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Ⅲ.大好きな卵編
19.僕、もう迷子になりません②
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こうして僕は、ヴァルには次何をあげるべきか、っていうこの世で一番重要な命題の結論を下したわけさ。
で、次なる問題は、何の卵がいいかってことだよ。
いい?ヴァルに捧げる卵だよ?普通の卵であっていいはずがないよね。
最高の卵をあげなくちゃ。
まず考えたのは……。
竜の卵。これでしょ。
だって、どう考えても希少でしょ。竜の卵なんて、誰も食べたことないでしょ。それどころか、誰も見たことないんじゃない?
だって、竜の僕も見たことない!こんなの、ヴァルに食べさせてあげたいって思うじゃない。
ほら、何だっけ。あの竜が生まれる場所っていうとこ。あそこに行こうかな、とも思ったんだけど。
名前も忘れたけど、有名な場所っぽかったから、院長あたりに聞けばきっと知ってる。あの人、あんなだけど物知りだから。
でも、ちょっと冷静になって考えて。 気づいちゃった。
僕が食べたら、共食いだなって。
そりゃあ、ヴァルに美味しい最高の卵を食べさせたいよ?でもね、それは僕が食べなくてもいいってことじゃないわけ。
僕も一緒に美味しい卵が食べたいに決まってるでしょ!ヴァルの作った美味しい卵料理を、僕も一緒に食べたいんだよ!
だから、僕はとりあえず竜の卵はあきらめることにした。
で、次に思い出したのが、ずっと昔に腹ぺこを満たそうと、美味しいものを求めて世界中を彷徨っているときに見つけた場所だった。
そこは、じめじめした湿地帯にごろごろと大きな岩が転がっている土地で、色々な動物が住んでいた。もちろんその中には、たくさんの種類の鳥もいた。
で、これは最近知ったことなんだけど、あそこにいるヒクイドリっていう鳥の卵が、とっても美味しいらしい。
鳥自体は大きいのに、卵は手のひらサイズしかない。
でも、濃厚な黄身と、甘い白身が最高に美味しいんだって!
希少性といい、味といい、これこそヴァルに相応しい卵だと思う。
これしかない。
僕、ヴァルにヒクイドリの卵を捧げます!
*
で、さっそく獲りに来たよ!
なんたって僕、ヴァルに僕のお野菜をほめてもらって、俄然やる気がみなぎってるもんね。
ヴァルが帰ってくる前に、何事も無かったようにお留守番しとかなきゃだしね!
「あっ!もう一匹、ヒクイドリみーっけた!」
僕は地面を蹴って、遠くで地をかける真っ赤な生き物に向かって、飛び上がる。そのまま宙を飛んで、一瞬で距離を詰めた。
そして、目的の赤い鳥へとたどり着き、一気に頭を掴んで動きを封じる。
えへへ。これ、ヴァルの真似っこなんだよ。
あれ、すごいよねぇ。頭をぎゅっと押さえつけられると、なんだか戦意喪失しちゃって、言うこと聞かなきゃ!て気になるんだよね。
野生の動物に効くかわからないから、僕は力任せに問答無用で押さえつけちゃうけどね。
僕、こう見えて結構力が強いんだよ。
僕、竜だからね!
今僕が捕まえている鳥は、真っ赤な羽に包まれた、人の姿の僕の背丈を優に超える大きな鳥だ。
大きな茶色のとさかが、なかなか厳つい。で、ヴァルよりももっと目つき悪い、獰猛な奴。
短く小さな羽では飛べないけれど、大きな太い脚は、下手な獣よりもずっと早く走ることができる。
僕が乗っても余裕で、馬よりも早く走れる大きさのこの鳥は、このあたりにだけ生息する怪鳥。
これがヒクイドリだ。
そもそもこのあたりに住んでいる獣や鳥は、無駄に大きいものが多いんだけど。
その鳥の中でもヒクイドリは凶暴な鳥の一種で、真っ赤に燃えるような羽の羽ばたきは人をなぎ倒し、強靭な脚の攻撃は殺傷能力が高い。
まあ、僕の目的は、このヒクイドリが産む、卵なんだけど。
あちゃあ、この子は男の子だな。
当たり前だけど、メスしか卵は産まないもんね。
この子、大きめだったからメスだと思ったのに。ヒクイドリはメスの方が大きい。そして、強い。やっぱり、メスすごい。
「君、番の女の子とかいない?いるなら、卵、分けてくれないかな?
ほら、無精卵ってあるでしょ?赤ちゃんにならない卵を分けてくれたらいいんだ。ね?
引き離したりしないよ。二人とも一緒に連れてってあげるからさ」
そのヒクイドリは、かくかくと首を振って、森の中に戻っていった。
あの首振りは、どっちなのかな。わかんないや。まぁいいか。また、新しい子見つけよう。
うーん……なかなかメスがいないな。メスの方が少ないのかな。
こんなときは、想像してみよう。
僕のあげた食材で、ヴァルに美味しいご飯を作ってもらって、ヴァルと一緒に食べる。
何そのステキ光景。
これだけで、ご飯が何杯でもいただけちゃう!あー、ヨダレが出ちゃう。じゅるり。
でもって、ヴァルに「ありがとう」なんて、言われて、さらに「いい子だな、ルルド」なんて言われて、なでなでされたら……。
うーん……、僕、嬉しすぎて竜気に還っちゃうかも!
あ、これ竜ジョークだからね?本当には竜気には還らないよ? ヴァルにお腹いっぱいにしてもらってるからね。
因みにこの冗談、ヴァルに言ったら結構ガチ目に動揺されて、冗談だよ!て言った後も、「竜のことなんて知るか。冗談でも二度と言うな、駄竜」ってこれまた割と本気めに怒られた。
あの後、しばらくご機嫌ナナメだったもんな……。
ヴァルってああ見えて、純粋だよね。むふふ。かわいいなぁ。
僕、もうそんな簡単に竜気に還ったりしないよ。普通じゃなくても、僕、竜だから。
少なくとも、人であるヴァルよりは長生きなんだからね。
ずっと、ずっと、ずっと、ね。
すん……。あれ?
すんすんすん……。んんん?
すんすんすんすんすーーーん、すん………っ。
えっ!?もしかして、もしかしなくても、この美味しそうなイイ匂いは……!!!
で、次なる問題は、何の卵がいいかってことだよ。
いい?ヴァルに捧げる卵だよ?普通の卵であっていいはずがないよね。
最高の卵をあげなくちゃ。
まず考えたのは……。
竜の卵。これでしょ。
だって、どう考えても希少でしょ。竜の卵なんて、誰も食べたことないでしょ。それどころか、誰も見たことないんじゃない?
だって、竜の僕も見たことない!こんなの、ヴァルに食べさせてあげたいって思うじゃない。
ほら、何だっけ。あの竜が生まれる場所っていうとこ。あそこに行こうかな、とも思ったんだけど。
名前も忘れたけど、有名な場所っぽかったから、院長あたりに聞けばきっと知ってる。あの人、あんなだけど物知りだから。
でも、ちょっと冷静になって考えて。 気づいちゃった。
僕が食べたら、共食いだなって。
そりゃあ、ヴァルに美味しい最高の卵を食べさせたいよ?でもね、それは僕が食べなくてもいいってことじゃないわけ。
僕も一緒に美味しい卵が食べたいに決まってるでしょ!ヴァルの作った美味しい卵料理を、僕も一緒に食べたいんだよ!
だから、僕はとりあえず竜の卵はあきらめることにした。
で、次に思い出したのが、ずっと昔に腹ぺこを満たそうと、美味しいものを求めて世界中を彷徨っているときに見つけた場所だった。
そこは、じめじめした湿地帯にごろごろと大きな岩が転がっている土地で、色々な動物が住んでいた。もちろんその中には、たくさんの種類の鳥もいた。
で、これは最近知ったことなんだけど、あそこにいるヒクイドリっていう鳥の卵が、とっても美味しいらしい。
鳥自体は大きいのに、卵は手のひらサイズしかない。
でも、濃厚な黄身と、甘い白身が最高に美味しいんだって!
希少性といい、味といい、これこそヴァルに相応しい卵だと思う。
これしかない。
僕、ヴァルにヒクイドリの卵を捧げます!
