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Ⅲ.大好きな卵編
56.僕、おかしなことに気づいてしまいました①
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僕、ルルドです。あと一月ほどで一人前の竜になる予定の、黒き竜です。
そして、ヴァルの手によって賢者にされてしまった痴竜です。
固い岩の上で背筋を伸ばして、正座して、一生懸命さっきのヴァルとの出来事を振り返ってる。
賢者というか……修行僧って感じだけど。あと、平らめの岩を選んだのは許してほしい。
さっきのヴァル……。
すっごく怒ってたな。まだ背中がひゅんとする。
怒ってたのはわかったけど……なんで怒ってるのか、僕には全然わからなかった。
でもさ。ヴァルも悪いと思うんだよね。
僕はわからないなりに、わかろうと努力してたんだよ?
それなのに、途中からにやにやしだして、いきなり近づいてくるし、優しい感じでなでなでしてくるし。
あんなことされたら、なんにも考えられなくなっちゃうでしょ。
で、僕はまんまと気持ちよくなっちゃうし。
挙句に、僕、逆切れしちゃったし。
『僕なんかよりヴァルの方が、ずっとずっと危ないんだから!死んじゃうんだからね!!』
不安を煽る、脅すみたいなこと言っちゃったし。
……わざわざ言わなくても、ヴァルのことは僕が守ればいいって、そう思ってたはずなのに。
だってだって、ヴァルが危ないことばっかりするから、ムカムカ~って来ちゃったんだもん!
僕、ちょっとイライラし過ぎじゃない?
…………もしかして。
僕も、ヴァルもカルシウム不足なのでは?
うーん……卵を殻ごと食べるべきかな?でも、がりがりしちゃうのもね?
ぐきゅるるるるるう~……
わぁ。なんて、時間に正確なんだろうね。うんうん。前のご飯が終わったら、次のご飯のカウントダウン始めてるもんね。
はぁ……貴重なヴァルの朝ご飯、食べ損なっちゃったなぁ。
短気は損気って、ホントにその通りだよね。
………あ。いいこと思いついた!
卵の殻からカルシウムだけ生成するとかできるんじゃない。僕、竜だし!そのくらい、ぱぱぱのぱ!だよ。今度、サプリメントでも作ってみよっと。
ぐるるきゅるうううぅぅ~……
それにしても、自己主張が激しいな、君たちは。で、全然我慢できないね。まったく、誰に似たのか……。
まぁ、どう考えても飼い主だけど。
でも、仕方ないでしょ。さっきの今で、すぐにはヴァルのとこ戻れないんだから。
大丈夫だよ。僕、非常食持ってるからね。
まぁこれも、ヴァルが準備しててくれたものだけど。
ヴァルは別に、こんなときのためにくれたわけじゃない無いんだろうけど。
僕は鞄から、黒い竜石を取り出した。
ちなみにこの鞄は言わずもがな、ヴァルが僕にくれたものだ。お買い物にいったり、畑の作業したりするときに使えるようにってヴァルが僕に作ってくれた。
分厚い布でできてて、内側の仕切りとポケットがたくさんついてる。中身が整理しやすく、バラバラにならない工夫が随所に光る、とっても使いやすい優れものだ。
もちろんすごく気に入ってる。だって、ヴァルが僕のために作ってくれた、この世にたった一つの鞄だもの!
一生大切にするつもりだから。
親指と人差し指で摘まめる、飴玉サイズの真っ黒で艶々の石。少しずつサイズが違うものの中で、大きめのものを選んだ。
ヴァルがくれた、ヴァルの中の黒い竜気を結晶にしてくれた、僕がお腹がすかないように、いつでも満たせるように準備してくれた僕の竜石。
このサイズだって、きっと僕が食べやすい大きさを考えてくれたんだと思う。ちょっとずつ大きさが違うのだって、その時にちょうどいいのを食べられるようにって、ヴァルの細かい配慮に違いない。
一つ、口に放り込めば。
しゅわしゅわ~……と口の中でゆっくりと溶けていくまろみが、じんわりと僕の全身を満たしてくれる。
ふわぁ……甘い……甘いなぁ。
さっき……。
ヴァルは何て言ってたっけ?
『竜は干渉しちゃあ、不味いんだろうが』とか。
『正体がバレたら、どうするつもりだ!?』とか。
『お前、ユーリは不味い臭いがして、嫌なんじゃなかったのかよ』とか。
『あいつはずっとお前を……黒き竜を討つって、あいつの知ってる『物語』では、実際にお前を討ったんだって言ってる奴だぞ。
今だって、何考えてんのかわかんねぇ、お前を脅かしうる奴じゃねぇか』とか。
ヴァルってば、僕のことばっかり言ってたな。
僕、たくさん心配かけちゃったみたいだね。
………………うへへへへ。
あ。ダメ。ダメだよ。ヴァルがあんなに心配してくれてたのに、喜んじゃうなんて。でも、ムリ。にやけちゃう。だって、嬉しいものは嬉しいから。
僕、竜なのに。ヴァルは当たり前みたいに、普通に心配してくれる。
それが僕にとって、どれだけ嬉しいことかヴァルはわかってるのかな。
それに引き換え、僕は……。
そして、ヴァルの手によって賢者にされてしまった痴竜です。
固い岩の上で背筋を伸ばして、正座して、一生懸命さっきのヴァルとの出来事を振り返ってる。
賢者というか……修行僧って感じだけど。あと、平らめの岩を選んだのは許してほしい。
さっきのヴァル……。
すっごく怒ってたな。まだ背中がひゅんとする。
怒ってたのはわかったけど……なんで怒ってるのか、僕には全然わからなかった。
でもさ。ヴァルも悪いと思うんだよね。
僕はわからないなりに、わかろうと努力してたんだよ?
