腹ペコ海香のひとりぼっち料理帖

黒猫

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3品目 いつだってカルボナーラ

サンドイッチ付き控室

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 式場のロビーでは受付をしています。
 普通に並んで順番を待っていたら、「あ、違いますね。親族の方はこちらです」と別ルートを案内されました。「あっあっ。すみません」
 今日はひとりでここに来ました。だから何だという話でもないんですけど。
 うちのお父さんとお母さんは、新幹線から別ルートです。おばあちゃんは、足が悪いみたいでお留守番です。残念です。叔母さんのところはどうやって来てるんでしょう? アルフォート? 車でもけっこう大変だと思いますが……。
 控室に入ってみると、もうみんな勢ぞろいしてました。

「海香、遅がっだごど!」
「えっえっ」
「さっぎまで澄子とうこだぢいだったんだげどよ、もう行っだごで」
「涼太郎どなあ」
「そっそっ」

 そうなんだ……。
 お姉ちゃんと涼太郎さん、ついさっきまで控え室にいたんだそうです。でも、もう行っちゃったそうです。見逃しました!

「写真どが撮るどがゆってよお」
「ふうん……お姉ちゃんどうだった? 綺麗だった?」
「そりゃよ……」
「ああーあ、キレイだったよお!」

 お父さんもお母さんも、ちょっとだけですけど目が潤んでるような気がします。そんなに綺麗だったんですね、お姉ちゃん。逃した魚は大きかったです。
 お父さんはモーニングを着てました。お母さんは和装です。黒留袖です。いかにもって感じがします。髪も、お母さんはセットしてもらったのでしょう、本当、絵に描いたみたいにちゃんとしてます。二人並んでると、ちょっとかわいいなって思っちゃいました。
 私の今日着てるドレスは、お母さんに借りました。送ってもらいました。背の高いお姉ちゃんだとつんつるてんになっちゃいそうですけど、私にはぴったりなんです。でも慣れないもんだから、意外と時間かかっちゃったんですよね……。
 叔母さんのところも、叔父さんも、奏太かなたも、ちゃんといました。おめかしして。
 他にもうちの親戚はいましたけど、涼太郎さんの親族の人たちが同じくらいいっぱいいて、ちょっと感じがしました。と思った矢先でした――

「海香、ほら、挨拶しさ行ぐぞ」
「えっ!?」
「親族紹介さ遅れで来る親族があっがっでよお!」

 お父さんが私の手を引いて、涼太郎さんの親族さんのテリトリーへ突っ込んでいきます!
 その時です!
 サンドイッチが……オレンジジュースその他の飲み物が……!
 軽食が、控室の隅に用意されてるのが、わたしの目に入りました……!

「あっあっ」

 しかし! なすすべもなく連れて行かれるわたしでした!

「ぎゃひー!」

 タッチの差でした。タッチの差で、わたしはサンドイッチを逃しました。
 もう少し早く起きてれば、こんなことにはならずに済みましたよね……すみませんでした……。



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