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Ⅲ.大好きな卵編
24.僕、運命を感じてます④
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「はぁ……こんなの飼えるわけねぇだろ。
こいつ……何食うんだよ。火を食べるんじゃ無いのか?」
「何それ。そんなの迷信でしょ。火なんて食べないよ」
鳥が火を食べたら、焼き鳥になっちゃうじゃない。ありえないから。
ぷくく。ヴァルも迷信なんて信じること、あるんだね。ホント可愛いなぁ。
「ヒクイドリが食べるのは火じゃなくて、赤銅竜の竜気だよ」
「………は?」
「だって、ヒクイドリはリッキーが使役してる鳥さんだから」
「りっきー……?」
「あ。リッキーは赤銅竜の長だよ」
本当はもっと長い名前で、サラリュキウスなんちゃらかんちゃら……て名前があるんだけど、これは以下同文。
「な……っ、赤銅竜の長、だと……?」
「そうだよ。だからきっと赤い竜石あげとけば、大丈夫だよー」
「大丈夫だよー、じゃねぇ!どんだけ餌代がかかると思ってんだ!!
……いや、そういう問題じゃねぇよ。大体、赤銅竜の長ってなんだよ。この辺りにいんのか?
いや、今はそれよりも……ああ、ったく……どこから何を、どうしたらいいか……」
あれ。ヴァルめちゃくちゃ悩んでる。
僕、もしかしてまた、何かしちゃった感じですか?
うーん……………。
「はっ!そうか、そうだよね。この子たちをこのまま連れてったら、大変だよね」
「ああ、とりあえずヒクイドリは――」
「そうだよね。ちゃんと保護者に許可もらわなくちゃ!急にいなくなったら心配しちゃうもんね」
だって、リッキーの鳥さんだもんね。勝手に連れてって、誘拐だと思われちゃったら大変だ!
「違うっ!いや、違わねぇけど……いや、だから……」
「え?だって、ヴァルは僕が勝手にいなくなっても、心配しないの?」
「は……?なんで、そんな話に……」
「だって、僕の保護者はヴァルでしょ?」
じっとヴァルを見上げたら、これまでの怒り顔が急に曇った。
──ドクンッ………
あれ?何、その顔。
「なんだよ、お前。勝手にいなくなんのかよ……?」
「え……?ええ?」
ヴァルは、見たことのない顔をして、消え入りそうな声で言った。
眉毛がハの字になって、いつもは鋭い睨んだような瞳が、悲しそうに細められて、寂しそうにゆらゆらと揺れる。
でも、無理矢理に笑って、悲しいのを押し込めてるみたい。
え?え?なんで、そんな顔するの?
……あ、ダメ。僕、また変になっちゃう。ドキドキして、胸が苦しくて、息が止まっちゃいそう。
「お前全然言うこと聞かねぇし……こうして、こんなとこにいるし……俺の気も知らねぇで」
「ならないよ。ならない」
僕はぶんぶんと首を横に振った。
「どうだか。信用できねぇ」
そっか。信用できないか……。
うん。心当たりしかない!
「心配……するに、決まってんだろ。馬鹿」
ヴァルはやっぱり、複雑な表情のままで僕に言う。
「絶対に、勝手にいなくなんなよ」
「う……うん、……わかった」
なんとなく、ヴァルの手が僕に伸びる気配がして。僕はヒクイドリの方へと寄ってヴァルからそそくさと距離をとった。
僕、ヴァルからなでなでされるの、大好きなのに。いつもなら、うれしくて自分から頭を差し出して、すりすりしちゃうのに。
でも、今はダメ。今、ヴァルに撫でられたら、僕なんだかおかしくなっちゃいそうなんだもん。
なんかこう……何かが絶対に爆発しちゃう!
