34 / 90
32.二人の長い夜⑥ ※
しおりを挟む
「ん、……ふぅ…ん、んっ」
「息を詰めたらダメだよ」
「あっ……そん、なの…わかってる……けど…っ」
わかっていることと、できることは違うじゃんか。
テオドールは、おれの様子に再び作業を中断し、しばし何かを考え込むと、
「少し潤滑油を使おうか」
そう言って、ベッドサイドの小瓶を手に取った。
小瓶の中の液体を、自分の掌にとろりと垂らし、おれの後ろに優しく塗る。
「うっ……ぬるっとする…」
「でも、滑りは良くなったよ」
その台詞と共に、再び指がつぷりと侵入してくる。
先ほどよりも、深くスムーズに入ってた指が、内側を探るように撫でて、また出ていく。
あの少し節ばった長くて綺麗な指が、リズミカルに動き出す。
うう、やっぱり気持ち……悪い。
しかし、それでも、潤滑油が人肌に温めてあるテオドールの配慮に、おれも頑張らねば、と志を新たにする。
……というか、いつの間にこんなものを、準備したのかな。
「なんか、テオ……手慣れてない?」
そして、どうにもずっと気になっていたことを、いよいよ聞いてしまう。
「シリル兄さんに関しては、手を抜かないだけだよ」
指は、入れたり抜いたりしてるけどね。
心の中で突っ込んで、いや突っ込まれてるのは自分だけど。
なんて、また自分に突っ込んだ。
くちくちと粘調な音が二人だけの寝室に響く。
テオドールは宣言通りに、丁寧な手つきで、おれの中をゆっくりとひらいていく。
指が出し入れされるたびに、ぞくり腰から悪寒のような排泄感が駆け上がって、お腹の奥が疼く。
再び埋め込まれると圧迫感に、息がつまる。
「うっ…ん、ん……ぁ……は」
指が二本に増えて中の質量がますと、押されている、というより、内側から撫でられているような感覚に変わり、さっきよりさらに奥に侵入してくる。
より苦しさが増す。だけど、それだけじゃなくて。
圧迫感と共に込み上げてくるぞくぞく感と、何かに触れそうで触れない…どこかを掠るたびに痺れるような灼熱感が襲って、腰がその度にひけて、心臓がぎゅっと縮こまる。
テオはなんで、ずっと黙ってるんだよ。
そんな真剣にそんなとこ見られたら、いたたまれないじゃないか。
「あっ……、あのさっ」
沈黙と未知の感覚に、たまらずおれは声をあげた。
「痛いときは、左手を挙げるから。……だから、そのときは、やめてくれよ?」
「なに?その方法」
「いいから……お願いだから…」
これは古から伝わる由緒正しい痛みを主張をするためのルールである。
「わかったよ」
テオドールの同意に、おれはほっと胸を撫で下ろした。
「そのかわり、シリル兄さんは僕に何をされているか、しっかり見ていて」
テオドールはそう言うと俺の窄まりに差し入れた指先を、ぐっと曲げた。
「ひっ…あっ!あぁっ!なにっ……そこ…っ」
入口……いや、出口か?もう、どっちでもいいけど!!
そこからテオの指の半分くらい、お腹側を撫でられたとき、おれの身体に電流が流れてびりりと跳ねた。
「ああ、やっと見つけた」
「あっ!や…やめてっ!…そこ、へん…あっ!!」
おれは必死に左手を挙げて、右手でテオドールの肩を押しのける。
全力で押しているのに、微動だにしない弟の力強さに驚くと共に、自分を襲う感覚が怖い。
一方のテオドールは、おれの制止にちらりとこちらを一瞥したけど、艶のある笑みを浮かべるだけだ。
「大丈夫、痛くはないはずだよ」
あうぅぁぁぁっ!
確かにこのルール、「手を挙げたけどいなされて意味が無い」てとこまでが様式美だけどさ?!?
テオはそんなこと知ってるはずないよね??!!
こんなところで、そんな優秀さを発揮してくれなくていいんだけど!!!
