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Ⅲ.大好きな卵編
71.俺は、ルルドと道を歩みたい④
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「いや待てよ。たしか……10羽って話じゃなかったのか?」
「ええ?だって、少な過ぎるって言ったのは、ヴァルでしょ」
「言ってねぇよ」
絶対に言ってねぇよ。死んでも言わねぇ。
「言ったよー。大きさ考えろって。卵はとっても小さいからって。だから僕、頑張ってあれからもっと捕まえて――」
「俺が言ったのは、卵の小ささじゃねぇよ!ヒクイドリそのもののデカさだ!!こんな巨体じゃ、場所とるだろうが!!
この牛もだよ!連れ帰ったらどうなるか、ちったぁ考えろ!!
いや、そもそも場所の問題じゃねーよ!それ以前の――」
「えー?それこそ、全然問題ないって。ヴァルだって知ってるでしょ?
院長が、土地だけはムダにたくさんあるから、大きな動物でも100匹くらいは放し飼いにできるって言ってたもん」
「っ!」
「ウッシーの牛乳の話も、院長が美味しいらしいって教えてくれたんだし」
「っ!!」
「好きなもの飼っていいって言ってたよ?」
「っ!!!」
あんのっ……馬鹿院長が!!また、あんたかよ!!何、教唆してんだ!!
「この子たち賢いし、自分たちで自分の面倒見れるから、お世話もいらないし。ご飯もいらない。
その上、美味しい卵と牛乳くれるんだよ。
ね?いいことしかないでしょ?」
いいことしかない。
あー……………そうなのか?
もう、そういうことにしとくか……?
…………いやいやっ!駄目だろ!!しっかりしろ、俺!
「ヴァル」
「あ?」
「僕、今回けっこう頑張ったよね?ね?」
「いや……まぁ、そりゃあ……」
何だよ、この既視感。
ああー、やめろ。やめてくれ。真っ黒な瞳、うるうるさせてんじゃねぇよ。上目遣いで、ぷるぷるすんな。
加えて俺には、くーんと情けない鳴き声が聞こえて、垂れた耳と尻尾が見えるんだよ。
あの時は言えた『そんな目で見ても、駄目だ』って言葉が、今の俺には言えねぇ。
この目で必死に訴えられると、もはや俺には……。
「僕が一人前になったお祝いってことでさ。ねぇ、お願いだよぉ」
その言い方は、ずりぃだろ。
「はぁ………くそっ。こいつらだけだぞ」
「!!」
「何か起こったら、責任取ってもらうかんな」
ルルドと院長に。
「うんうん、もちろんだよー」
…………ま、結局尻拭いすんのは俺なんだけど。
でも、だ。
諦めさせるより、事後処理の方がはるかに簡単な気がしてきた。
だから、もういいわ。好きにしろ。
「でも、祝うのは俺がする。これは、別勘定だ」
俺が言えば、ルルドの顔がぱっと輝いた。
別にヒクイドリだって、水牛だって、俺が何かしたんじゃねぇし。
ルルドが捕まえた、赤銅竜の長と青銀竜の長からのプレゼントみたいなもんだろ。
「わーい!ヴァル、ありがとーっ!」
言って、ルルドは水牛からひらりと飛び降り、俺にぎゅーっと抱き着いてきた。
ふわりと柔らかな髪の毛が顔にかすめて擽ったい。
で、まんまと心も擽られてる俺は、大概チョロい。
あー……まったくよ。さっきまで繰り広げられた奇跡の出来事を起こした奴と同一人物とは思えねぇな。
「えへへ。防犯にもなるし、一石二鳥だね」
「まぁ………確かにな」
これらがいるとこに、押し入る奴はいねぇだろうな。
準備が整い、巡礼の一行と、ルルドと、ヒクイドリ2羽に水牛1頭で、帰路へと着いた。
穏やか過ぎる道中、ふと、気になることを思いつき、ルルドに尋ねる。
「黄金竜の長からは、何ももらってねぇのか?」
赤銅竜の長からヒクイドリ、青銀竜の長から水牛。
親らしいっつーなら、言動というか雰囲気的には黄金竜の長が一番それっぽかったけど。
見た目は子供だったけどよ。
「グノにはワームくんたちをお願いしたんだよー」
「………ふーん。なるほどな」
あの畑のワームを、黄金竜の長にね……。
ヒクイドリと水牛を従えて、一行から少し離れて進む姿は、やはり人ならざる者の気配が漂うものの。
俺からかっさらった荷物をこんもりと担いでるのが、なんともミスマッチで笑える。
「ルルド」
「んー?」
「あんまり急ぐなよ。……また、迷子になるぞ」
俺の言葉に、ルルドがふわりと淡く微笑んだ。
「ええー?ならないよ」
それは、あまりにも完璧で美しい笑顔で。
「もう僕、れっきとした竜になったんだから」
何言ってんだよ、馬鹿。だから、言ってんじゃねぇか。
「ええ?だって、少な過ぎるって言ったのは、ヴァルでしょ」
「言ってねぇよ」
絶対に言ってねぇよ。死んでも言わねぇ。
「言ったよー。大きさ考えろって。卵はとっても小さいからって。だから僕、頑張ってあれからもっと捕まえて――」
「俺が言ったのは、卵の小ささじゃねぇよ!ヒクイドリそのもののデカさだ!!こんな巨体じゃ、場所とるだろうが!!
