魔法が、ずば抜けている。今までも、スパイ活動では1度も見破られなかったという報告を受けている。」
なるほど。まぁ、確かに。私の得意技だ。
誰かに成り切るのは得意だし、変身したままで24時間365日を生活しろと言われれば、可能だ。それを出来るのは、おまえだけだと言われて来た。だから、数々の悪人たちを暴くために、悪事を働く身近な人間へとなり替わり、悪事を暴いて来た。
今回の“隣国ヴァルシア王国 国王暗殺計画”は、次の通りだ。
若き国王エヴァン・アシュフォードに嫁ぐ予定の婚約者に変身し、王の近くに潜り込み命を奪うこと。
団長は、壁に映像を映し出し、説明を始める。
「この娘が、ヴァルシア王国へ嫁ぐ、トルキア国のセシリア・フェアチャイルド王女だ。ヴァルシア王国とは30年の冷戦を解消し、トルキア国王は娘を差し出した。」
映像の中の女性を観察する。
ブロンドの長い髪は、ややウェーブがかかっており髪飾りを使ってまとめている。 柔らかいブラウンの瞳。穏やかで優しい表情が特徴的だった。話し方、仕草、細かく観察していく。
観察しながら、目を離さずに団長に言う。
「詳しい彼女の生い立ちや好みなど、個人情報を全て今日頂けますか?」
「無論だ。王女がヴァルシア王国に向かう途中を襲い、入れ替わる。王女の始末はロイド、おまえがやれ。」
「はい。入れ替わった後は、影となりフィオナを追います。」
「そうだな。誰にも姿を見せるな。」
おそらくロイド隊長は、今までと同じように陰で援護してくれるのだろう。情報収集など、陰になっていたほうが動きやすいのもあるのだろう。そうなると、国王を暗殺するのは、私の役目だ。殺し方は何通りか考えておく必要がある。状況に応じて、チャンスを逃さないようにしなければならない。
こうして、私たちは、あらゆる状況を想定して、作戦を立てた。
我が国リヴェリア王国の、エイレーネ女王が言う。
「魔術師フィオナ・レイン。そなた、隣国の王を始末してまいれ。」
まぁ、そう言われれば、人は「承知しました」としか言えない。
フィオナは魔術師学校を卒業し、魔術師団に入って3年、様々な現場で実践を経験してきた。とはいえ、まだ3年目だ。こんな任務を任されることになるとは、想像もしていなかった。あまりの大役に戸惑った。
隊長と団長に、チラリと視線を移したけれども、2人とも表情を変える事は無い。魔術師団長マーカスは、返答した。
「御意にございます。必ずや、お求めの首をとって参りましょう。」
団長の言葉に、女王は嬉しそうに笑った。
「マーカス団長。失敗は許されぬぞ?」
団長は頷く。
「秘密捜査隊隊長である、ロイドを同行させます。」
それを聞いて、女王は安心したような表情を浮かべる。
「それは安心だ。先帝の影をしていた殺し屋の息子か。幼少から鍛え上げられて、かなりの腕だと聞いておる。頼んだぞ?」
「承知いたしました。」
ロイド隊長が平然と答える傍らで、衝撃的な事実を今、知ったばかりのフィオナは、目を丸くした。
マジか~!隊長は凄い人だとは思っていたけれども、まさかの殺し屋の英才教育されてた人かぁ・・・。味方で良かった。この人だけは怒らせないようにしよう・・・。
「ヴァルシア王国の若き王は、他国を汚い手で侵略している。王になる為にその父王すらも無残に処刑し、城壁にさらし首にするような冷酷な男。我が国との交渉にも応じずに、使者が帰って来ることは無かったのだ。世界が、ヴァルシア王国を恐れている。」
女王様は、私の方に視線を移す。
「ヴァルシア国王が、此度の婚姻で領土を広げ、これ以上の力をつけさせるわけには行かぬ!良いな?世界の平和が、そなたたちにかかっている。」
世界平和。
それはあまりにも、大儀である。
恐怖が頭をよぎるが、しかし、やりがいは有るだろう。
◇◇◇◇
魔術師団本部に戻ると、団長が言った。
「極秘任務だ。団の中でも上層部のみが知っている。他言はするな。」
魔術師団団長、マーカス・サンダース。年齢は50歳だと聞いている。見た目は、ダンディ叔父様という感じがする。今までは遠くで見るだけで、直接お話することは無かった。この距離で見たのは初めてだ。まじまじと見つめながら、質問してみる。
「何故、私が任命されたのでしょうか?」
団長は、私を真っ直ぐに見つめたままで言った。
「お前は変身魔法が、ずば抜けている。今までも、スパイ活動では1度も見破られなかったという報告を受けている。」
なるほど。まぁ、確かに。私の得意技だ。
誰かに成り切るのは得意だし、変身したままで24時間365日を生活しろと言われれば、可能だ。それを出来るのは、おまえだけだと言われて来た。だから、数々の悪人たちを暴くために、悪事を働く身近な人間へとなり替わり、悪事を暴いて来た。
今回の“隣国ヴァルシア王国 国王暗殺計画”は、次の通りだ。
若き国王エヴァン・アシュフォードに嫁ぐ予定の婚約者に変身し、王の近くに潜り込み命を奪うこと。
団長は、壁に映像を映し出し、説明を始める。
「この娘が、ヴァルシア王国へ嫁ぐ、トルキア国のセシリア・フェアチャイルド王女だ。ヴァルシア王国とは30年の冷戦を解消し、トルキア国王は娘を差し出した。」
映像の中の女性を観察する。
ブロンドの長い髪は、ややウェーブがかかっており髪飾りを使ってまとめている。 柔らかいブラウンの瞳。穏やかで優しい表情が特徴的だった。話し方、仕草、細かく観察していく。
観察しながら、目を離さずに団長に言う。
「詳しい彼女の生い立ちや好みなど、個人情報を全て今日頂けますか?」
「無論だ。王女がヴァルシア王国に向かう途中を襲い、入れ替わる。王女の始末はロイド、おまえがやれ。」
「はい。入れ替わった後は、影となりフィオナを追います。」
「そうだな。誰にも姿を見せるな。」
おそらくロイド隊長は、今までと同じように陰で援護してくれるのだろう。情報収集など、陰になっていたほうが動きやすいのもあるのだろう。そうなると、国王を暗殺するのは、私の役目だ。殺し方は何通りか考えておく必要がある。状況に応じて、チャンスを逃さないようにしなければならない。
こうして、私たちは、あらゆる状況を想定して、作戦を立てた。
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