「シリル兄さんは、僕に嘘をつくんだね」
さらにぐっと腰を押えつけおれを易々と固定する。
「ひぁっ…あっ!ん、…や、うそじゃ…んぁっ!」
テオドールはそこを、ゆらゆらと左右に優しく撫でたかと思うと、とんとんと律動的に叩く。
そして、ぐっと強く圧迫させれば、身体がひとりでにびくびくと痙攣した。
「はっあ!…いたく、ないけど…あぁぁっやぁっ!」
お腹の奥が苦しいような、痺れるような、だけどそれだけでない強烈な熱から、ただただ逃れたくて仕方がない。
それなのに、おれがどんなに必死にもがいても、オドールは逃がしてくれない。
執拗にそこを責め立てる。
「ふぅっ…うっ……むり、むりぃっ…も、やめて、やだっ…っ」
「気持ちよさそうだよ……どんどん、溢れてくる。ほら」
ぐちゅぐちゅとわざと音をたてて抽挿を繰り返されて、もう充分にこれ以上ないほど恥ずかしい。
「あっ!…や、おと…たてるな…っ」
この音が自分から出ているのだと突き付けられて、羞恥に頭が沸騰しそうだ。
繰り返し刺激されたそこが、だんだんと熱をもってきて、甘い痺れに変わっていく。
「へんっ……これ、あっ…なに…あぁっ」
じんじんして、お腹の奥から腰にそして全身にその痺れが広がって、我慢できなくなる。
これ、気持ちいいとか、そんなレベルじゃない。もっと、鮮烈で焼けるような。
「んんっ…あ、だめ、だめぇ…」
それでいて、欲しくて欲しくて渇望してしまうような、溶けるような悦楽だ。
「息を詰めたらダメだよ」
「あっ……そん、なの…わかってる……けど…っ」
わかっていることと、できることは違うじゃんか。
テオドールは、おれの様子に再び作業を中断し、しばし何かを考え込むと、
「少し潤滑油を使おうか」
そう言って、ベッドサイドの小瓶を手に取った。
小瓶の中の液体を、自分の掌にとろりと垂らし、おれの後ろに優しく塗る。
「うっ……ぬるっとする…」
「でも、滑りは良くなったよ」
その台詞と共に、再び指がつぷりと侵入してくる。
先ほどよりも、深くスムーズに入ってた指が、内側を探るように撫でて、また出ていく。
あの少し節ばった長くて綺麗な指が、リズミカルに動き出す。
うう、やっぱり気持ち……悪い。
しかし、それでも、潤滑油が人肌に温めてあるテオドールの配慮に、おれも頑張らねば、と志を新たにする。
……というか、いつの間にこんなものを、準備したのかな。
「なんか、テオ……手慣れてない?」
そして、どうにもずっと気になっていたことを、いよいよ聞いてしまう。
「シリル兄さんに関しては、手を抜かないだけだよ」
指は、入れたり抜いたりしてるけどね。
心の中で突っ込んで、いや突っ込まれてるのは自分だけど。
なんて、また自分に突っ込んだ。
くちくちと粘調な音が二人だけの寝室に響く。
テオドールは宣言通りに、丁寧な手つきで、おれの中をゆっくりとひらいていく。
指が出し入れされるたびに、ぞくり腰から悪寒のような排泄感が駆け上がって、お腹の奥が疼く。
再び埋め込まれると圧迫感に、息がつまる。
「うっ…ん、ん……ぁ……は」
指が二本に増えて中の質量がますと、押されている、というより、内側から撫でられているような感覚に変わり、さっきよりさらに奥に侵入してくる。
より苦しさが増す。だけど、それだけじゃなくて。
圧迫感と共に込み上げてくるぞくぞく感と、何かに触れそうで触れない…どこかを掠るたびに痺れるような灼熱感が襲って、腰がその度にひけて、心臓がぎゅっと縮こまる。
テオはなんで、ずっと黙ってるんだよ。
そんな真剣にそんなとこ見られたら、いたたまれないじゃないか。
「あっ……、あのさっ」
沈黙と未知の感覚に、たまらずおれは声をあげた。
「痛いときは、左手を挙げるから。……だから、そのときは、やめてくれよ?」
「なに?その方法」
「いいから……お願いだから…」
これは古から伝わる由緒正しい痛みを主張をするためのルールである。
「わかったよ」
テオドールの同意に、おれはほっと胸を撫で下ろした。
「そのかわり、シリル兄さんは僕に何をされているか、しっかり見ていて」
テオドールはそう言うと俺の窄まりに差し入れた指先を、ぐっと曲げた。
「ひっ…あっ!あぁっ!なにっ……そこ…っ」
入口……いや、出口か?もう、どっちでもいいけど!!
そこからテオの指の半分くらい、お腹側を撫でられたとき、おれの身体に電流が流れてびりりと跳ねた。
「ああ、やっと見つけた」
「あっ!や…やめてっ!…そこ、へん…あっ!!」
おれは必死に左手を挙げて、右手でテオドールの肩を押しのける。
全力で押しているのに、微動だにしない弟の力強さに驚くと共に、自分を襲う感覚が怖い。
一方のテオドールは、おれの制止にちらりとこちらを一瞥したけど、艶のある笑みを浮かべるだけだ。
「大丈夫、痛くはないはずだよ」
あうぅぁぁぁっ!
確かにこのルール、「手を挙げたけどいなされて意味が無い」てとこまでが様式美だけどさ?!?
テオはそんなこと知ってるはずないよね??!!
こんなところで、そんな優秀さを発揮してくれなくていいんだけど!!!
「シリル兄さんは、僕に嘘をつくんだね」
さらにぐっと腰を押えつけおれを易々と固定する。
「ひぁっ…あっ!ん、…や、うそじゃ…んぁっ!」
テオドールはそこを、ゆらゆらと左右に優しく撫でたかと思うと、とんとんと律動的に叩く。
そして、ぐっと強く圧迫させれば、身体がひとりでにびくびくと痙攣した。
「はっあ!…いたく、ないけど…あぁぁっやぁっ!」
お腹の奥が苦しいような、痺れるような、だけどそれだけでない強烈な熱から、ただただ逃れたくて仕方がない。
それなのに、おれがどんなに必死にもがいても、オドールは逃がしてくれない。
執拗にそこを責め立てる。
「ふぅっ…うっ……むり、むりぃっ…も、やめて、やだっ…っ」
「気持ちよさそうだよ……どんどん、溢れてくる。ほら」
ぐちゅぐちゅとわざと音をたてて抽挿を繰り返されて、もう充分にこれ以上ないほど恥ずかしい。
「あっ!…や、おと…たてるな…っ」
この音が自分から出ているのだと突き付けられて、羞恥に頭が沸騰しそうだ。
繰り返し刺激されたそこが、だんだんと熱をもってきて、甘い痺れに変わっていく。
「へんっ……これ、あっ…なに…あぁっ」
じんじんして、お腹の奥から腰にそして全身にその痺れが広がって、我慢できなくなる。
これ、気持ちいいとか、そんなレベルじゃない。もっと、鮮烈で焼けるような。
「んんっ…あ、だめ、だめぇ…」
それでいて、欲しくて欲しくて渇望してしまうような、溶けるような悦楽だ。
1
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!
華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる