〜Addicted to U〜 キスまでの距離

嘉多山瑞菜

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《第19章》 ― お前の態度が俺を不安にさせるんだ…。早くこの不安から解放されたい…。―

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 健志の帰国が近づくにつれ、亮はあれこれと桂との新しい生活に思いを巡らせていた。

 晴れて、桂と恋人同士になれたら…何をしよう…?イベント好きの性格が本領を発揮し始める。
今まで知ることが許されなかったら桂の誕生日を聞きだして、タイミングが合えば誕生日パーティをしよう…。

 それに…と亮は以前の桂の言葉を思い出して表情を綻ばせた。

— 一番長い休みは冬なんだ —

 夏休みを仕事だと告げた桂。
あの時自分が色々と考えた夏休みのプランは泡と消えた…。
桂が仕事を優先したのが腹立たしくて、ジュリオと外出すると言ったのが許せなくて、夏の休暇を一緒に過ごす事が出来ないのが寂しくて…。

 何もかもが上手くいかなかった夏の休暇…。 

 これからだったら…亮は苦い思いしか呼び起こさない夏の休暇を脳裏から振り払うと明るい笑みを自然に浮かべていた。

 桂がゆっくり休める冬休み…クリスマスに大晦日に正月…色々な行事が目白押しだ。
桂と恋人らしい生活を始めるのに打ってつけじゃないか…。

 亮は奥軽井沢に持っている別荘に、桂を連れて行くことを考えていた。
自分も休みを23日から取って、そして桂と一緒に仕事初めまで二人っきりで過ごす。
誰にも邪魔されずに…桂を誰の目にも触れさせずに…求め合うんだ…。

 桂と二人っきり…いつも桂の微笑が手を伸ばせばすぐ…そこにある…。

 それを考えると幸福感が胸からあふれ出して息が詰まるような息苦しさを覚えさせる。でもそんな息苦しさが決して不快なものではないことに、亮はまた頬を緩めていた。

 別荘を少し手入れしないとな…亮は最近足が遠のいていた、古びた、でも居心地の良いお気に入りのロッジに思いをめぐらす。

 もともとスノーボード用に購入した山荘のためキッチンの設備が十分ではない。
当時はもちろん亮に自炊の意識など無いからお湯を沸かす程度のものだった。

 でも…桂がいれば話は違う。
桂はきっと料理をしたいはずだから、最新のシステムキッチンを入れないと…。
それに風呂も温泉を引いてあるが、桂がリラックス出来るようにジャグジーもつけるか…そうそうベッドも新しくしておかないと…。

 亮はすっかり冬休み気分で色々と桂と楽しむためのプランを練り続ける。
鼻歌交じりで馴染みのリフォーム業者に連絡を取り早急に見積もりを出すように依頼をして、次にはお気に入りの家具屋にベッドを…。etc。

 夢中になって休暇のプランを立て終わると、亮は内線電話を取り上げた。
どうしてもこのワクワクするような高揚感を桂に伝えたくて、桂がはにかんだような笑みを浮かべて喜ぶ表情が見たくて、ちょうど今日桂が日本語の授業に社を訪れる事を知っていた亮は秘書に桂の授業が終わったら自分の部屋に来るように伝えていた。

 桂の喜びで輝くような笑顔を思い浮かべながら、亮はそわそわと桂が部屋に来るのを待っていた。
 
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