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Ⅳ.お腹いっぱいで幸せ編

23.俺は、俺の竜に刻みたい④ ※

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※Ⅳ.16-17話間で、またまたお話が抜けてました。
誠に、誠に申し訳ありません!

まだ、お読みでない方は、★で挿入しておりますので、先のお読みいただければと思います。


*******


「伝えるのも……まだ、伝えてないのも、……忘れちゃう、くらいに……」

 寝ぼけ眼に、たまらずキスをしてやれば、くすぐったそうにふにゃりと笑うルルドが、これ以上ないくらいに可愛くて、愛おしい。

 何度も、何度も、繰り返し柔らかな毛並みを確かめる俺は、ただただ、募る思いにやっぱり底も天井も見えなかった。

 と、ルルドの瞳が切実な色を滲ませた。

「ヴァル……すき、……すき、なんだ。
 ぼく、……ヴァルが……」
「俺もだよ」

 静かに返す俺の胸の中に、ルルドがぎゅうっと縮こまって縋るように、じっと俺を見る。

 うるうると黒い瞳が滲んで、何度も泣いた涙の痕が目尻を赤くして。

「僕を、一人に……しないで」

 切実な願いとして、おれに告げた。

 はぁ、まったく。お前はいつも、勝手なことばっかりだな。
 勝手に俺の前に現れて、勝手に易々と俺のことを救って。
 勝手に俺を惚れさせて、あれやこれやとやることに喜びを見出させて。

 勝手にいなくなって、俺をどん底に突き落として。

 で、今またこうして俺の腕の中で俺を心底喜ばせる。

 ホントに、勝手な奴。

 まぁでも……。
 俺がルルドを好きになったのも、こうして追いかけまわしてんのも、全部俺の勝手な話なんだけど。

「ルルド」
「ん……」
「お前がオレのこと鬱陶しくなって。一人がいいって言っても、どこまでも探しに行くぞ、俺は」

 言ったろうが。俺は絶対に諦めねぇって。
 俺の執念と根性、舐めてんじゃねぇよ。

「死ぬまで……死ぬ時も、死んでも、ずっと一緒だ」

 ルルドの髪をかき上げて露わになった額に口づけて。でもそれだけじゃあやっぱり足りなくて、もう一度唇に口づけて、俺はルルドを抱きしめた。

「ん……ヴァル、あったか…い……」

 抱き締めた俺の腕の中、ルルドはものの数秒で、夢の中へと落ちていった。

 こいつは全く……ホントにちっとも思い通りにならねぇな。

 とろけるようなルルド中に残された俺の気も知らないで、すやすやと気持ちよさそうに俺の腕の中に納まってる寝顔に、瞬間イラっとする。

 でも、すぴすぴと鳴る鼻息に、満腹で満ち足りた安らかな顔に、俺の心は一瞬で解されてしまう。

 ルルドは、ホントに思い通りにならない。

 俺は常に崖っぷちで生きてきたから、人の機微や物事の流れを読むことにも、事前に備えることにもそれなりに慣れてる。

 それでも、ルルドはわかんねぇ。
 こっちの考えも計画も下準備も全部無視で吹っ飛ばされれば、それなりにムカつく。
 イライラして、ふざけんなって思うけど。

 同じように……いや、それ以上に、予想外の喜びや、可愛さ、愛しさを感じさせてくれる。

 俺が想像しない光景を見せてくれる。その度に俺は喜びと感動で何も言えなくなる。

 他の全てがどうでも良くなる。

 ルルドといると。

 振り回されて、がっかりしてイラついて、喜んで、うきうきして、楽しんで。

 生きてるって感じがする。

 ルルドが、生きてることは、楽しいと思わせてくれれる。

 これから先のことはわかんねぇのに、それでも未来に期待して、幸せになれるんじゃねぇかって、信じられる。

 この俺が。全部に絶望して諦めてた俺が。

「ルルド……俺はもう、今で最高に幸せなんだぞ」

 でも今……どうしても聞きたいことがあんだけど。

 俺は一体いつになったら、ルルドの中からお暇する許しがでんだ?

 ちょっと試しに抜こうとしてみれば、ものすっごいしかめっ面で、非難の気配を漂わせるし。

 かといって、このままいるのもどうなんだ。
 俺は当然ながら、動きたくなって、疼いて仕方ねぇよ。

 あー……でも。

 ホントこいつって、あったかいな。

 竜体だろうが、人型だろうが。

 やっぱり、ルルドはルルドだ。
 拾ったときと、少しも変わんねぇ。

 この温もりに俺はいつだって救われてきたんだから。

 俺だってなぁ………いつも、この温もりに包まれてたいよ……。

 あー……ったく。ふわふわして……あったかくって、マジで最高の癒しだぜ。

 大事にするから。
 あったかいもんでお前をいっぱいにして、お前の心に俺の想いを嫌というほど刻みこんでやるから。



 お前こそ、俺を一人にすんなよ。



 そう思ったのを最後に、俺の記憶もぷつり、と切れた。

 夢見がいい方じゃねぇ俺は、それでもこの日、これまでで最高に幸せな夢を見た気がした。
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