この牛もだよ!連れ帰ったらどうなるか、ちったぁ考えろ!!
いや、そもそも場所の問題じゃねーよ!それ以前の――」
「えー?それこそ、全然問題ないって。ヴァルだって知ってるでしょ?
院長が、土地だけはムダにたくさんあるから、大きな動物でも100匹くらいは放し飼いにできるって言ってたもん」
「っ!」
「ウッシーの牛乳の話も、院長が美味しいらしいって教えてくれたんだし」
「っ!!」
「好きなもの飼っていいって言ってたよ?」
「っ!!!」
あんのっ……馬鹿院長が!!また、あんたかよ!!何、教唆してんだ!!
「この子たち賢いし、自分たちで自分の面倒見れるから、お世話もいらないし。ご飯もいらない。
その上、美味しい卵と牛乳くれるんだよ。
ね?いいことしかないでしょ?」
いいことしかない。
あー……………そうなのか?
もう、そういうことにしとくか……?
…………いやいやっ!駄目だろ!!しっかりしろ、俺!
「ヴァル」
「あ?」
「僕、今回けっこう頑張ったよね?ね?」
「いや……まぁ、そりゃあ……」
何だよ、この既視感。
ああー、やめろ。やめてくれ。真っ黒な瞳、うるうるさせてんじゃねぇよ。上目遣いで、ぷるぷるすんな。
加えて俺には、くーんと情けない鳴き声が聞こえて、垂れた耳と尻尾が見えるんだよ。
あの時は言えた『そんな目で見ても、駄目だ』って言葉が、今の俺には言えねぇ。
この目で必死に訴えられると、もはや俺には……。
「僕が一人前になったお祝いってことでさ。ねぇ、お願いだよぉ」
その言い方は、ずりぃだろ。
「はぁ………くそっ。こいつらだけだぞ」
「!!」
「何か起こったら、責任取ってもらうかんな」
ルルドと院長に。
「うんうん、もちろんだよー」
…………ま、結局尻拭いすんのは俺なんだけど。
でも、だ。
諦めさせるより、事後処理の方がはるかに簡単な気がしてきた。
だから、もういいわ。好きにしろ。
「でも、祝うのは俺がする。これは、別勘定だ」
俺が言えば、ルルドの顔がぱっと輝いた。
別にヒクイドリだって、水牛だって、俺が何かしたんじゃねぇし。
ルルドが捕まえた、赤銅竜の長と青銀竜の長からのプレゼントみたいなもんだろ。
「わーい!ヴァル、ありがとーっ!」
言って、ルルドは水牛からひらりと飛び降り、俺にぎゅーっと抱き着いてきた。
ふわりと柔らかな髪の毛が顔にかすめて擽ったい。
で、まんまと心も擽られてる俺は、大概チョロい。
あー……まったくよ。さっきまで繰り広げられた奇跡の出来事を起こした奴と同一人物とは思えねぇな。
「えへへ。防犯にもなるし、一石二鳥だね」
「まぁ………確かにな」
これらがいるとこに、押し入る奴はいねぇだろうな。
準備が整い、巡礼の一行と、ルルドと、ヒクイドリ2羽に水牛1頭で、帰路へと着いた。
穏やか過ぎる道中、ふと、気になることを思いつき、ルルドに尋ねる。
「黄金竜の長からは、何ももらってねぇのか?」
赤銅竜の長からヒクイドリ、青銀竜の長から水牛。
親らしいっつーなら、言動というか雰囲気的には黄金竜の長が一番それっぽかったけど。
見た目は子供だったけどよ。
「グノにはワームくんたちをお願いしたんだよー」
「………ふーん。なるほどな」
あの畑のワームを、黄金竜の長にね……。
ヒクイドリと水牛を従えて、一行から少し離れて進む姿は、やはり人ならざる者の気配が漂うものの。
俺からかっさらった荷物をこんもりと担いでるのが、なんともミスマッチで笑える。
「ルルド」
「んー?」
「あんまり急ぐなよ。……また、迷子になるぞ」
俺の言葉に、ルルドがふわりと淡く微笑んだ。
「ええー?ならないよ」
それは、あまりにも完璧で美しい笑顔で。
「もう僕、れっきとした竜になったんだから」
何言ってんだよ、馬鹿。だから、言ってんじゃねぇか。
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