それなのに、途中からにやにやしだして、いきなり近づいてくるし、優しい感じでなでなでしてくるし。
あんなことされたら、なんにも考えられなくなっちゃうでしょ。
で、僕はまんまと気持ちよくなっちゃうし。
挙句に、僕、逆切れしちゃったし。
『僕なんかよりヴァルの方が、ずっとずっと危ないんだから!死んじゃうんだからね!!』
不安を煽る、脅すみたいなこと言っちゃったし。
……わざわざ言わなくても、ヴァルのことは僕が守ればいいって、そう思ってたはずなのに。
だってだって、ヴァルが危ないことばっかりするから、ムカムカ~って来ちゃったんだもん!
僕、ちょっとイライラし過ぎじゃない?
…………もしかして。
僕も、ヴァルもカルシウム不足なのでは?
うーん……卵を殻ごと食べるべきかな?でも、がりがりしちゃうのもね?
ぐきゅるるるるるう~……
わぁ。なんて、時間に正確なんだろうね。うんうん。前のご飯が終わったら、次のご飯のカウントダウン始めてるもんね。
はぁ……貴重なヴァルの朝ご飯、食べ損なっちゃったなぁ。
短気は損気って、ホントにその通りだよね。
………あ。いいこと思いついた!
卵の殻からカルシウムだけ生成するとかできるんじゃない。僕、竜だし!そのくらい、ぱぱぱのぱ!だよ。今度、サプリメントでも作ってみよっと。
ぐるるきゅるうううぅぅ~……
それにしても、自己主張が激しいな、君たちは。で、全然我慢できないね。まったく、誰に似たのか……。
まぁ、どう考えても飼い主だけど。
でも、仕方ないでしょ。さっきの今で、すぐにはヴァルのとこ戻れないんだから。
大丈夫だよ。僕、非常食持ってるからね。
まぁこれも、ヴァルが準備しててくれたものだけど。
ヴァルは別に、こんなときのためにくれたわけじゃない無いんだろうけど。
僕は鞄から、黒い竜石を取り出した。
ちなみにこの鞄は言わずもがな、ヴァルが僕にくれたものだ。お買い物にいったり、畑の作業したりするときに使えるようにってヴァルが僕に作ってくれた。
分厚い布でできてて、内側の仕切りとポケットがたくさんついてる。中身が整理しやすく、バラバラにならない工夫が随所に光る、とっても使いやすい優れものだ。
もちろんすごく気に入ってる。だって、ヴァルが僕のために作ってくれた、この世にたった一つの鞄だもの!
一生大切にするつもりだから。
親指と人差し指で摘まめる、飴玉サイズの真っ黒で艶々の石。少しずつサイズが違うものの中で、大きめのものを選んだ。
ヴァルがくれた、ヴァルの中の黒い竜気を結晶にしてくれた、僕がお腹がすかないように、いつでも満たせるように準備してくれた僕の竜石。
このサイズだって、きっと僕が食べやすい大きさを考えてくれたんだと思う。ちょっとずつ大きさが違うのだって、その時にちょうどいいのを食べられるようにって、ヴァルの細かい配慮に違いない。
一つ、口に放り込めば。
しゅわしゅわ~……と口の中でゆっくりと溶けていくまろみが、じんわりと僕の全身を満たしてくれる。
ふわぁ……甘い……甘いなぁ。
さっき……。
ヴァルは何て言ってたっけ?
『竜は干渉しちゃあ、不味いんだろうが』とか。
『正体がバレたら、どうするつもりだ!?』とか。
『お前、ユーリは不味い臭いがして、嫌なんじゃなかったのかよ』とか。
『あいつはずっとお前を……黒き竜を討つって、あいつの知ってる『物語』では、実際にお前を討ったんだって言ってる奴だぞ。
今だって、何考えてんのかわかんねぇ、お前を脅かしうる奴じゃねぇか』とか。
ヴァルってば、僕のことばっかり言ってたな。
僕、たくさん心配かけちゃったみたいだね。
………………うへへへへ。
あ。ダメ。ダメだよ。ヴァルがあんなに心配してくれてたのに、喜んじゃうなんて。でも、ムリ。にやけちゃう。だって、嬉しいものは嬉しいから。
僕、竜なのに。ヴァルは当たり前みたいに、普通に心配してくれる。
それが僕にとって、どれだけ嬉しいことかヴァルはわかってるのかな。
それに引き換え、僕は……。
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