ヴァルの行き場をなくした手が、中途半端なところで握りこまれるのを感じて、自分がよけたからなのに、なんだか申し訳なくて、また胸がぎゅっとなった。
僕、どうしちゃったんだろう。
「じゃ、じゃあ……リッキーにちゃんと許可をもらってから――」
「俺を呼んだかな?」
ぶわりと、周囲の空気の密度が濃くなり、重苦しいほどの熱気で包まれる。
ヴァルが一瞬だけ緊張し、身構えて、すぐにふっと力を抜いた。
「俺たちの大切な子、ルルド。会いたかったぞ。
ルルドのためなら、ヒクイドリの一羽や十羽や百羽、いくらでも許可するさ」
声の方を見上げれば、業火のごとき炎の髪をなびかせ、空中を舞う屈強な体躯の男性が一人。
鷹揚な態度で腰に手を当て、気迫のみなぎる褐色の瞳がぎらりと光った。
そして、安定の裸足。飛んでるから足の裏が見える。つるつるきれいだな。
「リッキー!」
僕は、その竜の名を呼んだ。
こいつ……何食うんだよ。火を食べるんじゃ無いのか?」
「何それ。そんなの迷信でしょ。火なんて食べないよ」
鳥が火を食べたら、焼き鳥になっちゃうじゃない。ありえないから。
ぷくく。ヴァルも迷信なんて信じること、あるんだね。ホント可愛いなぁ。
「ヒクイドリが食べるのは火じゃなくて、赤銅竜の竜気だよ」
「………は?」
「だって、ヒクイドリはリッキーが使役してる鳥さんだから」
「りっきー……?」
「あ。リッキーは赤銅竜の長だよ」
本当はもっと長い名前で、サラリュキウスなんちゃらかんちゃら……て名前があるんだけど、これは以下同文。
「な……っ、赤銅竜の長、だと……?」
「そうだよ。だからきっと赤い竜石あげとけば、大丈夫だよー」
「大丈夫だよー、じゃねぇ!どんだけ餌代がかかると思ってんだ!!
……いや、そういう問題じゃねぇよ。大体、赤銅竜の長ってなんだよ。この辺りにいんのか?
いや、今はそれよりも……ああ、ったく……どこから何を、どうしたらいいか……」
あれ。ヴァルめちゃくちゃ悩んでる。
僕、もしかしてまた、何かしちゃった感じですか?
うーん……………。
「はっ!そうか、そうだよね。この子たちをこのまま連れてったら、大変だよね」
「ああ、とりあえずヒクイドリは――」
「そうだよね。ちゃんと保護者に許可もらわなくちゃ!急にいなくなったら心配しちゃうもんね」
だって、リッキーの鳥さんだもんね。勝手に連れてって、誘拐だと思われちゃったら大変だ!
「違うっ!いや、違わねぇけど……いや、だから……」
「え?だって、ヴァルは僕が勝手にいなくなっても、心配しないの?」
「は……?なんで、そんな話に……」
「だって、僕の保護者はヴァルでしょ?」
じっとヴァルを見上げたら、これまでの怒り顔が急に曇った。
──ドクンッ………
あれ?何、その顔。
「なんだよ、お前。勝手にいなくなんのかよ……?」
「え……?ええ?」
ヴァルは、見たことのない顔をして、消え入りそうな声で言った。
眉毛がハの字になって、いつもは鋭い睨んだような瞳が、悲しそうに細められて、寂しそうにゆらゆらと揺れる。
でも、無理矢理に笑って、悲しいのを押し込めてるみたい。
え?え?なんで、そんな顔するの?
……あ、ダメ。僕、また変になっちゃう。ドキドキして、胸が苦しくて、息が止まっちゃいそう。
「お前全然言うこと聞かねぇし……こうして、こんなとこにいるし……俺の気も知らねぇで」
「ならないよ。ならない」
僕はぶんぶんと首を横に振った。
「どうだか。信用できねぇ」
そっか。信用できないか……。
うん。心当たりしかない!
「心配……するに、決まってんだろ。馬鹿」
ヴァルはやっぱり、複雑な表情のままで僕に言う。
「絶対に、勝手にいなくなんなよ」
「う……うん、……わかった」
なんとなく、ヴァルの手が僕に伸びる気配がして。僕はヒクイドリの方へと寄ってヴァルからそそくさと距離をとった。
僕、ヴァルからなでなでされるの、大好きなのに。いつもなら、うれしくて自分から頭を差し出して、すりすりしちゃうのに。
でも、今はダメ。今、ヴァルに撫でられたら、僕なんだかおかしくなっちゃいそうなんだもん。
なんかこう……何かが絶対に爆発しちゃう!
ヴァルの行き場をなくした手が、中途半端なところで握りこまれるのを感じて、自分がよけたからなのに、なんだか申し訳なくて、また胸がぎゅっとなった。
僕、どうしちゃったんだろう。
「じゃ、じゃあ……リッキーにちゃんと許可をもらってから――」
「俺を呼んだかな?」
ぶわりと、周囲の空気の密度が濃くなり、重苦しいほどの熱気で包まれる。
ヴァルが一瞬だけ緊張し、身構えて、すぐにふっと力を抜いた。
「俺たちの大切な子、ルルド。会いたかったぞ。
ルルドのためなら、ヒクイドリの一羽や十羽や百羽、いくらでも許可するさ」
声の方を見上げれば、業火のごとき炎の髪をなびかせ、空中を舞う屈強な体躯の男性が一人。
鷹揚な態度で腰に手を当て、気迫のみなぎる褐色の瞳がぎらりと光った。
そして、安定の裸足。飛んでるから足の裏が見える。つるつるきれいだな。
「リッキー!」
僕は、その竜の名を呼んだ。
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