上 下
16 / 90

15.重大な有害事象① ※

しおりを挟む
「シリル兄さん、ちゃんと布団に入って寝ないと風邪をひくよ」

 んー……?なに?

「………あれ?テオ……どうしたんだ?」

 ここ、おれの寝室だよ?部屋間違ってるじゃん?

「ごめんね。遅くなって」
「んー……?」

 ああ、そういえば今日から一緒に寝るとかなんとか言ってたっけ。

 なんだよ、遅くなっても、疲れててもテオは本当にきれいな顔してるなぁ。

 こんなに近くでテオをまじまじ見たの久しぶり。頬っぺたすべすべじゃん。毛穴なくない?
 こんな完璧な造形はまさに神業だよ。

「神様って、すごいなぁ」
「………シリル兄さん、もしかしてお酒飲んだ?」
「ん……少しだけ、な」
「はぁ……なるほど、それでこんなに寝ぼけてるのか」

 テオが仕事で頑張ってたのにお酒飲んで寝てるなんて、なんか悪いことしたな。

「ごめんな、テオ」
「別に怒ってないよ……ただ僕が耐えられるかな、て」
「んー?……いま、なんじ?」
「ちょうど0時だよ」

 そんなに遅い時間なのか。
 寝れない寝れないと思ってたけど、知らない間にがっつり眠ってたみたいだ。

「おつかれさま。テオは……いつも、こんなにおそいのか?」
「昨日の今日だからね。各部署への対応に追われて、忙しかったんだ。あとは、少し処理することがあって」
「そうかぁ……テオは、いつも頑張ってるなぁ」

 おれの上に覆いかぶさるように覗き込んでいるテオドールに手を伸ばす。

「えらい、えらい」

 おれが頭を撫でるのを無防備に受け入れてくれるテオは、どうみてもおれの可愛い弟だ。

「はあ…テオのかみ、さらさらできもちいい」

 テオの頭にこんなにしっかり触るのも久しぶりだな。
 この手触り、病みつきになるんだよね。

 小さい頃は良く撫でてたんだけど、身長が追い付いてきて、あっと言う間に越されちゃったから、撫でるのも難しくなって。

 指に通しても全然絡まなくて、しっとりのさらさらのつるつる。
 へへ、両手で撫でちゃうもんね。よしよし~なでなで~……テオも気持ちよさそうだなぁ。
 目を細めてうっとりされると、おれもうれしくなっちゃうよ。

「もうすぐ業務が落ち着けば、もっとシリル兄さんと一緒にいれるから」
「そうなの?それは嬉しいけど……無理するなよ?」

 ただでさえ忙しいのに、働き過ぎたら身体壊しちゃうから。それは絶対にダメだ。

「無理なんてしてないよ」
「テオもしたいこと、たくさんしていいからな」

 おれは、テオのお陰でたくさんしたいこと、させてもらってるから。

「おれもテオのために何かしてあげられたらいいんだけど……」

 撫でていたテオドールの頭がゆっくりと降りてきて、おれの胸元に顔を沈めた。そこで、大きく1回深呼吸をされたから、息がかかってくすぐったくて仕方がない。

「ひぁっ……テオ、くすぐったいって……」
「シリル兄さん、いい匂い」
「ああ…おふろ、はいったから」

 この世界では毎日入浴するのは一般的じゃないけど、元日本人としては譲り難い習慣だ。

「ドミール草の香り?」
「そう。今、薬草園でそだててんの。これ……あたらしい、せっけんで」

 ドミール草は日当たりのいい乾燥した場所を好む薬草の一種で、鎮静作用などがある。香草として料理にも使われることがある、比較的一般にもメジャーな薬草だ。

 前世でいうところのラベンダーのようなものを想像してもらうといい。
 爽やかな果実のような甘い香りは、緊張をとり不安を和らげたり安眠をもたらす効果があるので、おれは好きな香りなのだけど……テオが嫌いじゃなくてよかった。

 ふわふわと眠気の中で夢心地でいると、テオドールがぎゅっと抱き着いてきた。のっしりと圧し掛かる体重が心地いい。

「なんだぁ?今日は、なんだか、あまえんぼうだなぁ……ふふ」

 よしよしと片手で頭を撫でながら、もう片方で背をさする。

 ……なんか、丈夫そうな背筋だな。ちょっとやそっとじゃ倒せなそう、ってテオ倒すことなんて無いけどさ。

 もぞもぞとテオドールが動く気配がして、手が寝間着の上を腹から胸元までさわさわと撫でていく。

「んっ……テオ…くすぐんないで…」

 おれがくすぐったがりなの、知ってるよな?

 テオを見るとこちらを見上げた銀色の瞳と目が合って、真剣な眼差しの奥がちらちらと何かが揺れているような気がした。

 あ、橙色の照明が反射して、べっこう飴みたいで甘くて美味しそう。

 うっすら開いたテオの唇がとても艶めかしくて、色っぽい。その唇が触れるか触れないかの距離でおれの胸をなぞっていって、息がかかってくすぐったい。

 ぶるっとする。

 そして、テオドールは突起を見つけてそのまま服ごと口に含んだ。

「ふはっ…テオ……あかちゃんみたい……あ、あぁっ…ん、なにっ」

 服の上から強く吸い付かれて、テオドールの温かい口の中で生地と乳首が擦れて、覚えたての感覚にぐっと腹の奥から何かが湧き上がってきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

【完結】前世の男運が最悪で婚約破棄をしたいのに、現れたのは王子様でした?

刺身
恋愛
⭐️完結! 読んで下さった皆様本当にありがとうございました😭🙏✨✨✨  私には前世の記憶がある。  前世では波乱万丈、苦労も多く、その理由は借金、酒、女とだらしのない元旦那の存在だった。  この異世界転生を優雅に謳歌するため、私の人生を狂わす恐れのある婚約は破棄したい。  なのに、婚約者は絵に描いたようにモテまくる金髪蒼眼の王子様。に加えて、やけに親切なミステリアスな仮面の青年も現れて。  互いに惹かれ合いながらも、底知れない呪いに絡み取られていく主人公たちの結末はーー……。 ※エピソード整理ができてなくて、まったり進行で申し訳ないです。 そのうち書き直したいなと思っていたり。。 2章からは比較的事件?が勃発致します🙇‍♀️💦💦 ※お目汚しで大変恐縮ではありますが、表紙やら挿絵、小ネタ的なモノをつけてます……。笑 落書きみたいなもので恐縮です。。苦手な方は薄目で閉じてくださいますと幸いです……。← ※一人称の練習も含んでいます。読みづらい、違和感などあれば教えて頂けますと大変参考になります。よろしくお願い致します。 ※よく迷走しているので題名やらが謎にバッサリチョコチョコ変わったりする場合があります……滝汗  ご指摘、ご感想、ご意見など頂けましたら大変喜びます……(*´꒳`*)  どうぞよろしくお願い致します。

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

小葉石
BL
 今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。  10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。  妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…  アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。  ※亡国の皇子は華と剣を愛でる、 のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。  際どいシーンは*をつけてます。

処理中です...