*
で、さっそく獲りに来たよ!
なんたって僕、ヴァルに僕のお野菜をほめてもらって、俄然やる気がみなぎってるもんね。
ヴァルが帰ってくる前に、何事も無かったようにお留守番しとかなきゃだしね!
「あっ!もう一匹、ヒクイドリみーっけた!」
僕は地面を蹴って、遠くで地をかける真っ赤な生き物に向かって、飛び上がる。そのまま宙を飛んで、一瞬で距離を詰めた。
そして、目的の赤い鳥へとたどり着き、一気に頭を掴んで動きを封じる。
えへへ。これ、ヴァルの真似っこなんだよ。
あれ、すごいよねぇ。頭をぎゅっと押さえつけられると、なんだか戦意喪失しちゃって、言うこと聞かなきゃ!て気になるんだよね。
野生の動物に効くかわからないから、僕は力任せに問答無用で押さえつけちゃうけどね。
僕、こう見えて結構力が強いんだよ。
僕、竜だからね!
今僕が捕まえている鳥は、真っ赤な羽に包まれた、人の姿の僕の背丈を優に超える大きな鳥だ。
大きな茶色のとさかが、なかなか厳つい。で、ヴァルよりももっと目つき悪い、獰猛な奴。
短く小さな羽では飛べないけれど、大きな太い脚は、下手な獣よりもずっと早く走ることができる。
僕が乗っても余裕で、馬よりも早く走れる大きさのこの鳥は、このあたりにだけ生息する怪鳥。
これがヒクイドリだ。
そもそもこのあたりに住んでいる獣や鳥は、無駄に大きいものが多いんだけど。
その鳥の中でもヒクイドリは凶暴な鳥の一種で、真っ赤に燃えるような羽の羽ばたきは人をなぎ倒し、強靭な脚の攻撃は殺傷能力が高い。
まあ、僕の目的は、このヒクイドリが産む、卵なんだけど。
あちゃあ、この子は男の子だな。
当たり前だけど、メスしか卵は産まないもんね。
この子、大きめだったからメスだと思ったのに。ヒクイドリはメスの方が大きい。そして、強い。やっぱり、メスすごい。
「君、番の女の子とかいない?いるなら、卵、分けてくれないかな?
ほら、無精卵ってあるでしょ?赤ちゃんにならない卵を分けてくれたらいいんだ。ね?
引き離したりしないよ。二人とも一緒に連れてってあげるからさ」
そのヒクイドリは、かくかくと首を振って、森の中に戻っていった。
あの首振りは、どっちなのかな。わかんないや。まぁいいか。また、新しい子見つけよう。
うーん……なかなかメスがいないな。メスの方が少ないのかな。
こんなときは、想像してみよう。
僕のあげた食材で、ヴァルに美味しいご飯を作ってもらって、ヴァルと一緒に食べる。
何そのステキ光景。
これだけで、ご飯が何杯でもいただけちゃう!あー、ヨダレが出ちゃう。じゅるり。
でもって、ヴァルに「ありがとう」なんて、言われて、さらに「いい子だな、ルルド」なんて言われて、なでなでされたら……。
うーん……、僕、嬉しすぎて竜気に還っちゃうかも!
あ、これ竜ジョークだからね?本当には竜気には還らないよ? ヴァルにお腹いっぱいにしてもらってるからね。
因みにこの冗談、ヴァルに言ったら結構ガチ目に動揺されて、冗談だよ!て言った後も、「竜のことなんて知るか。冗談でも二度と言うな、駄竜」ってこれまた割と本気めに怒られた。
あの後、しばらくご機嫌ナナメだったもんな……。
ヴァルってああ見えて、純粋だよね。むふふ。かわいいなぁ。
僕、もうそんな簡単に竜気に還ったりしないよ。普通じゃなくても、僕、竜だから。
少なくとも、人であるヴァルよりは長生きなんだからね。
ずっと、ずっと、ずっと、ね。
すん……。あれ?
すんすんすん……。んんん?
すんすんすんすんすーーーん、すん………っ。
えっ!?もしかして、もしかしなくても、この美味しそうなイイ匂いは……!!!
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