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再びの春

再びの春 3

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「ここのケーキ、美味しいよねぇ」

 クリスマスケーキを頼んだ地元の製菓店のケーキは、おやつのローテーションで時々買ってくることにした。毎日だとちょっと贅沢かなと思うのもあるし、カロリーも考えると恐ろしいので、時々がちょうどいい。

「美味しいですよねぇ」

 トク子さんはコンビニやスーパーじゃないケーキは、誕生日やお祝い事で食べる感覚なのだけれど、食べたいものを美味しく食べればいいよね、と思えるようになってきた。

 その分、本当に欲しいものや食べたいもの、に意識を向けるようになって、そんなに好きじゃないけど安売りだから、などという理由で選ばなくなって、満たされる感覚が強くなったのを実感している。

(安いものが悪いわけじゃないけど)

 自分を満たす、というのは大事なんだな、と改めて思う。

「ねぇねぇ、さっきの絵ってさぁ、僕?」

 ふいに水希が聞いてきたので思わずむせてしまった。

「慶くんが文章を書く人なら、トク子さんは絵を描くんだね。いいコンビ」

「……私は、素人ですから」

「でも、すっごく上手だよ?」

「ありがとうございます」

 水希の質問に答えてないなと思ったので、正直に話すことにする。隠す理由もないしね。

「みーくんの龍の姿はどんなに素敵かなぁと思って、想像で描いてました」

「えー、嬉しいなぁ」

「似てます?」

 探りを入れるつもりで顔を覗き込んだけれど、

「内緒」

 と、はぐらかされてしまった。

「機会があれば、見てみたいです」

「そうだね、きっとそのうちにね」

 おや、と思ったのは、別に嫌そうでも何か問題があるという感じでもなく、水希がふと遠い目になったからだ。

(あー……これは)

 きっと、慶さんは見たことがあるんだな、とトク子さんは思った。

 水希がその出来事を思い出しているような、過去を見ているようなそんな顔に見えたのだった。
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