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十
しおりを挟む「王子様たち、無事に着いたかしらね?」
溜息混じりに彼女は言う。
「…心配ならついていけばよかったんじゃないか?」
彼は違うことを考えている。
「そういうわけにはいかないわ。自分より若くなった親の顔なんて見たくないでしょ」
彼女は質問の意味を的確に理解したようだ。
そして彼もまた、彼女の言葉の真の意味に気づいて、それ以上は言わなかった。
そして彼女は夢見るような心地の顔で、ロマンスノベルの本を開いたまま、達観したような言葉で締めくくった。
「あの子たちも、あの王子様と騎士さんも、しあわせであればそれでいいわ」
それからふと、思い出したように一言付け加えた。
「……あの子が、しあわせであったようにね」
王国ヴィダルの森の奥、ルート・オブ・アッシュの森の中は、時が止まったように、今日も静かに風が吹いている。
楽園の姫君と奪還の騎士・完
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