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Ⅱ.体に優しいお野菜編

4.僕、役に立つ竜です④

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「ヴァルってホントに器用なんだねぇ。
 ふーん、そっか。ヴァルの今日のお仕事は、これを使えるようにすることなんだね」

 器用だから、このたくさんの武器の手入れや修理を任されてるんだね!
 やっぱり、ヴァルは優秀なんだな。うんうん。ご飯も上手で、手先も器用で、さらに獣の討伐なんかもできて、竜気も扱えちゃうなんて。

 すごい!一人で何でもできちゃうじゃん!

「まぁな。とりあえず、使えんのと使えねぇのをわけて……そっからだな」

 神官なのに、武器の手入れって……益々僕のイメージと違う。
 それに地面に所狭しと並べられた剣は折れたものや、錆びたものが多い。弓だって弦が切れていたり……状態が悪い物ばかりだ。

「なんか……ばっちいね」

 あのこべりついてる固形物は何だろうな……うん、考えたくない。そして、触りたくない。

「さらに修理して、整理するとなると……5日はかかるな」

 ヴァルは深々と嘆息して、軽く肩を回した。

「僕、手伝ってもいい?こっそりなら、大丈夫だよね?」
「ああ……そりゃあ、手伝ってくれんならありがたいが……。
 けどなぁ……お前、大丈夫か?」
「え?大丈夫って何が?これを綺麗にしたらいいんだよね?」
「ああ。まぁ……そのくらいなら、大丈夫か……?」

 ヴァルはどこか不安気に、ぶつぶつと考え込んでいる。

 安心していいのに。
 僕、ヴァルに僕の竜気をもらえるようになって、たくさんのことできるようになったんだから!
 ヴァルだって知ってるでしょ。

「念のため、言っとくが……お前、自重しろよ?」

 自重って?何を?

「ただ綺麗にするだけでしょ?」

 ヴァルのために全力で張り切って綺麗にしちゃうから!

 僕は地面に乱雑に転がしてある一つ一つを意識の中に認識し、識別していく。
 細かい組成や元来の形状を想定すれば、あとはそれらがそうであると定めるだけ。

「おいっ……お前、ちょっ──」

 パァァーっっ!

 僕の手のひらから薄暗い光が放たれ、地面を転がる一つ一つを包み込む。
 霞みがかったモヤはふっと霧散する。すると、そこには何事もなかったようにキレイになった剣や弓が在った。

「どうかな?ちゃんとできてる?ねぇ?ねぇ?」
「っ……………」

 その光景を見て、ヴァルが絶句する。

 ふふ。声も出ないくらい、喜んでくれてるのかな?

「はぁ………だから、自重しろって言ってんのに」

 苦々しいヴァルの声が聞こえてくる。

「え?でも……ただ、言ったとおりに綺麗にしただけだよ?」
「まるで新品みたいに元通り綺麗に、な」

 うん、そう。
 先ほどまで、単なる汚れのみならず、腐食や錆、そして欠損が見られた剣や弓は、まるで何事もなかったように、使われる前のキレイな新品同然の状態になっていた。

「これで、また使えるね!」

 これで整理や清掃をするだけじゃなくて、修理する手間も無くなったでしょ?
 使えるものは使った方がいいもんね!

 折り重なりように散乱しているのは許してね。これは一つ一つ並べていくしか無いから。

 ヴァルは「かえって手間が増えたんじゃ……いや、でもちょうどいい誤魔化しになるか……?」と一人でぶつぶつ言いながら、考え込んでしまう。

「だって、これヴァルが一人でやるの、大変だよ」

 僕は竜だから。ぱぱぱのぱ、だったけど。
 これらを全部汚れを落として、使えないのを修理して、整理するのって一人でやる量じゃない気がするけど。

「ま、ほぼ嫌がらせみたいなもんだからな」

 うん?

 僕はヴァルの言葉にすっと目を細めて、じっと見返した。
 一方のヴァルは言った瞬間に、マズいという表情で固まってしまう。

「嫌がらせ?ヴァル、嫌がらせうけてるの?」

 ヴァル、僕が神殿やめたらって言った時、特に変わったことは無いから大丈夫だって、そう言ってなかったっけ。

「嫌がらせってなんで?ね?ヴァル、誰から?」

 ヴァルにそんなことする人、一人残らず、どこの誰か教えて欲しいな。

「あー……まぁ、色々あんだよ」
「色々あるって何が?」

 色々あっても、嫌がらせはダメなんだよ。そんなこと、子供だって知ってるよ。

「俺にも考えがあるってことだ。余計なことすんじぇねーぞ」

 これってつまり……これまでもこうやって嫌がらせを受けてたってことじゃんね。
 何それ。信じられない。

 でも、こういう風にヴァルが言う時は、絶対教えてくれない時だ。

 もう。ヴァルのケチ。何なの、考えって。教えてくれてもいいのに。
 良く分からないけど……結局のところ、やっぱり神殿でヴァルが不当な扱いを受けてるってことじゃない。

「神殿内の掃除もしねぇといけねぇから。これなら明日には終わるだろう」

 そう言って、ヴァルは立ち上がると、神官服の汚れをぱたぱたと払う。

 神殿内の掃除。

「いいね、それ!」

 なるほど!そういうことか!ヴァルは神殿をキレイにしようと思ってるんだね?
 うんうん。なるほど、なるほど。ヴァルが神殿にいなきゃいけないって言うなら、その神殿自体をまとめてキレイにしちゃうっていうのは、とってもいい考えだね!


「おい、ルルド。多分だがお前が考えてるような掃除じゃないぞ」
「え?色々キレイにしちゃおうかな、って……そう思ってるだけだよ?」
「色々キレイ……」

「そうそう!臭いのとか汚いのを、全部綺麗にさっぱり消し去ってしまえば、何の憂いもなくなるもんね?
 ほとんどの人がいなくなるかもだけど、それは臭いのが悪いんだからね?」

 全部キレイにするなら、誰がヴァルに嫌がらせしてるのかわざわざ特定しなくても、関係ないもんね?

 まとめて全部、お掃除しちゃおう!!
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